第1920話 さてと・・・次は何を依頼しようかな。(兄妹で輸出品を見繕っている間に。)
テイラーの魔法具商店にて。
「・・・ふむ・・・これは良いですね。」
「皆さん頑張ったみたいですよ?」
武雄がカウンターでスコープを覗きながら確認しているのをテイラーが横から言ってくる。
「・・・4・・・5倍くらいですかね?」
「倍率は4.8~5.2倍になる予定だそうです。」
「今が約3倍だからかなり上がりましたね。」
「キタミザト様の小銃改1と3をこれに乗せ換えますか?」
「ふむ・・・私の要望としては10倍以上が欲しい所ではありますが・・・何個用意は出来ますか?」
「今の所4つありますが、まだ同一倍率が揃っていないのですよね・・・
正式に受けられればご要望に沿うようにしますが。」
「私の手元には小銃改1と3が3丁ずつあるんですけど・・・
ん~・・・やはり小銃改1は600m仕様として整備して、小銃改3は1200m仕様で固定させますかね。
・・・20個作って5倍以上のほぼ同じ倍率のスコープを6個選定ください。
連絡があり次第、私の小銃改シリーズに付け替えます。」
「はい、畏まりました。
残りの14個はどうしますか?」
「1つは私に。
残りは研究所の試験小隊の整備品にします。
今持っている3倍の方は・・・王都は面倒なので、エルヴィス家に販売します。
価格は私が今回の注文の値段を見ながら決めますので・・・まぁ後でお教えします。」
「はい、では注文書をお作りしますので代金とサインをお願いします。」
テイラーはそう言ってカウンターで簡単な注文書を書き出す。
「・・・あれ?・・・こんな剣ありましたか?」
武雄がテイラーが作業を始めると暇になったのか店内を見回し、気になった所に見に行く。
「あ~・・・それステノ技研が作った剣ですよ。
私の魔法刻印の練習結果です。」
「ふ~ん・・・結構な物が出来たんですか?」
「どうでしょうか?
私は剣に付与する魔法というのは小規模魔法でないと剣での戦いには不向きだと考えます。
下手に大規模魔法なんかを組み込んでも周りに迷惑もかけますし、取り扱いが難しいですからね。
なので、ちょっとした魔法が組み込まれています。」
テイラーが言う。
「まぁ・・・間違いではないのでしょうね・・・」
武雄が何気に1本持ち上げながら言う。
「ちなみにちょっとした魔法とは刀身に火や水を纏わせるとか打ち合った瞬間雷が発生するとかですね。
まぁ雷の方は自身にも食らってしまうんですが。」
「それは・・・間違いなく欠陥品ですね。」
「買われる際に言っておけば大丈夫かなぁと思い、店先に出しました。
右端の奴ですよ。」
「・・・これですか?・・・・
ふむ・・・これって警棒にも仕込めますか?」
「え?・・・3段伸縮式警棒にですか・・・
確かスズネさんが言っていましたが、3段伸縮式警棒は3、4回使ったら交換と考えられて作られていると。
ある意味消耗品ですよね?
そう説明は受けています。」
「そうですね。
大事に使うような物ではありませんね。」
「それに魔法刻印を?
勿体ないのではないですか?
・・・いや、確かに護衛の為の武器ですので、万が一を考えれば出来る事はしておいて損はないでしょうけど。」
「エルヴィス家の軍務局に卸しているのにはこういう細工は不要です。
というより私の要求以外はしなくても問題ないでしょう。
それにジーナの仕事は次期当主の護衛ですよ?
小太刀を毎回持ち歩くわけにもいかないでしょうからね。
ならなくても何とか出来るだけの武器を用意するのが私のお役目ですよ。」
「お値段・・・私の作業費があるので3倍くらいかかりますよ?」
「・・・20個頼むので2.5倍以内でお願いします。」
「はぁ・・・わかりました、こちらも注文書をお作りします。」
テイラーがため息を吐きながら新たな紙を出すのだった。
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シモーナ達の宿の近くの喫茶店。
シモーナはヴィクターや同行の店の者と一緒に今後、魔王国向けに輸出出来る可能性のある物を探しに行った。
ヴァレーリ達は興味を示さなかったというよりも「あとでレバントさんの店に行けばわかるよね」と今日はのんびりする事を優先させた為、ヴィクターの言いつけ通り、大人しく喫茶店に来ていた。
「~♪」
ブリアーニが機嫌良くお茶をしている。
「おーおー、機嫌が良い事で。」
ヴァレーリがそんなブリアーニに呆れながら声をかける。
「だって~・・・ちょっとお高いけど、これで正式に私達も作れるんだもん。
ふふふ、これで魔王国内向けの輸出品が増えそうだわ。」
「そう簡単に行くのか?
この地の者達はキタミザト殿の説得と実用性を確認してやっと買う気になったと言っていたぞ?
それに最初に売れると思ったのはあの店長だと言うじゃないか。
商売人が売れると思わなければ良い商品でも売れないと思うんだがな。」
「その時はその時よ。
我が国の兵士達の常備品として毎年細々と作っていくだけ。
余力があれば、大量発注にも応じるわよ。」
「はぁ・・・キタミザト殿が関与している店が注文がいっぱい来ているから大量の追加は出来ないと言っていたと思うんだが・・・
注文があるという事は実入りがあるという事だ。
となるとそれなりに人を投入できるはずなのにそれでも納期がかかると言っている。
余程、作るのに手間がかかるのか、素材が特殊なのか・・・
果たしてカールラの所は無事に出来るのか?」
「・・・皆で研鑽して事に当たるわ。
素材も軽く見た感じ特殊な物は使ってないし、大丈夫だと思うわ。」
ブリアーニがラルフから譲られた本を見ながら言うのだった。
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