第1945話 ジーナの報告書届きました。(スミスの成長に期待しましょう。)
エルヴィス伯爵邸の客間。
「・・・うん、陛下に許可は貰えましたね。
エルヴィスさん、ジーナからの報告書です。」
武雄が読み終えたジーナの報告書をエルヴィス爺さんに渡す。
「・・・うむ・・・そうか・・・
まぁアリスのレイラ宛の手紙は陛下が持っていてくれるのなら大して問題はないだろうの。
で・・・援軍は無いか、まぁ当然じゃがな。
王都の壁如きが来るのなら断然、断るのが正しい判断というものじゃ。」
「エルヴィスさんがそんな事を言うなんて・・・そんなに使えないのですか?」
「あ奴らは欲に目が行き過ぎるからの。
戦果が欲しいとか・・・戦場では必要ない欲求じゃよ。
他領の兵士の命を軽く見過ぎじゃ。
死ぬなら勝手に死んでくれ、こっちに迷惑をかけるなっという所だな。」
「うん、『所だな』ではなく、思いっきり言っていますよね。
なら来なくて良いですね。」
「まぁ、陛下が何かするよう・・・あぁ二次防衛ラインじゃな。
ヴィクターからの情報がわかっている今となってはどうなのかと思うのじゃが・・・やってみるのも良いじゃろうの。」
「防衛訓練なんでしょうね。」
「・・・動員訓練・・・とでも言うのが良いじゃろう。
まぁ後ろが何かしているという事じゃな。」
「迷惑にならなければ良いですね。」
「平気じゃろう。
王都が慌ただしくしているだけだしの。
実害は一切ない!と思いたいの。」
「留守番のアリス達に領境閉鎖でもして貰いますか。」
「その人員はいないだろうがの。」
「あ~・・・そうでしたね。
じゃあ適当に対応して貰いましょうか。」
「それしかないの。
それにわしらの方が大変じゃしの。」
「その通りで。」
「タケオの方の戦術は上手くいっているかの?」
「すみません、遅れています。
出来る限り早めに対慣例の戦争での初期配置を検討してご連絡します。
はぁ・・・今回の事を伝えたらマイヤーさん達悩みそうですね。」
「ふむ・・・そうじゃの。
こっちとしては回復戦法の確実な運用方法と実践形式の反復訓練を実施しておる。
あと、対峙戦力が過剰だからの。
万が一を考慮して盾の補強案を出して欲しい。
予算が合えば実施するかもしれん。」
「わかりました。
研究室長に言っておきます。」
武雄が頷く。
「それと、アリスは買い物じゃの?」
「買い物というか生理用品の開発の為の打ち合わせですね。
鈴音も連れて行っていますし、コノハも説明すると言っていましたよ。」
「うむ、そうか。
ラルフの所かの?」
「最初は頼らないでと思ったのですけど、布の事を良く知る知り合いってラルフさんを置いて他にいないのですよね。」
「本職じゃしの。」
「ええ、なのでそれとなーく、上手く説明するようには言っています。」
「うむ、無理じゃろうの。」
「ですよね。」
「ラルフの所は嗅覚が鋭いからの。
タケオもそう思うじゃろう?」
「はい、商品になりそうで利益が見込めるなら手を挙げるでしょう。
ですが、生理用品はちょっとわからないですけどね。」
「ふむ・・・ラルフがどう対応するかは見ものじゃの。
わしらは初回の打ち合わせ結果を待って居れば良いだけじゃ。」
「はい。
あ、そうだ、私も布の研究しないと。」
「タケオもするのか?」
「まぁ・・・正確には簡易的に出来る布のような布なんですけど。」
「わからんことをするのじゃな。
まぁ成果は期待して良いのかの?」
「なんとも言えません。
ですが、用途は広いと考えます。」
「ふむ・・・布を作るか・・・安価で出来るのが理想じゃが・・・まぁ作られてから考える事じゃの。」
「はい。
あと紙の精製をしてみたいと思っています。」
「・・・それは専売局の事業じゃから出来んぞ?」
「専売局に確認したら少量を売るなら審査を通してくれと言われています。
職業体験のような事をさせたいのです。」
「ふむ・・・協議済みか・・・
まぁ王都と協議して進めてみると良いじゃろう。
上手く行けば、わしもしてみよう。」
「わかりました。」
武雄が頷く。
「さて・・・今日あたりスミスに穀物の輸送の話が届いたかの。」
「事前には陛下に言っていますし、ジーナにも伝えていますが・・・
あとはどう動くかは王城次第ですね。」
「ふむ・・・スミスから連絡があると思うかの?」
「安全策を取るなら一度は聞いてくるでしょうけど・・・こっちから何か言う事なんてあるんですかね?
要は与えられた金額で指示された小麦を買い、期日までに送る事・・・ですよね?
それ以外に指示する事なんてないと思いますけど。」
「第1皇子一家と第2皇子一家を動かすのじゃろう?
のちのちスミスの世になって小言を言われても可哀想だしの。」
「それこそ、そんな事を言いだすのならそういう者だと思って距離を保つしかないですよ。
この程度の事で後々も言われるのなら軽い物でしょう。
『あはは、あの時はありがとうございました』ぐらい言いのける精神構造にはなるんじゃないですか?
まぁクリフ殿下とニール殿下がそういった事をさせるとは思いませんけどね。」
「ふむ・・・となると、今回の課題はスミスにとっても将来の上司の素の対応がわかる可能性があるという事じゃの。
上司の性格は早いうちに知っておいた方が耐性がつくじゃろうし、良い経験になると良いのじゃが・・・」
「私達が心配しても王都は王都で対応して貰うしかありませんよ。
レイラさんも居ますしね、上手くまとめてくれるでしょう。」
「そうじゃの・・・」
エルヴィス爺さんが頷くのだった。
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