第1904話 基本の説明をしましょう。(精霊の実況が始まる。)
楽しそうなヴァレーリ、覚悟を決めたブリアーニ、諦め顔のエルヴィス爺さんと武雄。
この4人がお茶をとりあえず飲んでいる。
「・・・辞退は無いか。
じゃあ、キタミザト殿、よろしく。」
ヴァレーリが武雄に振る。
「はぁ・・・私とエルヴィス伯爵に拒否権はありませんよ。
王都への報告はしない訳にもいきませんので、それとなく時間を稼ぐ程度の内容でと言わせて頂きます。」
武雄が諦めの言葉から始める。
「まぁ、そうだろうな。
立場が立場だし・・・おっと、我々は今は陛下の侍女だったな。
なので気にしなくても良いかもな。」
「はぁ・・・そういう所、うちの陛下に似ています。」
「ははは、良い御仁だな。
まぁ年始の銀製の物を贈ってくるのは嫌味としか感じないが。」
「あ~・・・それ、ダニエラさんの種族を知らなかったからみたいですよ?
とりあえず銀製を贈れば無難だろうと考えて送っていたみたいです。」
「え?そうなのか?
それは・・・悪い事をしたな。」
「まったく銀製の物を贈られて、返礼の品に痒くなる武具を贈るとか子供の交換会ですか。」
「・・・キタミザト殿、何で知っているんだ?」
「ヴィクターとジーナを買った際に王都で陛下に聞きました。
うちの陛下は『それはすまない事をしていたな』と難しい顔をしながら言っていましたね。」
「そうか・・・今後は変えよう。」
ヴァレーリが考えながら言う。
「で・・・どこから話せば良いのか・・・
まぁ概要で良いのでしょうね。
カールラさん、実は私、ブリアーニ王国の人達を雇っているんですよ。」
「はぁ・・・私が言うのも何ですけど、うちの国民は魔王国にもあまり行きませんが、どうやってでしょう?」
「1つはウィリプ連合国から、もう1つは我が国のゴドウィン伯爵領に不法滞在している所を見つけて連れてきました。」
「・・・すみません。
出だしで混乱しているんですけど。」
ブリアーニが出だしで躓くのだった。
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ベルテ一家のリビング。
「あ、パナからだ。
タケオが魔王国の陛下とブリアーニ王国の女王陛下にエンマ達の事を説明し出したらしいよ。」
ウカが茶請けのスイーツを食べながら一緒に食べているドナート達に言う。
「それはパナ殿が報告してくれているの?」
「うん、この地の精霊全員に今情報が伝わっているよ。
・・・こりゃ、酷い。
エンマ、大変だったねぇ。」
「あ、そこまで話しているんだ。」
「まぁパナも見ていたんでしょう?
スラスラと概要を話して・・・はぁ・・・本当、大変だったんだねぇ。
私達が出てこれたのが納得するぐらい酷い物だね。
ん?ルフィナ?・・・あぁ、伯爵の所の見習い子供メイドちゃんか。
あの子も奴隷一歩手前とはねぇ。」
「あの船に乗らなくて良かったですよ。
向こうに着いたらどうなっていた事か・・」
「本当、そこはキタミザト様と出会えた事に感謝しています。
同胞の子供があんな事をされるのを見ていられません。」
「まぁ・・・だが、向こうでは見ていられないというより自身や家族がどうなるかの心配が先だった。
同胞だろうと子供だろうと・・・気にかける気力は残されてはいなかったのが実情だな。」
「「まぁねぇ・・・」」
ドナートの呟きにエンマとフローラが頷く。
「はぁ・・・奴隷ね・・・
経済だけを見ると奴隷が悪というのは必ずしも言えない側面もあるからなぁ。」
「まぁね・・・
より原価を安く、より利益をと考えれば、1人銅貨何枚の労働者は魅力的だしね。」
「それこそ魔王国の各地はオークやゴブリンを無休で働かせているんだし、あれの地位に奴隷がいるという事だもんね。
それは国家としてやりたがる所があるのは・・・理解はするけど、奴隷はねぇ。」
「実際に奴隷となってみて、あれはないなぁと思うね。
恐怖でしかないもん。」
「だよね~。
キタミザト様に拾われてここに住まわせてくれるだけでも相当私達恵まれているし。
それにかなり自由があるし、お小遣い貰っているし。」
「成果、何とか出さないとなぁ。」
ドナートが呟く。
「米と野菜の生育は問題ないわよ。
タンポポも問題ないし、高性能肥料も順調ね。
大丈夫よ、農業は長期視点が大事なんだから。
タケオも気長に待ってくれるわよ。」
「仕事、頑張ろうな。」
「「うん、そうだね。」」
ドナートの言葉にエンマとフローラが頷くのだった。
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テイラーの魔法具商店のカウンター。
テトとニオがお茶を飲みながらパナからの報告を聞いている。
「改めて聞くと最悪ね。」
「タケオの方では有史以来、奴隷が居た時代の方が長いのだがな。
良くも奴隷を廃止しようという論議が成せたものだな。」
「まぁね。
実際は奴隷という身分はなくとも近しい身分が用意されていたのも含めると奴隷がない時代の方が圧倒的に短いよね。」
「まぁこの国は奴隷制度がほとんどない、規制も始まったと聞いている。
多少は荒れるだろうが、この地には奴隷がタケオの所ぐらいにしかいないし、そもそも高給取りだからな。
うちのテイラーよりよっぽど給料が良い。」
「さすが、タケオとスズネは奴隷が無い時代の子達よね。
労働対価をちゃんと理解しているもの。」
「その分成果を出さないと維持出来ないというある意味、強迫観念に囚われるのだがな。
まぁタケオとスズネは良い塩梅で熟しておるから問題はないだろう。」
「そうだね。
これから先どうなる・・・ん?パナが今変な事言ったよね?」
「うむ、魔王国の王軍が南下すると言ったな。
さてはて、どういうことだ?」
「さぁ?」
テトとニオが首を傾げるのだった。
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