第1948話 アリスの帰宅。(ビエラは散策に行っています。)
武雄が執務室で本を読んでいると扉がノックされる。
「はい、どうぞ。」
「失礼します。」
返事をするとルフィナが入って来る。
「キタミザト様、アリス様が戻られました。
客間でマッタリとされています。」
「そうですか。
・・・ルフィナ、アリスは何か買って来ていましたか?」
「はい、毛糸玉を大量に買ってきておりました。
アリス様は何か作るのでしょうか?
何かするのでしたら私も手伝いますが・・・」
ルフィナが聞いてくる。
「アリスのは・・・ん~・・・手伝うとかではないと思うんですけど・・・
ちなみにルフィナは何か編み物は出来ますか?」
「簡単な物なら出来ます。」
「そうですか。
空いた時間に編み物というのも良いかもしれませんね。
ルフィナ、欲しいなら1、2個程度なら融通して貰えるかもしれませんよ。
あ、セレーネとルアーナにも聞いてみてください。
欲しいなら頂けるか確認した方が良いでしょう。」
「わかりました。
では、仕事に戻ります。」
「はい、お仕事頑張ってね。」
「はい。
キタミザト様、失礼しました。」
とルフィナが退出していく。
「コノハから報告は聞いていましたが・・・どんだけ買ったんでしょうね。」
武雄はそう言いながら席を立つのだった。
・・
・
エルヴィス伯爵邸の客間にて。
エルヴィス爺さんとアリスが話をしていた。
「はぁ・・・アリスが珍しい行動をするからじゃ。」
「確かに初めて買いましたけど・・・おばさん方から『まぁまぁ、結婚すれば変わりますよね~』とか『今から準備ですか?』とか『最近子供達といらっしゃいますもんね』とか『アリス様、失敗しても良いからとそんなにいっぱい・・・大丈夫、気持ちが大事ですからね!最初は皆、下手なんですから!』とか『あのアリス様が・・・』とか。
最後なんて泣かれましたよ・・・私、どれだけ編み物が出来ないと思われているんでしょうね。」
アリスが呆れながら言う。
「いや、事実としてアリスは出来んじゃろう?
ほれ、ジェシーからの宿題を見せるのじゃ。」
「くっ・・・私はまだまだ練習中です。
ですが・・・私は下手ですが、出来ない訳ではありません。
皆さん何か勘違いをされていますよ。」
「はぁ・・・そういうのはジェシーの宿題が直ぐに終わらせられるくらいになってから言う言葉だと思うの。
で?タケオがこれをの。」
エルヴィス爺さんとアリスの前に置かれた各種の毛糸玉を見ながら言う。
「はい、精霊通信と名付けたようですが、コノハがパナ殿からの依頼で買いました。
どれだけ買えばわからなかったのでとりあえず色々な物を買ってみたのですけど。」
「ふむ・・・タケオがさっき言っておったのじゃが、簡易的に出来る布のような布に使うのかの?」
「私にもわかりませんが・・・コノハ、わかる?」
「たぶん不織布だと思うよ。
簡単に言えば糸を細かくしてノリで固めた布ね。
織らないから製作時間が少なくて済むし、熟練度は低くて済むわ。
まぁ生地みたいにしっかりとはしていないから衣服にはあまり向かないけどね。」
チビコノハが毛糸玉の横に現れて2人に説明する。
「あまり?」
「うん、不織布は織ってないから引っ張ったりするとすぐ解れてしまうのよ。
だから基本的には引っ張ったりしないような製品に使われるわね。
生理用品にも使えるわよ。
素材がどんな物かによるだろうけど・・・安価に出来るからある意味原価低減案になるかも。」
と扉がノックされエルヴィス爺さんが許可を出すと武雄が入ってくる。
「アリス、おかえり。」
「タケオ様、戻りました。
ご要望の品ですよ。」
「ルフィナが言っていましたが、多く買いましたね。
ルフィナ達子供達が欲しがったら使わない分は渡してください。」
「わかりました。
で、タケオ様、どれが欲しかったのですか?」
「いえ・・・特にはないですけど・・・
これと・・・これと・・・これかなぁ。」
武雄がひょいひょいと数個手に取る。
「それだけ?」
「お試しですし・・・残りはルフィナとかにあげましょうか。」
「そうですね。
私使いませんし。」
「アリスはこれで練習でもする方が良いと思うがの。」
「ジェシーお姉様の宿題はこういったものではありませんし・・・目の前にあるとやる気が削がれてしまうので今は必要ありません。
・・・メイド長にお土産として渡しておきますかね。」
アリスが言う。
「・・・アリス、無理しなくて良いですからね?
やる気がある時にすれば良いんですから。」
武雄が優しく言う。
「タケオ様の優しさが今は痛いです・・・平気です、ジェシーお姉様の方は何とか熟します。
気が向いたら次のをしますから。」
「そうですか。」
「・・・ちなみになのですけど、タケオ様は裁縫出来ますか?」
「出来るわけないでしょう?
見栄えを気にしないという程度でボタン付けが出来る程度ですよ。」
武雄が即答する。
「良かった、同じくらいなんですね。」
アリスがホッとする。
「エルヴィスさんは出来ますか?」
「わしもタケオと変わらんの。
衣服は専門家が作った方が良い物が手に入るしの。
その為にコツコツと貯めているのじゃよ。」
「ですよね。
あーそうだ、ラルフさんのお店で聞いたのですけどね。
新たなコートを作っていましたよ。
ダッフルコートと言うんですけどね。」
「ほぉ、ラルフの所もやる気じゃの。
トレンチコートとは趣が違うのかの?」
「ええ、それは夕食を食べ終えてから報告しますね。」
「うむ、もうすぐ夕食だからの・・・そう言えばビエラ殿を見かけないの。」
「クゥとミアとタマはコラの所に行っていますよね。
ビエラはクゥ達に付いて行ってから散歩して来ると言っていましたし。
夕食ぐらいには戻ってくるんじゃないですか?」
「ふむ・・・まぁそこら辺は大丈夫だろうの。」
「ええ、そうで・・・ん?」
武雄が眉間に皺を寄せる。
「どうしたのかの?」
「パナがミアに確認を取ったらヴァレーリ陛下の所に遊びに行ったそうです。
ミア達はこれから戻るそうです。」
「そうか。
はぁ・・・うん、まぁビエラ殿も平気じゃろう。
夕食には間に合わないかもしれないがの。」
「間に合わなかったら・・・落ち込むでしょうから何か用意してあげておかないといけませんね。」
「冷えても食べれるパンと何かを用意しておこうかの。」
武雄とエルヴィス爺さんがため息交じりに言うのだった。
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