第1950話 215日目 今日もお疲れさまでした。(中々に思い通りにはいかない物です。)
「ふむ・・・酪農の方も補助金の素案を今作っておるが・・・どうも芳しくないようじゃの。」
「そうなのですか?」
「うむ・・・費用対効果がのぉ・・・
来年実施すれば来年中に成果が出る物ではないという所が・・・なかなかに予算を作るのが厳しいみたいじゃの。」
「まぁ相手は生き物ですし。」
「そうじゃの。
いきなり数倍の牛達を供給しろと言っても出来る物ではないからの。
数十ずつ増やしていくしかないのが現状での。
チーズは当面は輸入に頼らざるをえないのぉ。」
「税収面も始まったばかりですしね。」
「うむ、タケオが関与している物事が増収すれば品物の移動量が増え、結果、少しずつ税収が増えて行くだろうがの。
他の税収も街が発展していけば自ずと増えるのじゃが・・・かなり先じゃの。」
「まぁ、そうでしょうね。」
「税収、補助金、生産、供給・・・どうしたものか。」
「上手い解決策はないですよ。
まぁ、時間だけを短くするなら、酪農家を牛ごと購入するのが一番でしょうけどね。」
「・・・確かにその手はすぐに思いつきはするがの・・・元々の領主に睨まれるじゃろう。
禍根を作ってしまってはスミスの時が心配じゃよ。
わしはのんびりと過ごしたいのじゃよ。
タケオのお陰でとりあえず領内の農家がやる気になって収支がトントンの所まではわしが出来そうじゃしの。
そこまでは頑張ろうと思っておる。」
「その後はスミス坊ちゃんに?」
「うむ、どういう領内政策を取るのかを見守りながらお茶を飲んでおるよ。」
「いきなり仕事辞めたらボケますよ?」
「そこまで仕事人ではない。
わしにだってタケオみたいに趣味に没頭したいと思っておるのじゃぞ?」
「・・・趣味?
エルヴィスさん、何かしていましたか?」
「うむ!よくぞ聞いてくれたの。
わしは昔から国内外の珍しい物を集めるのが好きなのじゃ、要は収集家じゃな。」
「うん、却下ですね。」
エルヴィス爺さんが宣言すると即座に武雄が却下する。
「・・・」
エルヴィス爺さんがなんとも言えない顔を武雄に向けている。
「収集家は金持ちしか出来ませんよ。
エルヴィス家にその余裕はないでしょう?
もちろん私達キタミザト家にもありません。
ですので個人の少額での収集に留めるのなら何も言いません。」
「・・・そうなのじゃ。
だからわしはコツコツと小遣いを貯めてシモーナ殿から魔王国の珍しい物を買う予定なのじゃ。」
「何を買うかは決めていないのですか?」
「目標金額が金貨500枚じゃ。
溜まったらこの金額で何が買えるのか問い合わせしようと思っての。」
「あれ?ブラッドリーさん達が言っていましたけど、確かドラゴンの脱皮した時の皮は1㎏当たり金20枚以上で売れると言っていましたね。
クゥの脱皮した皮を買い取って転売してはどうですか?
まぁクゥが脱皮する予定は約20年後ですけど。」
「わし死んでるの。」
「え?大丈夫ですよ。
パナが居ますもん無理やりにでも生かせますよ。」
「無理は止めてくれるかの?
寝たきりもボケもしたくないのじゃ。」
「・・・善処しましょう。」
武雄が少し考えてから頷く。
「考えないといけない事なのかのぉ。
えーっと・・・なんじゃったかの。
そうそう趣味は収集家という所だったの。
まぁ個人で楽しむから気にしなくて良いのじゃ、わしはわしのやりたいようにするのみじゃ。」
「資金が足らないからと言って家のお金使ったら流石のスミス坊ちゃんでも怒ると思いますよ。」
「そんなことするわけないじゃろうに。
それにしても・・・やっと収支がトントンで次代に渡せるの。
これ以上、代替わりとして良い時はないじゃろう。」
「そうですね。
下地は私達が作っておきましょうか。」
「・・・タケオの場合はやり過ぎないかの心配があるがの。」
「私、まだ何もしていない気がしますけど。」
「ちなみにだが・・・タケオ、スミスの時代は何をするのかの?」
「そうですねぇ・・・人工湖も完成していますし、コンテナ搭載馬車も稼働していますし・・・
魔王国からの輸入品を王都とこの周辺の領地に売る輸入業でしっかりとした我が家の地位確立と東町近辺の保養地開発ですね。
輸出の方はお酒とソースが主力ですが、他にも何か出来たらいいですよね。
輸入品は米ですけど、他にも魔王国のみで扱っている商品を探してみて・・・保養地はちょっとわからないですけど、何か非日常を味わえる物を用意するのが一番ですかね。
東町でしか食べられない肉とか魚・・・あぁ、そうか紅魚の養殖も目途を付けないといけませんでしたね。
やらなきゃいけないことたくさんですね。
あ、それにコンテナ搭載馬車も後々には王都や他の領地に売る気ではいますし、もしかしたら旅の安全性の向上を考えてコンテナ搭載馬車が一般にも普及するかも。
これからを見据えるとローチ工房とキャロルさん、モニカさんの所の連携が重要なのかもしれませんね。」
武雄が考えながら言う。
「・・・タケオ、やる事が多すぎじゃよ。
まぁ、タケオはいろいろとやっていくのじゃろうの。」
「ええ、それに米料理も普及させないといけませんよね。
これはエルヴィスさんの時代で良いんですよね?」
「ん~~~・・・・まずは近隣貴族と王家だけにしておこうかの。
輸入量もそこまで多くはないしの。
もちろん、他には教えず、我が家でのみ提供する料理も作らねばならぬがの。
タケオ、何かあるかの?」
「ん~・・・それは考えます。
今、パッと思いつかないですね。」
「うむ、そうか・・・じゃが、レシピが増えるというのは良い事じゃの。
さて・・・未来の話はまた後日するとして・・・
ビエラ殿、食べ終わったかの?
少し将棋をしようかの?」
エルヴィス爺さんがビエラに顔を向ける。
「あ~?・・・はい!ダニエラ!勝ち負けた!
ここで勝つ!」
「パナ。」
「はい、タケオ、ビエラはダニエラと1勝1敗だったようです。
なので伯爵に勝って良い気分で今日を終えたいようです。」
チビパナが武雄の肩に現れて言う。
「ふふふ、ビエラ殿よ、王都に行っている間にわしも強くなったのじゃ。
いざ!」
「はい!」
ビエラがエルヴィス爺さんの挑戦を受ける。
「タケオ様、久しぶりにリバーシしましょう。」
アリスが言ってくる。
「うん、私達はのんびりとしながらエルヴィスさんとビエラの将棋でも眺めていましょう。」
武雄達は睡眠前のマッタリした時間を堪能するのだった。
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