第1947話 ビエラ散歩中。(不織布かぁ・・・とりあえず考えられる方法で作ってみよう。)
エルヴィス伯爵領の東町と街との間にある村にて。
「あ~・・・着いたなぁ。」
ヴァレーリが馬から降りて背伸びをして体を解している。
「すんなり来れたわね。
ちょっと休憩少なかったのかも。」
「まぁ着く事が前提ではあるが、早く着いて寝たいしな。
で、ビエラ、なんで居るんだ?」
ヴァレーリが隣に普通にいるビエラに声をかける。
「あ~。」
「いや、普通に遊びに来たとか言われても困るんだが・・・お前、飛んできたのか?」
「はい!」
ビエラが返事をする。
「まぁ・・・良いんだが・・・夕食どうするんだ?」
「あ。」
「帰るよって・・・ここ人間種の国だよな?
良いのか?ぽんぽんとドラゴンになって。」
「あ~?」
「いや・・・うん・・・確かにドラゴンに攻撃するなんてしてこないだろうけど。
で?なんだ?」
「あ?」
「え?・・・本当に遊びに来ただけなのか?」
「あ~。」
「キタミザト殿からとかエルヴィス伯爵からとかないのか?」
「にゃい!」
「そ・・・そうか・・・ん~・・・何する?」
ヴァレーリがビエラに聞く。
「しょーぎ!」
「・・・夕食に間に合うのか?」
「らいじょうぶ!勝つ!」
ビエラがヴァレーリを指さして言い放つ。
「ふ・・・良い度胸だな・・・簡単に勝てると思うなよ。
ビエラ、今日は夕食抜きを体験させてやろう。」
「あ~。」
ヴァレーリの宣言にビエラがやれやれと手を挙げている。
「・・・やるぞ、カールラ、すまんが、先に宿に行っている。」
「はいはい、シモーナさんには言っておくわ。」
ブリアーニが呆れながら言う。
「うん?ダニエラさん?
もう宿に?」
シモーナがやってくる。
「はい、部屋に行くと言っていました。」
「まぁ・・・手続きこれからなんですけどね。
ならさっさと済ませないといけませんね。」
シモーナがヴァレーリ達の後を追うのだった。
------------------------
エルヴィス伯爵邸の武雄の書斎。
「・・・ここに座るのが久しぶりに感じますね。
さて・・・さて・・・何しようかな。」
武雄が夕食までの暇つぶしを考え始める。
「タケオ、剥がせるノリの配合を書きたいので紙とペンをください。
実験は明日からしますけど、基本的に私が考えているのを今のうちに書き出したいのです。」
チビパナがいつの間にか武雄の肩におり、言ってくる。
「はい、お願いしますね。
それに不織布を考えないとなぁ・・・織らない布なんてどうやるんでしょうね?」
武雄が机の引き出しから紙とペンを取り出し、人間大になったパナに渡しながら言う。
「知らないのですか?」
「普通の人は知らないと思いますがね。
ただ・・・不織布とは織らないで圧着した布ではありますけど、考え方としては子供の頃作った牛乳パックからの再生紙も不織布と似た構造だと思っています。
要は繊維を水に溶かし、型に入れ、乾かす。」
「糸でするなら接着剤を入れないとボロボロになりますよ。」
「なるほど、なら水に接着剤を溶かしますか。
・・・パナ、王都に行く前に接着剤作りましたよね。」
「正確には報告書を作成しています。
トレーシーとスズネの宿題ですよね?」
「あれを使うか・・・でも・・・乾かすのに時間がかかるのか・・・」
「タケオ、アイロンで水分を飛ばすという手もありますよ?」
「電熱線のないアイロンって・・・何かの歴史博物館で見ましたけど、木炭アイロンでしたか?」
「炭火アイロンですね。
タケオは使った事ありますか?
確か伯爵邸でも使っていますよ?」
「・・・ありませんね。
焦げはしないでしょうけど・・・均一に伸ばすのは大変そうですね。
ですが、そうか、アイロンがあるのですね。」
「はい、なので、水と接着剤を混ぜ溶液を作る。
そこに糸を細かく刻んだ物を入れる。
型枠に流し込みある程度水抜き。
アイロンを使って皺を伸ばしながら水分を蒸発させる。
これです。」
「ふむ・・・」
武雄がパナが説明するのを手元のメモ用紙に殴り書く。
「試作は割と簡単に出来そうですね。
あれ?・・・そう言えば、和紙と海苔って作り方一緒ですね。」
「はい、要はどんな素材でも紙のような状態には出来るという事ですよ。
まぁ厚さについては素材と作業員の腕に依ってしまいますけどね。」
パナが言う。
「そこは致し方ないですよ。
完全機械化なんて需要があって、精製に熟知した者がしないと成り立たないものですからね。」
「・・・タケオは玄米精製機作りましたよね?」
パナが真顔でツッコんでくる。
「趣味です!」
「ですが、タケオの今の言葉とは違って米の需要はなかったと思いますけど。」
「趣味です!
というよりあんなの手作業でやる事ではありません。
需要?そんなものは後から作ります、その為の料理なんですよ。
事実、玄米精製機は売れましたし、需要は後から来る事もあるという実例ですよ。」
「なら不織布も機械化すればいいではないですか。
タケオ的には売れると思っているのでしょう?」
「・・・まずは試作してからね。
その後、作業の中身を確認して機械化出来るならしましょう。」
「そうですね。」
パナが頷く。
「あ、コノハに言ってアリスに屋敷への帰りに糸の塊を買って来て貰ってください。」
「毛玉ですね。」
「・・・パナ、今略しましたよね?
確か・・・マフラーとかを作る際の丸くしてあるのって毛糸玉て言うんじゃ。」
「毛玉です。」
「そう言うのも正解なんですかね?
まぁとりあえずコノハに連絡お願いしますね。」
タケオは正解がわからないのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




