第1925話 213日目 その後。(さて・・・どうする?)
アズパール王は、ジーナが去ってからしばらく外を眺めている。
「・・・アモール。」
「アラン、どうしますか?」
アズパール王が呟くとアズパール王の座っている前の机にチビアモールが現れる。
「王都守備隊 第三情報分隊に指示を出す。」
「ほぉ・・・公安部隊ですか。
タケオの方・・・ではないですね?」
「魔王国の方はエルヴィス伯爵とタケオが何とかするだろう。
この報告書から何かしら嘘を書いているとは思えんし、するような内容ではない。
むしろ嘘であって欲しかった。
この調子ならまたジーナ経由で現地の情報をくれるだろうよ。
それに慣例の戦争に第三情報分隊を出した所で得られる情報は少ないだろう。」
「まぁ・・・戦争ではね。」
「問題になるのは、呼応してカトランダ帝国とウィリプ連合国から何か仕掛けてくるかもしれんという事だ。
相対している貴族に潜入している者に連絡を取る。
間接的にでも何かしでかすかもしれないからな。
明日の夕方には打ち合わせをする、アモールは我の予備知識として見えない状態で控える事、
そして都度、助言をするように。
資料は執務室にある、明日の朝に渡すから明日昼過ぎまでに読み込んでおくように。」
「・・・明日?・・・明日で明日?」
アモールが首を傾げながら言う。
「アル殿達からアモールは優秀だと聞いていたし、内々にそのぐらい出来ると言われているんだが・・・」
「えー・・・絶対嘘ですね。
あのアルが私をそんな評価するわけない。」
「したした。
我と契約した際に言っていた。
じゃ、寝るぞ。」
「おおーい、我が主、アランよ、もっと優しくしてくれ!
こっちは毎日王家専属魔法師部隊に勤務しているんだぞ?」
「うるさいなぁ・・・我も毎日政務はしている。
さ、我は寝るんだ・・・まったく、タケオからの報告はいつも頭が痛くなる。
面白い事2割、面倒なの9割だがな!」
「いや、アラン、それだと11割になるが?」
「うるさいなぁ・・・重なりだよ!
今日はさっさと寝るに限る。
ほら、アモールもさっさと寝ろ。」
アズパール王がベッドに向かいながら言うのだった。
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寄宿舎のジーナの部屋。
ジーナは作業服を脱ぎ、パジャマに着替えている。
「ジーナ、アルとマリに連絡したよ。
エイミーとスミスは今から寝るって。」
机に座っているチビパラスが報告してくる。
「・・・その言い方だと同衾しているように聞こえますね。
よしっと。」
ジーナが作業服をしまい、机に戻ってくる。
「えーっと・・・朝までに彩雲に持って行って貰う報告書を書かなきゃね。」
ジーナが紙と鉛筆を取り出しながら言う。
「あまり報告する事ないよね?
軽く書いたら?」
「ん~・・・まぁ・・・とりあえず記憶と照合しながら書いて行こうかな。
清書はその後で良いだろうし。」
「ジーナ、頑張れ。」
ジーナはとりあえずさっきの事をまとめ出すのだった。
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エルヴィス伯爵邸の武雄達の寝室。
「ん~・・・」
武雄がベッド横の机で今日のまとめを書いていた。
「タケオ様?何かお悩みが?」
ベッドで横になって本を読んでいるアリスが聞いてくる。
「いや・・・さっきヴィクターが戻って来たでしょう?」
「ええ、魔王国一行が今日も飲み会で大変だったと言っていましたよね。
それとラルフ店長の所に押し掛けたと言っていましたよね。」
「そこは、まぁ良いんですけど。
途中、シモーナさんとヴィクターが街中で輸入品になる物を探しに行ったと言っていましたよね?」
「はい。」
「何買ったのかなぁっと。」
「明日辺りで報告が来るんじゃないですか?
それとヴィクターがシモーナさん達が明後日の出立だと言っていましたよね。」
「ええ、明日は皆でローさんの酒屋や雑貨屋に行くと言っていましたか。
そう言えば前回の東町の時にダニエラさん、酒屋に行っていましたか。
・・・ヴィクターからもダニエラさんは酒好きだと報告を受けていましたね。」
「酒屋に行ってもウォルトウィスキーは無いんですけどね・・・
知ったら落胆するのでしょうか?」
「するでしょうね・・・
領外用で後いくつ残っていたかな・・・100本近くはまだ保留のはずなんだけど・・・」
「渡しますか?」
「ん~・・・どうしたら良いんでしょうかね・・・
ラルフさんやベッドフォードさんには無理を言っているようですし・・・まぁ私個人としてはレシピの小遣いを頂いてはいますけど・・・」
「そう言えばお二人から頂いていましたね。
いくらだったんですか?」
「それは言えません。
ですが・・・まぁ子供達やベルテ一家、今後の事でそれなりに良い金額を頂いています。
それにちょっとした斡旋は玄米精製機と削り節器かぁ・・・
ん~・・・何か輸出品があったかなぁ?」
「あとは・・・ダンディ茶ですかね?」
「それこそ生産量が低いからまだまだこの街以外には出せませんしね・・・何か良い物が見つかれば良いのですけどね。」
「そうですね。
そう考えると輸出品が少ないというのも考え物なのかもしれませんが・・・
とりあえず、今求められている物をしっかりと増産していけるようにしないといけませんね。」
「そうですね。
手あたり次第というよりも今の商品をしっかりと納入出来るよう努力していきましょう。」
アリスの言葉に武雄も頷くのだった。
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