第1919話 ステノ技研に到着。(申し訳ございませんでした、でもやったよ。)
ステノ技研の食堂。
「へぇ~、上手く出来ましたね。」
武雄がうどんを軽く食べている。
「うむ、スズネも味音痴ではないからな。
適切な指導があれば十分にこのぐらいは出来る物だ。」
チビニオが武雄の前で胸を張っている。
「武雄さん、うどん伸びてますよね?」
武雄の隣に座っている鈴音が言う。
「伸びてますね。
食べれますよ?
コシがあるのだけがうどんではないでしょう。
まぁお昼に作って残ったうどんが夕食にも出て来た感じですけど。
この出汁はなんだろう・・・堅魚じゃない気が・・・小魚の干物かな?」
「庶民が買えるのはそのぐらいですよ。」
鈴音がボソッと言う。
「うん、これはこれで良いんじゃないですかね。
あとは薬味や乗せる物で変わるでしょうし。」
武雄は鈴音の呟きは気にしていない。
「そうだな。
で、タケオ、今日はどうしたんだ?」
ニオが聞いてくる。
「あ~・・・鈴音、ヴィクターから聞きましたか?」
「はい、先程。」
「なら良いです。
準備はしてください。」
「はい。」
「今日の用向きの方は親方方に王都の件で報告です。
サリタさんには伝えましたから後で来る・・・来ましたね。」
武雄が食堂の入り口を見ながら言うのだった。
「失礼します。
キタミザト様、今日は王都の話との事で。」
ブラッドリーが代表してそう言って親方達3人が武雄の正面に座り、サリタとバキトは後ろに立つ。
「・・・この度は申し訳ありませんでした。」
武雄が席を立ち、頭を下げ、鈴音も無言で頭を下げる。
「いえいえ、アリス様からも謝罪は頂いております。
それに私達は驚きはしても怒ってはおりません。
アリス様からお伝えいただきましたが、あの条件で契約をされたのですね?」
「ええ、悪い条件ではなかったと思います。
事後の報告になってしまって申し訳ありません。」
「いえ、キタミザト様がされたという事は好機だったのでしょう。」
「まぁ同じ研究をするのですから研究内容が被ったら勿体ないでしょう。
無駄な事をする時間を省きたかったのは確かですし、あとから言ったのでは価値がありません。
・・・こちらが王都の専売局より預かっている契約書になります。
そしてこちらが技術提供料です。」
武雄がブラッドリー達の前にリュックから取り出した書類と小さめの木箱を置く。
「本当にあの金額で私達が作った材料の配合をアズパール王国は買ったのですか。」
「ええ、国家の意思として買います。
まぁステノ技研に不利になるような事はしてきませんでしたが・・・今すぐではありませんが、もしかしたら懐中時計がどこかで複製される恐れもあるにはありますかね。
開発がされるまで時間はかかるでしょう。
その間に売りまくって懐中時計といえばステノ技研と言われるくらいまで浸透してくれるとありがたいですね。
金貨・・・数えますか?」
「いえ・・・キタミザト様と王都を信用します。」
「そうですか。
・・・今回、アズパール王国はステノ技研が開発し、実用にこぎつけた宝石に依らない魔力を貯める素材について、金貨500枚を用意しました。
今後、同素材がさらなる性能向上をした場合は都度、専売局と打ち合わせをする事となっています。
この研究において、性能向上が確認出来た場合は私に報告を。
取りまとめて専売局に持って行きます。」
「はい、わかりました。」
ブラッドリー達が頷く。
「今後ともキタミザト家およびアズパール王国をよろしくお願いします。」
武雄が頭を下げる。
「こちらこそ、技術を高評価して頂きありがとうございます。
この喜びを心に刻み、さらなる発展の力にさせて頂きます。」
ブラッドリー達も頭を下げる。
「うん、まぁ倒れない程度でね。
これからも私が色々と頼むと思いますからそちらもよろしく。」
「はい。」
「代金と契約書を受け取って貰えましたので、資料を専売局に送らないといけません。」
武雄が言う。
「はい、サリタ。」
「キタミザト様、こちらになります。
外に出す技術資料というのは正・副の2部を同時に作り、両背表紙を合わせた状態で割り印をし、双方で持ち合う事を私達の街ではしておりましたので、今回は同様の処置をしています。」
サリタがそう言って冊子を武雄の前に置く。
「はい、副本はステノ技研に、正本を王都の専売局で保管ですね。」
「はい。
そして複製をした際は必ず、このように『複製品』という印なりサインをお願いします。」
サリタが持っていた複製本を武雄の前に置く。
「・・・ん?」
武雄が首を傾げる。
「こちらは清書前に書いていた本になります。
不用意に捨てられませんのでキタミザト家で保管して頂けますでしょうか。」
ブラッドリーが言う。
「・・・わかりました。
私の書斎の方で保管します。」
武雄が頷く。
「そういえば・・・鈴音から目覚まし時計の話行っていませんか?」
「なぜそれを・・・というよりキタミザト様とスズネですからね。
スズネが前に目覚まし時計の話をしたのを話したのでしょう。
目下開発中です。」
「簡単で良いんですけどね。」
「それが簡単ではないんですよ。」
「スイッチの針を作って短針と重なったら振動させてベルや鈴を鳴らせばいいのでしょう?」
「ええ、スズネにも同じことを言われましたが・・・難しいんですよ。」
「難航中ですね。」
「はい、難航中です。
あ、それと懐中時計の月産個数があがりました。
今、月45個まで来ています。」
「注文数は?」
「・・・解消されませんでした。」
「頑張ってください。」
武雄が苦笑しながら労うのだった。
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