第1924話 小麦の買い付けの件。(悪巧みは楽しいよね。)
ジーナが武雄から魔王国向けの穀物輸出についての報告をアズパール王にしていた。
「ふむ・・・まぁ契約出来た事については良いだろう。」
「はい、正式に請けたとの事です。
で、魔王国への同行員の派遣をとの事です。
この件での正式報告は明日の夜か明後日の朝に着くようです。」
「うん、わかった。
内々にタケオから報告が来ている旨を各所に報告してすぐに出立準備をさせよう。
日程と人員の概要は明後日にはジーナに伝えられるように計らおう。」
「わかりました。
で、スミス様の方に報告と指示があった場合、すぐにレイラ殿下に相談でよろしいのですね?」
「あぁ、構わんぞ。
レイラにも明日に伝えておこう。
出来ればエイミーには言わないでおいて欲しいが・・・こればっかりはジーナでも難しいだろう。
出来るだけで構わないからな。」
「わかりました。
そこは無理をせず誘導をしようと思います。
最悪はエイミー殿下がスミス様と一緒にレイラ殿下の下に行く可能性がございます。」
「それは2人の進展があったという事で別の喜びではあるのだがな・・・
まぁレイラとアルマには上手く対処するように言っておく。
ジーナは無事にスミスを連れてくれば良いからな。」
「畏まりました。
ちなみに第1皇子一家と第2皇子一家にこの件は伝わっているんでしょうか?」
「大丈夫だ、2人ともやる気だよ。
それに・・・パットは大変だろうなぁ。
エイミーもそれなりに大変だろうが、あのエイミーだし、何とかするだろう。」
「面倒になっているようですね。」
「うむ・・・まぁクリフがどう考えているかによるが、パットにとっては難しい判断をする事になるだろう。」
アズパール王が考えながら言う。
「・・・もしかしてスミス様からの依頼数を賄えない数しか出さないとか・・・ですか?
そうする事でパット殿下がスミス様に交渉を持ちかけるか謝る姿勢を覚えさせる・・・とか。」
「え?ジーナ、なんでわかるんだ?
クリフの考えがまさにそれだぞ?
将来の部下ではあるが依頼人にしっかりと頭を下げさせられるようにするとか言っていた。
補填は王都の総監部がする手はずなんだ。
まぁパットが総監部に泣きつけばの話として話は付いている。」
アズパール王が驚きながら言う。
「・・・ん~・・・エイミー殿下の方はどうなのですか?」
「パットの逆だよ。」
「つまり依頼以上の数が送られて来ると?」
「あぁ、ニール曰く、依頼数ではなく依頼金額で買える分だけ買うとして送るそうだ。
本来なら言われた量を買い付ければ残りは利益なのだが、気を利かせたとして送ってみようと言っていたぞ。」
「ん~・・・商売としてはありえませんが・・・言われた金銭で賄えているというのが1つのポイントですね。
エイミー殿下がどう判断するか・・王都で依頼数に合わせて降ろすか、そのままスミス様に渡すのか・・・」
「スミスに渡すのはマイナス評価だと思うがな・・・エイミーにとっても、スミスにとっても。」
「そうですね。
依頼された量を買うのが目的ですので、依頼よりも多くを渡されてしまっては何か裏にあるのではと考えるのが普通だと思います。
指定した数を超える量をある意味、無料で手に入れるというのは、今後そう言ったやりとりが可能だと周囲に知らせてしまう事になりますね。
渡すエイミー殿下も問題ですが、受け取ってしまうスミス様も問題となり得ます。
2人とも慎重な判断が必要になりますね。」
「な?面白いだろう?」
「端から見ている方は楽しそうではありますが・・・補助する方としては面倒ですね。
依頼数を超えた分を新たに買えるように金銭の余裕は見ておこうと思います。」
「うむ、それが一番無難なやり方だろう。
指定数を受け取り、新たに契約する・・・これが正解だと我も思うな。
エイミーとスミスがわかるのか・・・見ものだな。」
「お孫様の教育にというのはわかりますが・・・関係ない方が見ると少々意地悪な感じを受けてしまう恐れがありますね。」
「まぁな、だが、我らが調整出来る案件というのは少ない・・・というよりほぼない。
政務が本格的に始まれば、どれが正解かわからない状態で何かしら決めなくてはならない、いきなりそんな所に放り込まれてみろ・・・頭の良い文官達の餌食になってしまう。
ならば今回のような輸送量が変わってしまうという事故を起こす事で突発的な事象に対する対応方法を模索し、時には頭を下げ、いろんな者に意見を聞いて判断するという事を経験させるのは悪くはないだろう?
文官達の意見を聞くのも良い、だが、しっかりとした意思がなければただの傀儡になりはててしまう。
それは孫達だけでなく国家として終わりを告げる事になるだろうな。
そんなことは望んではいないので・・・まぁ今回の件が通っている理由だな。」
「厳しい事ですね。」
「我が息子達は何とかなったが・・・孫達が同じように何とかなると甘い考えは出来んよ。
訓練になるような事はさせておきたいと思うのが祖父の意向だ。
タケオには数年に1度程度、こういう事をして欲しい物だな。
次はアンとクリナの時が良いなぁ。」
「ご主人様に伝えると・・・私の口からはご報告しません。
実施するなら陛下自らご相談ください。」
「我の口から言ってもジーナの口から言っても結果は変わらんと思うのだが・・・」
「私の口から言ったらご主人様の事です『あ、定期的にして良いんですか?』とか良い方に解釈して、数年と待たずに数か月でもう1度突発的にしてもおかしくはありません。
直接お申し付けください。」
「大丈夫だと思うがなぁ・・・まぁ今のは雑談だな。
ジーナ、他にあるか?」
「いえ、報告は以上になります。
すぐに先程の報告をご主人様宛にお送りします。
明後日の朝にはご主人様に着くと思います。」
「早いな。
では、よろしく頼む。
エルヴィス伯爵とタケオには今回は良くやった、だが、あまりやりすぎるなと言っといてくれ。
変に目立ってもあまり良い事はないだろうしな。」
「はい、伝言受け賜りました。」
「うむ、では、ジーナ、キタミザト子爵からの報告ご苦労だった。
早く戻って適当に報告書を送って寝てくれ。」
「しっかりとした報告書を送付します。
では、陛下、夜分に失礼いたしました。」
ジーナがアズパール王の寝室を出て行くのだった。
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