第1900話 いらっしゃいませ。(予定通り進もう。)
エルヴィス伯爵邸の客間にて。
「こちらが魔王国からの穀物等の輸出依頼の発注書でございます。
そして、もう一つが魔王国とブリアーニ王国からの米の輸入見積書でございます。」
シモーナが武雄の前に提出する。
「はい、内容を確認させて貰います。」
武雄がそう言って米の輸入の見積書から見始める。
「・・・」
なんとも言えない静けさの中で武雄が発注書と見積書を精査しているのを見守る。
シモーナは「どうだろう」と緊張し、エルヴィス爺さんは「どぉ?」と中身に興味を持ちながら待っている。
「わかりました。
魔王国への穀物と干物の輸出は受けさせて頂きます。
それと米の輸入は見積書の通りで結構です。
こちらは注文書を用意しましょう。」
「はい!ありがとうございます。」
「魔王国側での受け渡しの際に私と数名が魔王国まで同行したいのですが。」
「え?・・・キタミザト様が・・・ですか?」
「はい、初めての大規模な輸出ですからね。
しっかりと魔王国のお城に納入されるまで見届けようかと思います。
あ、シモーナさんが信用できないとかではなく、個人的な気持ちの問題です。
最初ですからね。
ね、カールラさん。」
「え!?・・・はい、私も米の時は同行しましたが・・・キタミザト殿、魔王国の王城に行くのですか?」
「はい、出来れば・・・ですけどね。
レバントさんのお邪魔はしたくないので大人しくしていてと言われるのならレバントさんのお店で新たな輸入品が無いか見ていますけど。」
「レバントさんなら問題はないと思うのですが・・・魔王国の王城へですか。」
ブリアーニが考えながら言う。
「はい、我が国では魔王国の中央に行った者はごく少数の人しかいないですしね。
出来れば魔王国がどんな国か見てこようかと思いまして。」
「はぁ・・・ん~・・・ファロン子爵領内はたぶん大丈夫です・・・たぶん。」
シモーナが考えながら言う。
「王都に向かう理由は王城からの依頼品ですからね。
それに手を出す者達は居ないとは思いますけど・・・帰りが不安かぁ。」
「いえ・・・街道を行くのですからそこまで治安は悪くないですが・・・
人間種がほとんど居ないのですよね・・・目立ちますよ?」
シモーナが心配そうに聞いてくる。
「ん~・・・ダニエラさん。」
「はい、なんでしょうか。」
「前に私が剣を受ける頑丈さを見せましたけど、あれで街道行けますかね?」
「・・・まぁ大丈夫じゃないですか?
一応、王城に来るならそれなりの護衛は付けられると思いますよ?」
「この間のフレッディ殿に迷惑をかけてしまいそうですけど。」
「第1軍でも良いですし、今回同行している第2軍でも良いのですけど。
1小隊くらいなら問題なく即応出来ますよ。
ね?」
ヴァレーリが後ろに控える護衛に言うと「はい。」と返事をする。
「・・・第2軍・・・そう言えば王都で第2軍の方に会いましたね。
・・・ソルミ殿でしたか?」
「キタミザト殿に会ったと言っていましたね。」
ヴァレーリが平然と答える。
「・・・合流したんですか?」
「はい、たまたま会いまして合流しましたよ。
仕事熱心で私の護衛に加わっています。」
「・・・そうですか。
ん~・・・驚いていましたか?」
「どれをですか?」
「いや、ヴィクターの事話していないので。」
「あ~・・・この街の城門で出迎えて貰いました。
うちの護衛が軽く私を睨んだ程度ですけどね。」
「それは失礼しました。
まぁ面ど・・・話が逸れるので王都では話さなかったんですけどね。」
「・・・それで良いでしょう。
特に中隊長に言うような事でもありませんしね。
で、キタミザト殿、王城に依頼しておきましょうか?」
「ん~・・・あれば安心ではありますが、王城に行っても私何もする事ないので・・・
王城に用もない人の護衛に王城の方々に来て頂くのは悪いのでご遠慮します。」
「私とお茶でもしますか?」
ヴァレーリが言ってくる。
「特に話す内容がないですから・・・」
「私はありますけど、王城に来るなら見せたい物もありますし。
魔王国の国力をアズパール王国の貴族の目に焼き付けて貰いたいのですけどね。」
「それは目の毒というのではないですか?
まぁ・・・良いです、護衛の件はお断りします。
何かあれば対応する程度で移動しますし。」
「わかりました。」
ヴァレーリはそういうが「第4軍から誰か行かせるか」と思案する。
「シモーナさん、請書をすぐ作りますからね。
納期については、発送作業をしながらわかり次第ご連絡します。」
「はい、お願いします。」
シモーナはそう言いながら「王都との往復で宿の手配をしなきゃ」と武雄が来るのを前提に色々考え始める。
「ヴィクター。」
「はい、主、すぐに穀物等の輸出の請書と米の輸入発注書をご用意いたします。」
「うん、ヴィクター、シモーナさんを連れて行きなさい。
アリスは護衛で。」
「え?」
シモーナが驚き顔を武雄に向ける。
「「はい。」」
ヴィクターとアリスは返事をする。
「シモーナさんもここで待つよりヴィクターと世間話でもしながら待っていた方が良いでしょう。」
「まぁ・・・それは・・・」
「ヴィクターとシモーナさんが何か悪さするとは思っていませんよ。
なので、信用をして同行を許可します。」
「はぁ・・・」
シモーナが生返事をする。
「こっちからの護衛はうちの護衛とカールラの護衛をシモーナさんに付けましょうか。
一応、念の為に。」
ヴァレーリが言う。
「そうですね。
私達はここに居ますし、ダニエラが居る時点で私の安全は問題ないですものね。
シモーナさんの護衛をしなさい。」
「はっ。」
「畏まりました。」
ブリアーニの護衛とヴァレーリの護衛が返事をする。
「うむ・・・まぁヴィクターの事です。
すぐに終わらせるでしょう。
シモーナさんもヴィクターが作る請書と発注書の数量と金額に誤りが無いか確認をお願いします。」
「はい、わかりました。」
「アリス、お願いしますね。」
「人数があれなのでメイド達を連れて行きます。
向こうでお茶を出さないといけないですし。」
「ええ、お願いします。」
武雄が頷くのだった。
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