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第1957話 不織布を試作してみよう。(不織布、紙、海苔・・・確かに同じ作り方だね。)

研究所の3階 所長室。

「ふぅ・・・出来ました。」

ラルフが短く切った糸の小山を前に武雄に言う。

「はい、ご苦労様です。

 ちょっと待ってくださいね・・・よし!調合完了。」

武雄はパナの書いたメモを見ながら調理用のボールでSL液の調合をして木工用ボンドのような接着剤を作っていた。

ちなみにパナとテト経由で連絡済みの鈴音と初雪が各液をコップに入れて用意はしていた。

「これを・・・2倍くらいに薄めれば良いのかな?

 ・・・3倍にしておくかな。」

武雄はそう言って出来たばかりの接着剤をアクアで水を足していく。

「ラルフさん、糸ください。」

「はい、どうぞ。」

ラルフが短く切った糸の山を武雄に渡す。

「・・・」

武雄が1/3くらいをボールに入れかき混ぜる。

「・・・」

ラルフが物珍しそうに見ている。

「さて、さっき買って来た木枠は準備出来てるよね。」

武雄はかき混ぜながら樽の中に置かれた木枠達を見る。

「よし!やってみますか。」

と武雄は上の枠がズレないように・・・ではなく、上の枠を片手で押さえ、もう片方の手に持ったボールの中身を一気に入れる。

「・・・普通こういうのは慎重にするのでは?」

ラルフが言ってくる。

「良いんですよ。

 試作なんですから。

 ・・・ん~・・・意外と下には落ちませんでしたか。」

武雄が下の枠ごと持ち上げると樽の中に余分な接着剤を溶かした液体が溜まっていたが、予想以上に糸が下に落ちていかなかった。

「で、この網の上に残ったのが布の原型です。」

武雄が樽の横に枠ごと置き、上の枠を取り外して網の上に載った物をラルフに見せる。

「ほぉ・・・これでですか。

 グズグズになっているように見えますが。」

「まぁ濡れていますしね。

 で・・・網を床に置いて・・・あ、この大きさの板を貰い忘れた・・・まぁ、良いか。

 紙で代用するとして・・・紙を上に乗せ、引っ繰り返す。

 でもって網をゆっくりと持ち上げると・・・持ち上げると・・・えいっ!」

武雄が網を軽く持ち上げようとしたが一緒に紙も張り付いてきたので軽く床に打ち付けると網から剥がれ落ちる。

「力技ですね。」

「試作品だから良いんですよ。

 で、上から紙を乗せて、力をかけて水を抜く。」

武雄が紙を乗せて両手で上から満遍なく体重を乗せると水がにじみ出てくる。

「はい、原型出来ましたよ。」

武雄が上の紙をゆっくりと端から捲ると1mm程度の厚さの糸のシートが出来ていた。

「ほぉ・・・なるほど。」

「これに先ほど買った炭火アイロンを使うのですけど・・・木炭使うのが面倒なので、とりあえず私がファイアで温めながら使用してみましょうかね。」

武雄が炭火アイロンの空気を入れる煙突部分に左手で蓋をして威力を抑えたファイアを連続で流し込んでいく。

そしてゆっくりと紙の上の糸のシートにアイロンをかけ始める。

「魔法をこんな風に・・・便利ですね。」

「これは・・・意外と大変だなぁ。」

「何がですか?」

「いや、いつも目一杯振り絞る感じ・・・ではないですけど、結構何も考えていないで思いっきり出しているんですよ。

 割と初めてに近いのですけどね・・・力を抑えて発動させていますが、これが大変で・・・」

「・・・私にはわかりかねますね。」

「ラルフさんは魔法の適性は?」

「私はありませんが、従業員には何名かおりますね。

 といっても兵士や冒険者という風な荒事には向かない程度の魔力量ではありますが。」

「そうですか。

 まぁ自身の能力が活かせるのなら魔法があろうが無かろうが関係ないか。」

「はい。

 あ、そうだ、ローチ工房とサテラ製作所の方で魔法師を募集しているようですよ?」

「・・・コンテナと船かぁ・・・

 適性があると職人には成りたがらないのでしょうかね?」

「まぁ、工房と言ってもローチ工房は基本幌馬車の製作だけですし、サテラ製作所は出来たばかりです。

 魔法が出来る者からすれば魅力があるとは映らないでしょう。

 魔法が出来るのなら魔法師専門学院に入って兵士になり出世をしたいと思うのが普通でしょう。

 その次に冒険者として上を目指すでしょう。」

「ふむ・・・魔法があれば大成する訳ではないのにね。」

「それは大人の意見ですよ。

 子供としたら魔法は他の子供達より優位になる為の物です。

 事実、魔法適性があると親達も魔法師専門学院に入れたがりますからね。」

「あそこは実力主義なんですよね・・・明確に順位が決まり、上位から就職先が選べるシステムです。

 そして何よりも国中から魔法適性がある者達が集まり、今まで自分が一番と思っていたのにさらに上を行く者達がいっぱいいるのです。

 外から見たら過酷な環境でしょうね。

 常に努力をしなくてはいけなく、努力をしたからといって能力が順当に上がるという物でもない。」

「確かに、それは過酷ですね。」

ラルフが頷く。

「そう言えば今年から入学の際の最低限の魔力量が下がったという報告は見ましたね。

 この街からも今年は多めに入ったかもしれませんが・・・

 天才と秀才は常にいますからね。

 挫折しなければ良いのですけど。」

「そうですね。」

武雄はラルフと軽口を叩きながら試作品にアイロンで熱を与え、乾かすのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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