第1916話 もうすぐ遅めの昼食ですよ。(先走っているのがいる気がします。)
エルヴィス伯爵家の厨房。
「・・・出来た。」
皿にチキンライスを盛り、溶き卵の薄焼きを上に乗せた段階でヴァレーリが呟く。
「あ~?」
ビエラが自身とヴァレーリの分のスプーンを取り出す。
「おう!食べるか!」
「はい!」
試食を始める約2名。
「「・・・」」
ブリアーニ王国の料理人は人数分のソーストリカツ丼をエルヴィス家の料理人は人数分のチキンライスを両隣で黙々と作り続けている。
「・・・チキンライス用に作って貰ったトマトの煮込みソース、余ったバター、刻む前のタマネギ、ソーセージ・・・
そしてなぜかあるパスタとピーマン。
これいかに。」
武雄が厨房に残っていた物を見つめながら呟く。
「ん?タケオ、食材集めて何しているんだ?」
料理長が聞いてくる。
「いえ・・・エルヴィスさんやアリス達用のチキンライスも順調ですね。」
「あぁ、流石王家の料理人だな。
1度作ればすぐに同じ物を作ってしまう。
いやはや、恐れ入った。」
「それを言うならエルヴィス家の料理人もすぐに作れるようになったじゃないですか。
料理人には恐れ入ります。」
「仕事だからな。
その辺が出来ないと伯爵家には勤められんさ。
エルヴィス家の料理人はメインだろうがスープだろうがスイーツだろうが、何でも出来るようになっているからな。
それに雇える人数もあるし、1度聞いたり、習った物は指示があれば実践できるくらいの技量は持っている。
はずだ。
実際は数年前に習ったのをすぐにとかは出来ないから大方のレシピは残されていて皆が自由に読めるよう厨房に置かれているんだがな。
最近ノートが厚くなってなぁ。」
「へぇ~、何かあったんですね。
良かったですね。
ここの人達ならレシピが倍増したくらいでも難なく覚えるんでしょうね。」
「・・・まだあるのか?」
「当然。
チキンライスのレシピどうですか?」
「米が定期的に使えるようになるなら定期的には出せるだろうな。
そこまで難しくはないし。
これも米の公表する時の同時公表のレシピの1つになるだろうな。」
「玄米、炊き込み、チキンライス、チキンソースカツ丼・・・あ、おいなりさんも作ったか。
それに料理としてなら・・・あ~・・・意外と作れるのがまだあるな。」
武雄が「醤油と味噌が出来たら炊き込みご飯も増えるし、おにぎりの種類も増えるし、鍋や下味でも威力があるし」と考えている。
「・・・大辞典にならないよな?」
「ん~・・・」
料理長が心配そうに聞いてくるが武雄が首を傾げてしまう。
「いや、真面目にそんなにあるのか?」
「料理は考えたら考えた分だけありますしね。
手を変え品を変えて類似品を大量に作るというのもありますし。」
「まぁピザがそうだな。」
「パスタだって、パンだってまだまだいっぱい作り出せますよ。」
「俺達もまだまだ足らないという訳か。」
「日々精進です。」
武雄が頷く。
「・・・はぁ・・・で?タケオは食材を前に何を悩んでいたんだ?」
「あ~・・・どうしようかなぁと思って。」
「何が?」
料理長が聞き返すのだった。
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エルヴィス伯爵の食堂。
「「まだかなぁ・・・」」
アリスとブリアーニが突っ伏していた。
「ははは・・・」
シモーナは苦笑しか出来ない。
と食堂の扉が開きエルヴィス爺さんがやってくる。
「失礼する。
そろそろ昼食・・・アリス、何しているんだ?」
「あ!お爺さま、お疲れ様です。
お仕事は終わったのですか?」
アリスが直ぐに体をあげて返事をする。
「終わってはいないが昼食だから来たのだよ。
アリスこそカールラ殿やシモーナ殿の相手もせずに突っ伏しておったようだが?」
「タケオ様達の料理教室が遅いので。」
「まぁ・・・いつもよりかは時間がかかっているようだが、それは仕方ないだろう。
だが、ブリアーニ王国から料理人の助っ人も来ている。
もうすぐ出来るだろう。」
「わかってはいるのですが・・・待っているのは時間がかかるので。」
「それも致し方ない事だ。」
エルヴィス爺さんがそう言って席に着くとメイドがお茶を出してくる。
「シモーナ殿、昨日の小麦は50000kg、干物は25000kgの輸出の件はキタミザト家より正式に売買依頼があったので進めるようにと指示をしておいた。
納入日時についてはキタミザト家より連絡が行くだろう。」
「はい、ありがとうございます。」
シモーナが頭を下げる。
「あ、それとキタミザト様より依頼のあったブリアーニ王国のシュワシュワな白ワインも数本試飲用で頂いています。
今日、お持ちして執事の方に預けました。」
「うむ、わかった。
キタミザトに伝えておこう。
で・・・シュワシュワな白ワインとはなんだ?
カールラ殿、炭酸ワインではないのですかな?」
エルヴィス爺さんが言う。
「・・・基本的には一緒です。
ですが、ブドウの品種が独特で私達ブリアーニ王国でしか栽培していない物を使うのですけど。
ただ・・・炭酸の量が多くてですね。
領内外であまり好まれていないので生産量が低いんですよ。」
カールラが言う。
「ほぉ・・・美味しくないのですかな?」
「ん~・・・正直な話、味よりも炭酸の濃さに驚かれると思います。
味で言うなら貴国の物も飲ませて頂きましたが、こちらの方が上ではないでしょうか。」
「カールラ殿、それでも作るというのは?」
「それが好きという需要がありますので、作っているのが現状です。
それよりもあまりこの情報は出て行かないのですが、良く知っていましたね。」
「ふむ・・・私は知りませんでしたが、街中の店主にでもキタミザトが聞いたのでしょう。
興味があったので取り寄せたと思いますね。」
「そうですか・・・ん~・・・これの輸出に繋がれば良いのですけど。」
「それは飲んでみて領民達がどう思うかという所でしょう。」
「そうですね。」
エルヴィス爺さんの言葉にブリアーニが頷くのだった。
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