第1922話 アズパール王に報告を。(困った困った。)
アズパール王の寝室。
「・・・たまにはこう寝酒を用意してからのマッタリは良いもんだな。
さて、どれから飲もうかな?」
アズパール王が座りながら目の前に並べたブランデーを見てご満悦だった。
と、寝室の扉がノックされる。
「・・・入れ。」
アズパール王は一瞬、寝たふりをしようとしたが、諦めて入室を許可する。
「失礼します。
今、受付から連絡があり、ジーナ殿が参ったとの事です。
ご就寝されるのでしたら明朝でも構わないとの事なのですが、如何いたしましょうか。」
執事が入って来て聞いてくる。
「ジーナがこの時間にか・・・割と緊急そうだな。
構わない通せ。」
「はっ!失礼しました。」
執事が退出して行く。
「酒は・・・また今度だな。
折角だ、今日の夕食のスイーツが余っていたらそれを持ってこさせよう。」
アズパール王がベルを持ち上げるのだった。
・・
・
アズパール王が許可を出すとジーナが寝室に入ってくる。
「失礼します。
陛下、深夜にご訪問して申し訳ありません。」
「構わんよ。
ジーナ、その服は・・・作業服だったか?
戦闘にでも行くのか?」
「寄宿舎より屋根伝いに来ましたので、見つかり辛い格好をして参りました。
ご不快でしたか?」
「いや、そうではない。
が見た目は物々しいからな。
・・・一応、スイーツは用意した。
用件が終わったら食べよう。」
「はい、陛下。」
ジーナが返事をする
「うん、では、用件を聞こうか。」
「陛下、ご主人様より手紙を預かりました。
まずはこちらになります。
昨日、ご主人様達が纏めた物になります。」
ジーナがアズパール王の前に手紙を置く。
「うむ、タケオから聞いてはいたが、鷹等の魔物を使っての手紙のやり取りが早いようだな。
・・・読む前に確認だが、タケオから伝言はあるか?」
「ご主人様より陛下が読んでからの伝言は承っています。」
「・・・そうか。
ジーナはこの手紙は読んだか?」
「概要は伝えられております。」
ジーナが堂々と言い放つ。
「そうか・・・ジーナ、我が手紙を読んでいる間、スイーツでも食べて時間を潰してくれ。
お茶の方は我が淹れるよりジーナが淹れた方が美味しいだろう。
自分でしてくれ。」
「畏まりました。」
ジーナがそう言ってお茶の用意をしだす。
「さて・・・」
アズパール王が手紙を読み出すのだった。
・・・
・・
・
「・・・ジーナ、すまんがそこの柔らかいクッションを取ってくれるかな?」
「こちらですね。」
ジーナがアズパール王に言われたソファにあったクッションを渡す。
「・・・済まないな・・・」
アズパール王が受けとるとクッションを顔に押して何事か叫んでいる。
ジーナには何となく聞こえているが、聞こえない振りをして窓から夜景を見ていたりする。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・
んんっ、ジーナ、何か聞こえたか?」
「何か音がしましたか?」
ジーナがアズパール王の方を向き、しれっと答える。
「うん、そうか。
それにしても・・・酷い内容だ。
それでタケオからの伝言は何かな?」
「頑張った結果ですとの事です。」
「・・・はぁ・・・そうだな。
あの2人もいきなりこんな話をされたんだ、動転しなかった事を褒めるべきだな。
それにしても我が国の周りには我が国を利用したい輩が多いな。
我らはのんびりと過ごしたいだけなのだが・・・困ったものだ」
「私の母国ではありますが・・・ヴァレーリ陛下自ら伝えに来て頂いたのは最大限の誠意なのではないでしょうか?
魔王国も陛下の意思のみで動いておらず、部下達との協議を重んじると確認出来たのは良い報告です。
ご主人様や伯爵様が困惑しているようではありますが、魔王国の誠意を見られただけでも今回は収穫かと思われます。」
「そうだな、今まで謎だったのがここに来て、事前に説明をしてくれる関係になったのだ。
これは悪い事ではあるまいな。
それと報告にあったように本来、この件は口外無用と銘打たれている。
だが、タケオとエルヴィス伯爵は我にのみに知らせたというのは最低限の我が国の貴族としての務めをしたという事で良いだろう。
ギリギリではあるが・・・まぁ我が何かしなければ良いだけの事だ。
ジーナも当分の間は口外する事は禁止する。」
「はい、心得ております。
レイラ殿下とアルマ殿下の方はどういたしますか?」
「魔王国からの要求は事前に漏れる事への禁止事項だろう?
慣例の戦争の報があった際にアルマとレイラには我から伝えよう。
なのでこの件は我預かりとする。
タケオ達にはそう伝えなさい。」
「畏まりました。」
「まぁ戦地にて展開してからの続報の方が問題だがな。
最低10000から25000か・・・向こうの地方領主がやる気になればもう少し上がるだろう。」
「従兄弟は人間嫌いですので、多少は兵を多く出す可能性は否定できません。
パーニ伯爵は・・・私は遠目でしか見た事はありませんが、嫌な笑い方をする方でした。」
「ジーナが嫌だと感じるのならそれは黒い部分があるのだろう。
タケオとエルヴィス伯爵には戦地への援軍はないと伝えておいてくれ。」
「援軍はないのですか?」
「その報告によれば魔王国の中央が南下するという事が本筋で観戦は余興みたいな物だろう。
相対する貴族が暴走しなければ惨事にはならん。
それに王都の壁を戦地に送り出しても足手まといだろうし・・・そこでだ、こっちはこっちで動く事にする。」
「なるほど、戦地にはという事は何か動くのですね。」
「ああ、良い訓練になるだろう。」
アズパール王が頷くのだった。
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