第1909話 お客様は帰りました。(あぁ・・・疲れた。)
明日の段取りを再確認してから今日はお開きとなった。
シモーナ達の去ったエルヴィス伯爵家の客間では。
「「あぁぁぁぁぁ・・・」」
エルヴィス爺さんと武雄が呆けていた。
「まぁ、パナ殿からの話をコノハ経由で聞いていましたが、ヴァレーリ陛下が戦場に来るのですね。」
アリスが難しい顔をさせながら言う。
「はぁ・・・タケオ、陛下は引かなかったの。」
「はい、引きませんでした。
最後まで5000名の同行をさせるから許可して欲しいと言っていましたね。
決着がつかなそうなので・・・いや、違いますね。
あのままだったら認めさせられそうだったので、パナ経由でミアに伝言をして来て貰いましたけど。」
「そうじゃの、あれで有耶無耶には出来たと・・・思いたいが・・・
無理じゃろうの。」
「ですね。
さて・・・対応方法というよりどう対応するかを考える時間を頂けたと考えて何とかするしかないでしょう。」
「そうじゃの。
まぁ・・・戦地でいきなり10000だの25000だのが居たら圧倒されるじゃろうの。
想像しただけで疲れるのじゃが。」
「全くですね。
頑張ってください。」
「少しのんびりしてから考えようかの。
今考える事ではないしの。」
「そうですね。」
武雄とエルヴィス爺さんが問題を先送りする。
「タケオ様、話し合いの内容は何となくわかるのですが、実際はどうだったのですか?」
「ん~・・・ダニエラさんは個人買い付けに来て、カールラさんは国家として買い付けに来た感じですね。」
「まぁ手回し方式での玄米精製機を販売するのはタケオ的にはどうなのじゃ?
ミシンの駆動部分を組み込まないというのは正解じゃと思うが、問題はないのかの?」
「はい、問題ないと考えています。
今回の事で一定数の輸入は確保出来ています。
それに向こうで米の増産をして欲しいのでね。
ある程度の技術発展をしないと向こうの農家が増産に動けないでしょう。
まぁ向こうでは数年は大変でしょうが、10年間は価格が変動しませんからね。
どのくらい増産に動くのかを私は眺めて見ているだけです。」
「うむ・・・シモーナ殿にその辺の情報を貰うとするかの。」
「はい。
それとまぁトレンチコートはお任せですし、リバーシと将棋は輸出になるでしょうからヴィクターが少々色を付けた見積もりを用意するでしょう。
これも問題ないですね。」
「あ~、そうじゃ、タケオ。
将棋なのじゃがの、高価格の物と低価格の物を作ってはどうかの?」
エルヴィス爺さんが言ってくる。
「贈答用及び裕福層向けと一般向けですか?」
「うむ、まぁそこまで価格を変える必要はないかもしれぬが、これは貴族向けと豪商用向け、一般向けで仕様を変えても売れる商品だと思うの。
例えば・・・わしらや豪商用は大きい木から作り出し、一般向けは薄めの板で作るとかじゃ。」
「・・・あぁ、なるほど。
高価格帯では、あまり動かさない事を想定して、高さも重さも少しある形で作成して、一般向けは持ち運びしやすいように薄手の盤を半分にして裏に蝶番でも付けて折りたためる盤を作りますか。」
「うん?・・・まぁ価格帯を2つ用意してくれればそれなりに売れると思うの。
他にも木材で希少価値があるような物を使ってみるとかの。」
「その辺はハワース商会に相談しておきます。」
「うむ。
あとは明日の料理じゃの。
まぁ少々レシピを渡すのも土産としては十分かの。」
「はい、魔王国、ブリアーニ王国には私や鈴音と同じ出身者は居ないようですね。
なので私達の存在感を出させてあげれば懇意にしてくれるかもしれませんし。
向こうで新しい料理が出来た際も一早く教えて貰えそうですから良い事尽くめでしょう。」
「タケオやコノハ殿より料理に情熱を燃やし、新たな料理を作り出す者が現れるとは考えられんがの。」
エルヴィス爺さんが呆れる。
「なら私達は明日はタケオ様が料理をしている間、ダニエラ様やカールラ様のお相手をしていれば良いのですね?」
「ええ、お願いします。」
武雄がアリス達に頭を下げる。
「それとベルテ一家とルフィナちゃんの事はそれとなく伝えたのは良いのですけど、アニータとミルコの事は言わないのですか?」
アリスが聞いてくる。
「何と聞けと?
『お宅の昔の住人が今現代に転移して保護しています。どうしますか?』とかですか?
誰がそんな話を信じますか。」
「タケオ様は信じましたよね?」
「状況的にそうとしか思えませんし、2人が嘘をついているとも思えませんでした。
それに何よりもそんな嘘を言ってあの子達に何か有利になるような状況であったとは思えません。」
「そうですね。
あの時はそうとしか思えませんでした。」
「それに昔から来たというのはアニータとミルコの記憶をヴィクターが裏付けしてのただの口頭質疑でのみ確認した話です。
物的な証拠が一切ない状態です。
あの状況を知らないカールラさんに言ってもこっちの頭を心配されるか、不穏に思われるでしょう。
なら最初から言わない事の方が良いです。
それにアニータとミルコはあの2人が来ているのは知らないのです。
知ったとして昔しか知らないのに今の女王が引き取るのが正しいのかはわかりません。
少なくともアニータとミルコは今を生きるとあの時決めたのです。
就業期間が終わって、知りに行きたいというのなら紹介してあげて、現地で調べれば良いです。」
「・・・ベルテ一家とルフィナと、アニータとミルコは状況が違うのですね。」
「ええ、なのでアニータとミルコについては今は言わない事にします。
あ、正式に決まったからジーナに手紙出さないと。
あと流石に陛下にだけは伝えておかないといけないでしょうね。」
「そうじゃの。
陛下が知っていれば、狼狽えないで指示をしてくれるじゃろう。」
エルヴィス爺さんが頷くのだった。
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