第1903話 本題に入りそう。(さて・・・覚悟は良いか?)
「キタミザト殿、ダウンベストとダウンジャケットなんだが。」
大人しく聞いていたヴァレーリが話し始める。
「はい、欲しいなら買ってくださいね。」
「うん、買うのだがな?
素材として魔王国から綿や布地を買ってみないか?」
「輸入品目という事ですね?」
「あぁ、その仕立て屋からの話なのだが、ダウンジャケットの中は綿で作られていて、キタミザト殿の発案時は羽毛でと言っていたらしいと聞いた。
魔王国の東側のカスト・・・ほら、前回一緒に来たグリフォンが生息しているんだ。
季節も変わるからな、生え変わる際とかの羽を売れないか?」
「・・・えーっと・・・わかりかねます。
試作として20kg程度送って貰えませんか?
とりあえず、試しに使ってみたいです。」
「うん、わかった。
シモーナさんに言って、カストに依頼するようにして貰おう。」
ヴァレーリが頷く。
「よろしくお願いします。」
武雄が頭を下げる。
「で・・・だが・・・カールラの方を先にするか?」
ヴァレーリがブリアーニに言う。
「私で?・・・キタミザト殿、明日とか米をご提供して頂く事は可能ですか?」
「え?・・・まぁ、先ほども言った玄米精製機を使えば朝にはご用意出来ますが。」
「そして明日、お時間を頂けますか?」
「まぁ・・・王都から戻ったばかりなので仕事はあるでしょうけど、急がなきゃいけないのはヴィクターにまとめさせられますから時間は何とか出来ますね。」
「我が国の料理人を連れて来たので米の料理を見せて頂けないでしょうか!」
「・・・ん?・・・ん~・・・場所はどうしますか?」
「それはこれからお店を探そうかと・・・明日までには借り上げます!」
「街中のかぁ・・・エルヴィス伯爵、米の普及はまだですよね?」
武雄が考えながらエルヴィス爺さんに聞く。
「まだ・・・早いな。
どこぞの店を借りる事自体は良いとしてもどれだけ秘密にしてもレシピはその店には知れてしまうな。
皆が同時に知るべきとして今公表しておるから・・・街中の一店舗を借りるのは些かよろしくないな。」
「となると、この屋敷でですか?」
「ん~・・・わしは・・・んんっ!私は良いが、タケオがダメだろう?」
「ん~・・・ダニエラさん、少しお聞きしたいのですが。」
「なんでしょう?」
「カールラさんはどこまで知っているんですかね?」
武雄がヴァレーリにブリアーニが子供達やベルテ一家の事を書いた内容をどこまで言っているか聞いてくる。
「・・・概要ぐらいかなぁ?
具体名はあげてない・・・はず。」
ヴァレーリが思い出しながら言う。
「何?何?キタミザト殿とダニエラが何か通じているの?」
ブリアーニがヴァレーリと武雄を見て言ってくる。
「あ~・・・ん~・・・この件ではキタミザト殿を擁護しよう。
あれはキタミザト殿の行動の結果だが、キタミザト殿の事だ、王都に報告はしているだろう。
その結果として現状に動きが無いのなら貴国としての判断がされたという事でもあるだろうし・・・
我が国はそこに異を唱えたり、何か要求をする事はない。
ただただ当事者達が安心して生活出来ているのを確認出来れば良い。」
ヴァレーリが諦めながら言う。
「ありがとうございます。
エルヴィス伯爵、構いませんか?」
「こうなれば言った方があの者達の為にもなろう。」
エルヴィス爺さんも諦めながら言う。
「えーっと・・・結構な重大事項なのね?」
ブリアーニがヴァレーリに聞いてくる。
「はぁ・・・部下が居なくて良かったな。
この場での話で終わらせられるし、今後の付き合いも変わるだろう。」
「その言い方、すっごく怖いわね。
・・・良いでしょう、私も国のトップ、聞きましょう。」
ブリアーニが姿勢を正す。
「あ~・・・それとエルヴィス伯爵とキタミザト子爵、両名ともここから先はこの部屋から出たら当分は口外禁止でお願いする。
たぶん、我が国の話も出るだろうしな。
末代までなんては言えないだろうが出来れば・・・4か月程、王都への報告は控えて貰いたい。
その後でなら存分に報告しても良い。」
「「・・・」」
エルヴィス爺さんは頭を軽く抱え、武雄は諦めの表情になるのだった。
「それと、カールラも今からキタミザト殿とエルヴィス殿が言う事は口外禁止だ。
部下がもし知ったとしても『そうですか』と言って有耶無耶にするように。」
ヴァレーリがブリアーニに言う。
「え?私にもかかるの?」
「当たり前だろう?
こちらからは我らの行動を言うんだからある意味この両名には意図的に報告を遅らせるという、貴族としては危うい事をさせようというんだ。
そしてカールラもキタミザト殿から知らされる報告において、関係する行動を一切しないように要請する。
そのぐらいこれから行う会話は重い。
そして施政者たる我々は受け止めねばならん。
だが、知るという事は行動が出来るという事でもある。
この機に乗じ魔王国に攻め込む事も、逆に攻め込まれる事もな。
だから先んじて皆に禁止を言い渡して置く、もし破られればどこかが被害を被るからな。
我が国の兵士の命を代償に各国の半分程度まで血祭りにあげられるぐらい我は本気だぞ?」
「ダニエラ、本気ね。」
「当たり前だ。
口外するなと言って口外したなら報復があるのは当然だろう?
だから自信がないなら聞かない事だ。
カールラは料理を諦め、キタミザト殿は教える事を中止すれば良い。」
ヴァレーリが言い放つ。
「・・・料理のレシピが何でこんなに大事になったんだろう・・・
ちょっと待ってね。
考えをまとめるから。」
ブリアーニが思案をし始めるのだった。
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