第1898話 さて、一旦報告をしよう。(あ、言い忘れてた。)
エルヴィス伯爵邸の玄関。
「ただいま、戻りました。」
「ただいまぁ。」
武雄達が入ってくる。
「おかえりなさいませ、タケオ様、アリス様。
散策はどうでしたか?」
フレデリックが出迎えてくれる。
「・・・色々報告しなくてはいけませんね。
それとステノ技研で正式に玄米精製機の製造が可能になりました。」
「ほぉ、販売許可を出されましたか。
求めている品質に近付きましたか?」
「作業時間は1袋を30分でこの状態です。」
「失礼します・・・素人目に見ても綺麗に玄米の状態になっていますね。
わかりました。
エルヴィス家で購入出来るように進めましょう。
見積もりは頂けますか?」
フレデリックが袋の中を確認して言ってくる。
「はい、見積もりを頂いた後にフレデリックさんや料理長達を連れて、もう一度試験を見て貰おうと思っています。」
「ふむ・・・わかりました。
見積もりが来次第、予定は組みましょう。
それでは主が客間でお待ちです。」
「はい、わかりました。」
フレデリックを先頭に武雄とアリスが客間に向かうのだった。
客間に入るとエルヴィス爺さんとビエラ、クゥ、夕霧が居た。
「タケオ、アリス、おかえり。」
「タケオ、アリス、おかえり。」
「きゅ。」
4人共固まって座っていて遊んでいるようだが。
「はい、戻りました・・・将棋ですか。」
「うむ、夕霧に3人同時に相手して貰っているのじゃがの。」
「ユウギリ、強い。」
「きゅ~。」
3人共敗戦濃厚なようだ。
「ふむ・・・抱えているのは玄米かの?」
「はい、鈴音からの要請で玄米精製機の商品前試験をしてきました。
問題ないと思ったので正式に見積もりを依頼しました。」
「うむ、その辺も聞こうかの。」
「はい、ではさっきの散策の話をしていきます。」
武雄がエルヴィス爺さん達に話を始めるのだった。
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シモーナ一行が泊まる宿。
ヴァレーリ達は早めの昼食をしながら時間を潰していた。
「あ!」
ブリアーニが何かを思い出したかのようで立ち上がる。
「うん?どした?
あ、このピザは辛さを増した方が良さそうだなぁ。
ふむふむ、これは報告書に載せよう。」
ヴァレーリがピザを食べ品評しながら聞いてくる。
「キタミザト殿に料理の手ほどきのお願いをするのを忘れてた!」
「あ~・・・だが、昼過ぎの打ち合わせの時に言っても食材も集まらないんじゃないか?」
「・・・確か玄米精製機で時間が短縮しているんだったよね。」
「まぁ・・・そう言っていたな。
今日の今日は難しいだろう。
それにお願いする立場上、キタミザト殿にもメリットがないとな。
無料では教えてくれないんじゃないか?」
「・・・トレンチコートも頼みたいんだよね・・・どうしようかなぁ・・・」
「お願い事多いな。
というよりもトレンチコートを国民全員に配る気か?」
「売るよ?もちろん。」
「まぁ慣れていない全国民総異動だからなぁ・・・割と暖かく過ごせそうで風雨からも体力の温存を目指すという製品の目的は魅力的ではあるが・・・我ならダウンジャケットが良いなぁ。」
「あれ羽毛か綿だって・・・そんな量の羽毛や綿は手に入らないわよ。」
「ん?あそこで作っているのは?」
「綿。」
「ふーん、羽毛というのは?」
「当初キタミザト殿が案を出した時は羽毛、であそこの工房で出来る事を考えて綿。
それでも綿を大量に集めるのは苦労しているみたいね。
羽毛を集めるよりかは楽なんだけど。」
「どちらにしても一気に需要が高まったというのであれば価格も上昇はするか。」
「綿や羽毛を集めるくらいならトレンチコートの方が皆に行き渡ると思うのよ。」
「うん・・・まぁ、良いんじゃないか?」
「うん!頑張る!」
ブリアーニがやる気を出す。
「で、どうやってキタミザト殿に料理のレシピとトレンチコートの件の依頼をするんだ?」
「ん~・・・どうしよう・・・お金かなぁ・・・」
「まぁ、キタミザト殿はわかってくれていそうだがな。」
「そうかなぁ・・・ちょっと心配になってきた。」
「今更だと思うんだがなぁ。」
ブリアーニの心配をヴァレーリはため息交じりに聞き流すのだった。
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エルヴィス伯爵家の厨房。
「・・・用意は出来た・・・んだよなぁ?」
料理長が準備したスイーツを見ながら首を捻っている。
「料理長・・・そろそろ来る頃ですが?」
メイド長が後ろから声をかけるが、料理長は唸りを止められない。
「もうお時間ですよ。」
再度メイド長が声をかける。
「はぁ・・・そうか・・・時間かぁ・・・
綺麗に盛り付けも出来たし・・・うん、大丈夫・・・なはず。」
「平気ですよ。
キタミザト様と伯爵様が何とかしますから。」
「あぁ・・・そうだな。
陛下が来た時以来の緊張をしている。」
「それは執事達もメイド達もそうです。
何度同じ場所を掃除していたか。
まぁ子供達の手前、オロオロとはしていませんけど、緊張しているのがわかってしまいます。」
「メイド長は慣れているな。」
「慣れている訳ないでしょう?
要は適度な諦めをしているだけです。
粗相をしたからといって戦争になるような事はないんです。
なら与えられた仕事に集中するしかないでしょう。」
「年の功だな。」
「そういうなら料理長もさっさと諦めてください。
フレデリック様も昨日から諦めていますよ。」
「成るようにしかならんか。」
「なりません。」
料理長の呟きにメイド長がきっぱりというのだった。
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