第1952話 試験小隊の考え。(守秘義務はわかっていますよ。)
研究所の3階 会議室。
「以上が、所長からの情報だ。」
マイヤーが試験小隊の面々を前に先ほどの武雄と話した内容を皆に言っていた。
「・・・マイヤー殿・・・それ私達が前面に出るという事でしたけど・・・
私達かなりの少数で端の配置ですよね・・・これ・・・私達が狙われませんか?」
ブルックが手を挙げながら言う。
「だな。
戦術の話を皆でした時も考えたが、大多数の所に戦力を当てても戦果としては微妙。
双方で被害が大きくなるだけだからなぁ。
所長が言っている『多数で少数を攻めるのが戦術の基本』であると考えるなら狙うは端。
端であるなら横に居る貴族の増援程度を凌げば良いんだから、戦果は真正面から当てるよりも望めるし、何よりすぐに引けるというものだ。」
ベイノンが言う。
「私達だって同じ立場なら端の少数部隊の別貴族を狙った方が良いと思うでしょうよ。」
アーリスが言う。
「・・・櫓を組んで高みからの見物と思っていましたけど・・・
迎撃策を考えないといけませんね。」
ブレアが言う。
「むしろ陣地を空けて他の貴族の前面に立って目立つより、陣地に籠って迎撃した方があまり目立たないかも。
あまり目立たないなら所長の小銃改を我々も使ってオーガの数を減らせませんか?」
アーキンが言う。
「無補給と言うか弾丸を装填する手間が省けるのは良いが、多くなれば撃ち漏らしも出る。
その後の剣で迎え打つ事を考えれば魔力を使うには少し躊躇をするな。」
オールストンが言う。
「ふむ・・・アンダーセンはどう思う?」
マイヤーがアンダーセンを見る。
「所長の小銃改1と3を借りるのは良い案ですね。
問題はオーガが何体来るか・・・ですかね。
所長はお一人でオーガ32体でしたか、あの時は550mで開始しての話でしたが。
今回は慣例の戦争。
資料を読む限り相対する距離は300m。
魔法師の射程は250m・・・
所長が所持している小銃改1と3は6個を借りるとして、どの程度が当たるかも検討が必要ですよね。」
「あ~・・・あの時はスコープはなかったな。
命中率という点では今回は前回を圧倒するはずだ。」
「初撃は必ず当てるにしても最低10体は倒せそうですよね。」
「・・・さらには火力増強している小銃改3もあるしな。
あれはもしかしたらオーガを貫通して後ろのオーガを倒せるぞ。
少なくとも前の子供達の時はオーク2体が1発で絶命しているしな。」
「・・・オーガに対しては実証が必要ですね。」
「ん~・・・初雪殿達に頼んで近場でオーガが居る所を教えて貰って試験しに行くか?」
「所長が許可してくれればですね・・・
所長が率先して行きそうですが。」
「それはそうだな。」
アンダーセンの言葉にマイヤーが答える。
「小銃改を使うにしても倒せる数に限りはありますから。
相対して倒す方法も考えないといけませんよね。」
ブルックが言う。
「所長、1体なら1人で倒すんですよね。」
アーキンが呟く。
「俺達は凡人に毛が生えた強さだぞ?
3人で対処するのが一番だろう。」
「王都守備隊なら2人で1体でしょうよ。」
「いやいや、3人で当たると考えるのが一番だ。
それに過信は禁物だしな。」
オールストンとブレアが話している。
「はぁ・・・どちらにしても我々単体では対応できる数に限りがあるという事です。
となると、横に陣を張っているエルヴィス家に助力を願う必要がありますが・・・」
アンダーセンが言う。
「いくら所長が縁故とは言え、あまり大規模には出来んだろうな。
まずは数小隊を借りれる程度だろう。」
マイヤーが言う。
「となると・・・ん~・・・オーガの足止めをお願いした方が良さそうですよね。
足止めして貰っている間に我々が粗方倒してしまいましょう。」
「必要なのは魔法師小隊か・・・
弱くても雨のように降らせれば速度は鈍るだろうからな。」
「はい。
それに斜め上からの攻撃には頭を守ろうと腕を上げるでしょう。
そうすればがら空きの胴体に我々が打ち込めます。
かなりの数を打ち取れると考えられますね。」
「ふむ・・・その案を皆で打ち合わせて詳細な戦術に落とし込んでくれ。
それと各貴族の具体的な小隊の初期配置の検討をしてくれ。
エルヴィス家より依頼が来ている。」
「わかりました。
先程のと一緒に提出しようと思います。」
アンダーセンが頷く。
「うん、頼むな。
さてと・・・魔王国ご一行の方の報告書はまとまったか?」
「それなんですけど・・・一応、監視はしていましたが、これといって外出したわけではないので至極簡単な報告書しか提出出来ませんが、それでも良いのですよね?
はっきり言えば、報告する事がないんですけど。
報告書が必要なのはむしろ所長の方ですよね?」
「・・・所長の方がかなり濃密な打ち合わせをされているようだがな。
まぁそうなんだが、会談自体が非公式であり、所長から陛下のみに報告されていると言われている現状では紙では残せんだろう。
皆もわかっているだろうが、この件は当分は秘密だ。」
「「「はい、わかっています。」」」
「はぁ~・・・やりやすいな。
この辺は王都守備隊の人員を入れる事の良い弊害だな、物分かりが良すぎる。
あ~・・・それと所長から念を押されているが、もしこの件で事前に情報が他領に漏れて着陣時に魔王国にかなり不利な状況になったら本格侵攻されるようだからな。
情報を漏らして国家滅亡の引き金は引くなよ。」
「「「は~い。」」」
皆が返事をするのだった。
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