第1937話 コンテナはどうかな?(突拍子もない事は言っていませんよ?)
ローチ工房にて。
「へぇ~・・・出来たんだぁ。」
武雄が試作品のコンテナを積んだ荷馬車を見上げて呟いていた。
コンテナが荷台の上にあり、後方の観音扉と御者台の真ん中から入れるように作られた細めの扉が開いた状態で置かれていた。
「仮組程度なのですけどねぇ・・・」
「一応、やれるだけの事はしていますよ。
組む毎に問題点が出て来るんです。」
ローチとキャロルが難しい顔をさせながら武雄の横で荷馬車を見ている。
「ん?・・・横板と下板の繋ぎが・・・これってSL液ですか?
繋ぎ目が綺麗に塞がっていますね。」
武雄がコンテナに近付く。
「ええ、全板をボルト固定にしても良いんですけど・・・馬車の揺れでズレるんです。
なので、長手方向の横板と天井、床はSL-05液を塗って焼いています。」
「・・・」
武雄は繋ぎ箇所を見ながらキャロルの説明を聞いている。
「御者台から入れるようにする扉と後方の荷下ろしをする為の扉はモニカの所で使っている扉用の蝶番の中で大きいのを今注文しています。
届き次第取り付ける予定です。
今の状態は扉の重さに耐えられなくてすぐに曲がってしまうので、ローチさんの言う通り仮組という形になっています。」
キャロルが言ってくる。
「・・・ふむ。
ん~・・・基本外形は問題ないですね。」
武雄が考えながら言う。
「「ありがとうございます。」」
ローチとキャロルが答える。
「で?今面倒な問題点は?」
武雄が聞いてくる。
「換気です。
組んでみてわかったのですが、晴れていると中の温度が異様に高くなります。」
「まぁ・・・鉄板に囲まれて照らされれば暑いでしょうね。
それで?ローチさんとキャロルさんの事です。
換気用の窓を考えたのではないのですか?」
「はい、その通りです。
ですが・・・キタミザト様、このコンテナは水上輸送をするのが前提ですよね?」
「そうですね。」
「大きい窓を設けてしまうと水が入る可能性があります。
中に水が入る可能性のある隙間を設けるのは問題になると思いますが、食料品を運ぶ際にコンテナ内の温度が異常に高いというのは腐る事に繋がる為、ある程度の大きさがある窓が必要だと考えています。」
「もっともですね。
ですけど、現状の幌馬車も風雨に晒されていますよね?
なので多少窓が大きくても問題ないのではないですか?
水が入っても少量なら木箱や樽で覆っているのです、問題ないでしょう。
それに雨が激しくなったら閉めれば良いだけの話です。」
「そうなのですが・・・一般家庭の窓を組み込むことは出来かねます。
一般家庭の窓は取り付けるのに幅が必要になります。
今回のコンテナのように厚さが無い場合、下地を作らなくてはならない為、荷物を載せるスペースが狭くなってしまします。」
「・・・うん、じゃあ、一般家庭用でない物にすれば良いじゃないですか。」
武雄が「問題点がわからない」という顔をさせて言う。
「その・・・窓の種類がないのです。」
「・・・??
言っている意味がわかりません。」
武雄はキャロルとローチが悩んでいる事がわからなかった。
「ですから、窓というのは窓を横に引く型と内からの押す、もしくは引いて開ける型になります。
どの家々を見てもどちらかしかありません。」
キャロルがわかって貰おうと説明してくる。
「・・・そうですね・・・で?何が問題なのですか?」
武雄も「まぁ大別すればその2つだろうね」と思うが「わかっているなら問題ないじゃん」とも思っている。
「ですから・・・横に引く型では下地が必要で内外に開ける型は開けておく為につっかえ棒が必要なのですが、移動中の振動で落ちたり、棒が曲がり収納が出来なかったりといった不具合が生じています。
私達としてはこの押し引きの型はコンテナには使えないだろうと考えています。」
「うん、なら下地があまりいらない引く型の窓にすれば良いだけですね。」
「・・・そんな窓があるのですか?」
キャロルが聞いてくる。
「・・・紙はありますか?」
「はい、こちらに。」
ローチが直ぐに紙と鉛筆を武雄に渡す。
「何を難しく考えているのかわからないのですけど・・・
換気というのは基本的には対面に1個ずつ付けた方が風通しが良いとされています。
となると2か所。
私としては御者台の後ろと後ろの扉の所に欲しいですね。」
武雄が長方形を書いて説明をしだす。
「「・・・」」
「で、ここにさっきの言っていた2種類・・・3種類ですか?
それらは付かないけど窓が欲しいとなると。
まぁある程度積み込む方法を検討はする必要はあるでしょうけど・・・
上から見ると・・・こうやって・・・壁があったとして・・・ここの部分に格子状にスリットを入れて・・・スリットの外側の上下に鉄板が通るレールを付けて・・・それを塞ぐような板を外側に入れて、内側には取っ手を付けて・・・ほら、窓出来た。
これなら下地が薄くて済むと思うのですよね。
まぁ内側の取っ手の移動距離が長いからその分、塞ぎようの板を大きく作る必要はありますかね。」
武雄がスライド式の開口部を開け閉めする方法を書き出す。
「「採用します・・・」」
ローチとキャロルが項垂れている。
「開口部を作り、それを塞ぐ。
これが窓の基本だと思うんですけど・・・まぁ・・・基本かどうかは別としても・・・
極論をいえば、扉も窓も基本は室内の出入りをどうするかの開口の大きさの違いでしかないからなぁ。
扉と窓は室内の居住性を高める為の開口部の塞ぎ方でしかないし。
もっと言えば、扉は左右に開くだけでなく上下に開いても良いわけですよね?」
「じょ・・・上下に開く扉・・・」
「考えた事もありません。」
ローチとキャロルが言ってくる。
「・・・突拍子もない事を言ってはいないと思うのですけど・・・
まぁ・・・普段使いしていない方法というのは突拍子もない発想に見える物ですかね。」
武雄は2人を見ながら呟くのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




