第1944話 寄宿舎への帰り道。(あ、エイミーにバレた?)
寄宿舎に向かう道。
「ん~・・・スミス、3日後までにレイラお姉様に条件を書き出した物を提出と言われてしまったわね。」
「はい、エイミー殿下、どうしましょうかね・・・レイラお姉様からはまずは最初の僕が考える条件を書き出してみようといっていましたけど・・・ジーナと僕だけでは不安です。
エイミー殿下に相談しても良いのですかね?」
「本来はダメよ。
複数に同数を発注する場合、限られた請け負い者に有利になる可能性があるからね。
でも・・・なーんかおかしいのよね。」
エイミーが首を傾げる。
「おかしいのですか?」
「うん・・・この手の輸送については何通りかはあるのだろうけど・・・
昨日、エリカ殿がジーナから聞いたのを報告されたはずね。
今日、立ち会っていたからそれはわかる。
お爺さまの即決具合とパットに総監局の人員がというが・・・ちょっとねぇ・・・」
エイミーが考えている。
「エイミー殿下、陛下方に些か不審な点はあろうともスミス様とエイミー殿下に課せられることは変わりありません。」
ジーナが口を挟み、エイミーの思考を別の方向に向けさせる。
「・・・うん、そうね。
ジーナの言う通りね。
今回の件についてはスミスが私に相談する事が禁止されてないわ。
なので、スミスは気兼ねなく私に聞いて来て良いわ。」
「良いのですね?
エイミー殿下のさっきの言い分だと発注者と片方の請負者が相談してしまうと残るもう片方の請負者に不利益になるからダメという事ですよね?」
「そうだと思っているから発注者としての私は公平に聞かない事にしているし、聞くにしても両者から聞くようにしているわ。
もしかしてやり方としては違うのかもしれないけど、それで今まで問題が起きていないというのも私がそう信じる所以よ。」
「なら今回はエイミー殿下とパット殿下に聞きに行った方が良いんですか?」
「パットはこういった件を対処した事ないんじゃない?
聞くだけ無駄よ。」
エイミーがバッサリと切り捨てる。
「・・・エイミー殿下、なんでそう思われるのですか?」
ジーナが聞いてくる。
「うん?だって、今回の数量は子供が扱うにはちょっと金額も数量も大きいでしょう?
パットが第1皇子一家から指示があって対処するにしても第3皇子一家には相談するはず。
でもアルマお姉様やレイラお姉様からこういった話を聞いた事もないし、そもそもパットの性格からいって成し遂げたら私に自慢してくるはずだしね。
私が入る前の王立学院の1年生の時にあった可能性もあるだろうけど・・・その期間で王都や第1皇子一家領で不作等があったという記録がないからする必要が無いわけよ。
なので、パットはした事がないわ。」
「なるほど。」
ジーナが頷く。
「エイミー殿下はあるのですか?」
「この金額と量はないわね。
それに第2皇子一家領で不作だったら王都で買い付けするより周辺の貴族領か第1皇子一家から買うのが早そうだしね。
あ・・・ふむ。」
エイミーが途中で何か考え始める。
「ちなみにエイミー殿下は大量な輸送の経験はないですけど、第2皇子一家領から大豆と小豆を王都で販売する為に王都で問屋巡りをして輸送関係の知識を蓄えましたよ。」
ドネリーが言ってくる。
「あ、そう言えば、大豆と小豆をタケオ様は王都で見つけたんでしたよね。」
「そうです。
その卸先を作ったのがエイミー殿下なのです。」
「凄いですね。」
「ええ!なので、スミス様はエイミー殿下に頼って良いのですよ。」
ドネリーがエイミーを褒めている。
「そうね・・・あの時は大変だったわよね。」
エイミーが直ぐに復活する。
「はい、一緒に何軒も何回も問屋を行き来しましたよね。」
「そうね、見聞きした事もない穀物を説明するの大変だったわね。」
「ご実家とも何通もやり取りしていましたもんね。」
「そうね。
輸送日数や費用の確認、定期的に出ている王都への商隊の間隔・・・なんで私やったんだろうね?」
「良い経験でしたね。」
「そうね。
まぁ・・・輸送については少量だけど経験済みよ。
今回は量が量だけに実家との話を付けないといけないけど・・・私の権限で第2皇子一家からの輸送は間違いなくさせるから問題ないわよ。」
エイミーが言い放つ。
「エイミー殿下、カッコいいです!」
スミスがエイミーに尊敬の眼差しを向ける。
「そぉ?・・・ふふ。」
エイミーも満更でもない気持ちになる。
「はぁ・・・エイミー殿下、スミス様。
もうすぐ寄宿舎です。
レイラ殿下から出ている条件の書き出しをしないといけませんね。」
ドネリーが「エイミー殿下、喜びすぎです」と思いながら言う。
「そうね。
じゃあ、戻って作戦会議しますよ。」
エイミーが良い顔をスミスに向ける。
「「作戦会議?」」
スミスとドネリーが聞き返す。
「・・・輸送作戦よ!
王家領から王都を経由させてエルヴィス伯爵領まで持って行く壮大な作戦ね!」
エイミーがそう言ってチラリとジーナを見る。
ジーナは真顔で見返したが「あー、これエイミー殿下にはバレたわ」と思うのだった。
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