第1938話 船とクレーンはどこまで行った?(模型が出来ているよ。)
ローチ工房内の設計室。
「「・・・」」
ダンとクローイが緊張しながら武雄の検図を受けている。
まずは机の1つにクレーンの図面が数十枚置かれているのを武雄が一枚一枚目を通していた。
「・・・これ、ローチさんやキャロルさんは見たのですよね?」
武雄が6割方の図面を見終わり、顔を上げてクローイに向かって言う。
「はい!」
クローイが返事をする。
「ふむ・・・
模型も出来たのですね?」
「はい!こちらになります。
すみません!キタミザト様、ちょっとスペースを・・・」
「はいはい。」
クローイが部屋の隅に用意してあった1/10模型を持って来て机に乗せる。
「・・・ん~・・・」
武雄が模型と図面を見比べて考えている。
「・・・あの・・・如何でしょうか?」
「クレーン単体としては、これで一度試験機を作って荷重試験や動作の確認をして、補強等を追加で設計して行けば、まぁ問題ないでしょう。
見た感じそこまで弱いようには見えませんしね。
ただ・・・」
「ただ・・・」
武雄が言い淀むとクローイも固唾を呑んで言葉を待つ。
「・・・足元の基礎がなぁ・・・石造りの建物に使っているのを、とあるのが気になるんですよね・・・
これ・・・荷重的に大丈夫なのかな?」
「建物の石は魔法師が生み出す、均一な品質の石材です。
研究所でも使用しておりますが、建物の荷重を受けての割れがありません。
地上部の所にレールを配置はしますが、あくまで基本となる石が割れるとは考えていません。」
「ふむ・・・実績ありか・・・
・・・クローイさん、これを作るのに大まかに費用を出していますか?」
「はい!現在金貨184枚は必要だろうと考えています。
実施するのにはもう少し詰めた話し合いを色々な工房に持ち掛けないといけないとは思いますが・・・」
「ふむ・・・そうですか・・・
クローイさんはとりあえず、エルヴィス家に提案出来るような資料の作成と大まかな概算見積もりの内訳を用意しなさい。」
「はい!
わかりました。」
クローイが頷く。
「さて・・・ダンさんの船は・・・船ですね。
まぁ元々テンプル伯爵領での中型を改造するという所なので一からの設計ではないというメリットと既存の木造船の設計思想と新素材との兼ね合いをどうするかが問題なのでしょうけど・・・
船は作らないとわからないかなぁ・・・」
武雄がクレーンの図面が置かれた机の隣の机に移動し、そこに並べられている資料の数枚を捲りながら言う。
「はい!
模型はこれになります!」
ダンは流石に机に持っては来ないが部屋の隅にある模型を指さす。
「とりあえず木でですね・・・
浮かべましたか?」
「いえ・・・まだそこまでは・・・」
「一度浮かべてみますか・・・浮きますよね?」
「浮く・・・はず・・・です。」
ダンが言葉を絞り出す。
「一度、周りに囲いを作って、水で満たして浮くか確認ですね。
バランスが悪ければ倒れますから、何かしら仕掛けが必要でしょうし、確認の為には一度してみますか。」
「はい!わかりました!
それと一応、分割で作り、繋ぎ合わせて1隻の船を作る方法で図面を描いたのですが、進めて良いでしょうか?」
「各船体部分の繋ぎ目を確認する為にもこの模型の大きさでその分割船体を作ってみましょうか。
浮かべて見て水漏れ等の確認と歪みの修正方法も検討しないといけないでしょうしね。」
「はい、わかりました。
キャロルさんと協議を進めます。」
「うん、お願いします。」
武雄が頷くのだった。
「ふぅ・・・うん、2人とも良く頑張りましたね。
専門外の私が見ても問題があるような箇所は見当たりませんでしたので、この時点での図面としては問題ないと思います。
自分達で良く考えていると私は思います。
まあ、あとはローチさんやキャロルさんとも打ち合わせをしながら実施に向けてのもう1歩踏み込んだ設計をして貰う事になるでしょう。」
「「はい!」」
ダンとクローイが嬉しそうに頷く。
「じゃあ、とりあえず2人は休みなさい。
寝てないでしょう?」
「あ~・・・わかりますか?キタミザト様。」
クローイがホッとした顔で苦笑する。
「まったく病気になったらどうするのですか・・・ダンさん、ごめんなさいね。」
「いえ、設計者としては面白い物をしているので、お互いに楽しんでしています。」
ダンもホッとした顔をしながら言う。
「設計業務なんて徹夜したって良い図面は描けませんよ。
それに仕事も大事だけど、あまり無理はする物じゃないですよ。
今は身体が付いていっていますが、そのうち付いていかなくなる日が来ます。
その時に後悔しない為にも毎日決まった時間に寝て、起きる程度の事はしなさい。
それだけで随分と身体の調子は整いますから。」
「「はい、キタミザト様。」」
ダンとクローイが返事をする。
「あとはまあローチさんとキャロルさんとで打ち合わせしておきます。
具体的な指示はあの2人からさせますからね。」
「「はい。」」
「じゃ、とりあえずお疲れさまでした。」
武雄が立ち上がる。
「「キタミザト様、ありがとうございました。」」
ダンとクローイも席を立ち武雄を見送るのだった。
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