第1914話 料理中。(一部、覚悟が必要な料理があるようです。)
「これがシイタケ、小魚、カニ、そして堅魚・・・
堅魚だけ出汁の取り方が違うのですね。
極端に短い時でしか湯に浸けていませんでした。」
ブリアーニが各々の出汁が入ったグラスを見ながら言う。
「はい、違いますね。
各出汁に合う鍋や料理に使うのが一番ですね。
シイタケや小魚、堅魚はスープから鍋まで何でも出来ます、カニは味が濃いので鍋が主にだと思ってはいます。
カニはこの地域では高めなのでシイタケや小魚が主に使われるだろうと思っていますけどね。
堅魚は当分はエルヴィス家のみですね。
輸入品という事もありますので量が確保出来ませんので。」
武雄が言う。
「なるほど・・・確かにブイヨンとはまた違ったスープの素という事ですね。
費用が抑えられるというのは魅力的ではありますね。」
料理人が言う。
「キタミザト殿、この出汁は夜に浸けて朝か昼に使えるという事で良いでしょうか?」
ヴァレーリがメモを見ながら聞いてくる。
「はい、滲み出すのに時間がかかります。」
「ここでも時間・・・ふむ・・・まぁ良いか。
なら、旅先とかでは朝に水筒に入れて持ち運べば夕食に使えるという事ですね?」
「そうなりますね。
私とかは部下と一緒に王都に行く際には各々に持たせて夕食時に集めて鍋の出汁に使っていますよ。」
「なるほど・・・行軍中も使えそうですね。」
ヴァレーリが考えながら言う。
「えーっと・・・出汁については以上ですね。
では、これからは今日作るソーストリカツ丼とチキンライスのレシピのおさらいをして行きましょう。
まず材料からですね。」
武雄が今日のレシピの話を始めるのだった。
------------------------
ステノ技研の厨房。
「失礼します。」
ヴィクターが入ってくる。
「あ、いらっしゃいませ、ヴィクターさん。
どうしてこちらに?」
エプロン姿でなぜか顔に白い粉が飛んで付いている鈴音がヴィクターに言う。
「いえ、テイラー様のお店で待とうかとも思ったのですが、テイラー様やステノ技研の皆様がスズネ様なら厨房だからと通されまして。」
「はぁ・・・私にですか。
すぐですか?」
「いえ、そこまでではないのですが。
少しお願いがございまして。」
「ん~・・・ヴィクターさんがというより武雄さんがという事でしょうか?」
「はい、と言ってもスズネ様が何かをという訳ではないのですが。」
「はぁ・・・じゃあ、ちょっと待ってくださいね。
空いている席に座っていてください。」
「はい、お待ちします。」
とヴィクターが席に着く。
「仁王様、生地はこのぐらいですか?」
「ふむ・・・まぁ及第点だろう。」
割烹着姿のニオが鈴音が打った小麦粉の生地を確認しながら言う。
「あ!ありがとうございます!」
鈴音が頭を下げる。
「スズネ様、これは何を?」
ヴィクターが聞く。
「前に武雄さんがうどんを作ったんです。
今日カレーが手に入ったので簡単な出汁を作って、タマネギを追加し煮詰めて甘みを出して、塩で調整して汁にして・・・うどんを作ろうと思ったので今作実践しています。」
「ほぉ、うどんですか。」
「そういえば、ヴィクターさんは前の実食の時居なかったような・・・」
「ええ、残念ながら私は食べておりませんね。」
「昼食に食べていきますか?」
「よろしいので?」
「大丈夫ですよ。」
「では、お願いしてもよろしいですか?」
「はい!承知しました。
仁王様、この生地を折り畳むんですよね?」
「うむ、今回は柔らかめになるだろうからな。
割りと細く切るのだ。」
「はい!」
鈴音がうどんを作るのだった。
------------------------
ステノ技研工房。
「・・・で、スズネが料理とな。」
「そう・・・言っていたな。」
「まぁ・・・うどんという事で・・・どうなる事やら。」
親方3人が暗い表情で休憩している。
「スズネも頑張っているんだよ。
爺ちゃん達も覚悟を決めなきゃ!」
サリタが言う。
「その言葉は・・・サリタは覚悟は決まっているのじゃな?」
「当たり前でしょう?ポーションは用意出来ているよ!
2本だけど。」
「・・・早く当たった者勝ちか。」
ブラッドリーが呆れながら言う。
「ブラッドリーさん、スズネって本当に料理がダメなんですか?
煮るか焼くかとか簡単な物ぐらい出来るんじゃ?」
サリタがブラッドリーに聞く。
「・・・そうだな、簡単なはずなんだ。
俺達はそれほど高望みはしなかったはずなんだ。
・・・なぜなんだろうな・・・不思議だ。」
ブラッドリーがしみじみと呟く。
「ん~・・・スズネって味覚が変なわけじゃないからわかっているはずなんだよね。
なんで出来ないんだろう。」
サリタが首を傾げる。
「今日はニオ殿が付き添っているのだろう?
精霊が教えているんじゃ、食べられる物は出て来るじゃろう。
・・・美味い不味いの段階ではなくの。」
「テイラー殿がケアが出来たな。
なら最後に口を付けて貰うか。」
「それが最善の方法でしょうか。
スズネちゃんには悪いですけど、命は大事ですからね。」
3人の親方は対応策を考え始める。
「うどんのレシピを見せて貰ったけど、麺の硬さとかはどうなるかわからないけど、味付けで失敗しそうにはないんだけどなぁ。」
サリタが腕を組んで考えるのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




