第1931話 一旦、研究所に。(仕事溜まっているなぁ。)
研究所の3階 所長室。
「なんで書類がこんなに積んであるのかな?
・・・これなんか昨日の日付だよ?」
武雄が一番上の書類を見て驚く。
「・・・ん~・・・ヴィクターとアスセナさん、監視とお付きしているのに残業したの?
現状では残業代の規定ないんだよなぁ・・・残業代出したら大赤字だし・・・
出来るだけ定時上がりをさせないと。
それと有給休暇の取得を推進してあげないとね。」
武雄はそういって執務机の椅子に座る。
「失礼します。」
マイヤーが入ってくる。
「ご苦労様です。
マイヤーさんからの報告は?」
「まずは試験小隊ですね。
まぁお客様の監視を交代でしています。
アンダーセン達が新人達にやらせたかったと言っていましたよ。」
「事前にわかっていたら組み込めたかもね。
今回は急にですから致し方ありませんよ。」
「はい、報告としては特には行動をしていないようです。
シモーナ殿と行動を共にし、エルヴィス伯爵邸に主達が行っている間も外出はせず宿内でのんびりとしていたそうです。」
「・・・護衛も商隊人員も?」
「はい、大人しいそうです。
私達の監視の隙間に乗じてとも考えられますが・・・宿の出入りを両方掻い潜るのは難しいと思います。」
「・・・宿内で休暇を取らせたのかな・・・
マイヤーさんだったらどうしますか?
出張先で外出禁止での休暇をと言われたら。」
「飲みます。
もしくは本か何かを買って来て時間を潰しながら寝る・・・と思います。」
「ふむ・・・まぁ苦情が来ないという事はそれなりに何かしているのでしょうね。
わかりました、目立った行動はされなかったという事で良いでしょう。
他には?」
「トレーシーが2階で唸っています。
所長、何か宿題出したのですか?」
「ええ、王都に行く前にね。
まぁ出来る出来ないというより発想を柔軟にさせようと思って・・・常識と非常識の両方を考えられる題材にしたんですけど・・・
ん~・・・難しいのかなぁ?」
「例えばどんな事ですか?」
「スライムの体液で出来る物を数点、パナがまとめたのですけどね。
それの売り方を考えましょうという題材ですね。
例えば、『塗ったら1日で乾く木材の接着剤の容器』、『厚さ3cm程度のゴム板の利用方法』、『赤スライムの体液のランタン構想の実現に向けての考え』等々です。
まぁ頭を柔軟にする為の宿題ですからね。
商品化に繋がらなくても問題ない、でも実現性が無いといけないと言ったのですけどね。」
「ん~・・・良くはわかりませんが、大変なのでしょうね。」
「まぁね、今この世に無い物を考え出せと言っているのですから難しいでしょうね。
トレーシーさんは、まぁ・・・放置で良いでしょう。
そのうち諦めてこっちに報告書を出すでしょうから。
トレーシーさんにあったら気長には待たないけど、早急を求めていないと言っといてください。」
「はい、わかりました。
それと・・・私達が不在時の事ですが、特にありません。
試験小隊は小銃の慣熟訓練をしていたそうです。
始めたばかりですので、精度はご報告しませんが。」
「精度を聞く気はまだありませんよ。
あ、スコープですけどね。」
「はい。」
「今、渡している倍率が3倍程度の物は回収して、整備に出したのちにエルヴィス家に売ります。
代わりに私達は倍率が5倍程度の物を配備します。」
「わかりました。
壊さないように言っておきます。」
マイヤーが頷く。
「シモーナさんから正式に穀物等の輸出の依頼が来て請け負いました。
調整はしますが・・・10日前後でブルックさんとアーキンさん、新人以外は魔王国に越境して敵情視察しにいきますよ。
幌馬車の護衛も兼ねますが・・・まぁ山賊程度に遅れは取らないでしょう。」
「わかりました。
準備をさせます、小銃はどうされますか?」
「魔王国に見せる気はありませんから今回は持って行かないとしましょうか。」
「了解しました。」
「それと先の王都での話の延長で向こうからも数人が一緒に魔王国に行くでしょう。
陛下にはジーナを経由して連絡済みです。
そのうち連絡があるでしょう。」
「わかりました。
誰が来るんでしょうかね?」
「さぁ?指定はしていませんし、私に楯突かない人選がされるのではないでしょうかね。」
「普通に考えれば所長の行動を監視する人が・・・まぁ上層部が来そうですね。
それ以外では難しいでしょう。
下っ端が来ても所長に懐柔されそうですし。」
「そこまで私は敵対視されてないはずなんですけどね・・・
まぁですが、同時期に王城の人員がカトランダ帝国に行く予定もありますしね。」
「それ・・・私聞きましたかな?」
「特に言っていませんよ。
カトランダ帝国の跡取りが挙式なんですって、陛下が行くそうですよ。」
「・・・まぁ、こちらの挙式には皇帝がきましたしね。」
「ええ、だから行くんだそうですよ。
付き添いは王都守備隊でしょう。」
「まぁ当然ですね。
となると王都から魔王国に来る人員の護衛は第1軍あたりでしょうかね?」
「誰でも良いですけど、私の意思と離れた所で勝手に行動しない者がいいですね。
こっちは隣接しているんですし、私が責任を負うのでしょうからね。」
「・・・同じことを同行する者も言いそうですけどね。
所長が好き勝手しないようにと。」
「・・・断ろうかな。」
「いや、もう動いているのですからダメでしょう。
ここで向こうから来る人員を置き去りにして、さっさと魔王国に行ったら変な評判が立ちかねません。」
「むぅ・・・私は好きに動きたいんですよね。」
「陛下は容認していますよ。
王都が容認するかは知りませんが。」
「はぁ・・・一緒にという提案はするんじゃなかったかなぁ・・・」
「所長の目論見は?」
「魔王国に安全に行って、あわよくば向こうの城や兵士を見れる機会があるので、いろんな人が見に行った方が魔王国への理解が深まるだろうなぁっと。」
「うん、それ以外をしなければ問題ないという事でしょう。
勝手に交渉しないとかですよ。」
「はぁ・・・まぁ物見遊山的に旅行ですね。」
武雄がため息交じりに頷くのだった。
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