第1921話 捜査は続くが成果はない。(ジーナは最速で王城に?)
王都の寄宿舎のジーナの部屋。
湯浴みと夕食を済ませ、今は自身の室内で洗濯物を畳んでいた。
「・・・ロロ、その媚薬を持っている生徒を子分のネズミが追ったのは良いんです。
ですが、2回とも見失ったというのは・・・ん~・・・」
「シャー」
ジーナの言葉にロロが項垂れている。
「いや、ロロ、こっちが下手で向こうが上手という問題ではないですよ。
ただ私達は昼中で人目がある場所では見つからずに追跡するというのは苦手だというだけです。
これが陽が落ちた暗闇であれば問題なく出来るでしょう。
それに大通りですしね、そういう目立つ所を歩かれると更に追跡は難しいでしょうね。」
「シャー」
「そうですね。
スライムもネズミも人目に付くと駆除されますからね。
・・・ん~・・・私は取り締まる事はする気はありませんが、媚薬を扱っている店に出入りしている人達は把握したいのですよね。
これまでの所、外出するのを発見した場合、都度、ロロの部下を何体か後を付けていますが、全体の2割程度の調査に留まっています。
その全員が行っていないのはわかりましたが・・・毎日行く訳でもないですしね。
どうしたものか・・・」
ジーナが洗濯物を折り畳むのを止めて腕を組む。
「シャー」
「確かに追跡数を増やすのは1つの手段ではありますが、常に追える体制を維持は出来ないでしょう。
なら現実的には今までと同じ数で事に当たらないといけません。
店がわかればその店から戻る生徒を追跡すれば良いだけなので割と楽にはなるとは思いますけどね。」
「シャー?」
ロロが何かを聞いてくる。
「ん?・・・それも心配ですが、本質は違いますよ?
媚薬とは精神的な興奮と身体的な興奮、性的な興奮を一気にさせる物らしいのですが、大きく見ると薬に分類されるのです。
この媚薬が噂になり、世に出回っているという事は性能が良いとなります。
ただ、薬は毒にもなります。
過剰に摂ると意識が朦朧としたりしても不思議ではないです。
それにそんな腕がある職人が別の効能がある薬も用意していないわけないですからね。」
「シャー」
「ええ、毒殺用があっても不思議ではないでしょう。
そしてその中に無味無臭の物があっても不思議はありません。
だから通っている人達を監視するのです。
スミス様達を変な薬から遠ざける為に・・・なのですが、店も見つからずに通っている人も見つからない・・・当分は知らない人から不用意に物を貰わないようにしないといけませんね。
ロロと磯風は引き続き、外出する生徒の追跡を続行してください。
ただ、無理はしないように。
スライムもネズミも見つかれば面倒になります。
事は慎重に運ばなければなりません。」
「はい。」
「シャー」
ジーナの言葉に磯風とロロが頷く。
「ん?・・・ジーナ、サイウンとシウンが来ました。
屋根に止まっています。」
部屋に入って来たスライムを吸収した磯風が報告してくる。
「・・・2人が?
わかりました。」
そう言ってジーナが窓辺に行き窓を開けると彩雲と紫雲が窓から入ってくる。
「失礼します。」
「お邪魔します。」
「彩雲、紫雲、お疲れ様です。
2人が同時に来るという事は緊急ですね?」
ジーナが2人に聞く。
「いえ・・・そこまでの緊急性はないとの事ですが。
まずは手紙の小瓶を受け取ってください。」
「ええ。」
ジーナが紫雲と彩雲の腹部分に手を添えると2人が小瓶を出す。
「・・・結構詰まっていますね。」
「私が持ってきたのがジーナ宛とレイラ宛。」
「私が陛下宛です。」
彩雲と紫雲が言う。
「・・・どっちがどっちだか覚えていませんよ。
ん~・・・最初の見出しだけ確認して判断しますかね。
こっちから。」
ジーナが1個目の小瓶を開け中の手紙を確認するのだった。
・・
・
「・・・」
ジーナが3通とも読み終えて眉間に皺を寄せて片手で頭を押さえていた。
「ん~?ジーナ見て良い?」
チビパラスが聞いてくる。
「まぁパラス達精霊なら知っていても問題ないでしょう。
知らない状態の方が口走りそうですしね。
ただし、口外は禁止ですよ。」
ジーナが顔をあげて言う。
「はーい。
何々・・・うんうん・・・うん?・・・うんうん・・・タケオと伯爵めっちゃ困っているね。」
「はぁ・・・そうですね。
ご主人様も酷な事を言います。
これを陛下に持って行けと言うのですか・・・」
ジーナが嫌そうな顔をさせる。
「でもタケオは一応この件は口外厳禁と言ってるし、陛下のみに伝えろとあるけど?」
「そうなんですよね・・・ん~・・・
今は21時ですか・・・今なら寝る前に持って行けますね。」
「この内容じゃあ、陛下、寝られなくなるんじゃない?」
「そこは知りません。
このままでは私が寝不足になります。
それに陛下宛となると最速でお届けするのが良いでしょう。
パラス、アルとマリに連絡を。
ご主人様の用で私は少し王城に行ってくる旨を伝えてください。」
「了解~。
・・・いってらっしゃいだって。」
パラスが報告してくる。
「・・・一応、小太刀と警棒は持って行きますかね。」
「夜の1人歩きだもんね。
1人だから屋根伝いに行く?」
「そのルートが一番早そうですが・・・作業服に着替えて行きますか。」
「メイド服だと捕まったら面倒だもんね。」
「動きやすいですからね。
さてと・・・ロロ、ご苦労様でした。
引き続きお願いしますね。」
ジーナがクローゼットに向かいながら言う。
「シャー」
ロロが頷いてジーナの横を通り、天井裏に戻って行く。
「磯風、支度している間にこの地のスライム達に私達が出かける事を連絡してください。」
「はい、わかりました。」
ジーナが着替え始めるのだった。
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