第1896話 武雄とアリス、例の2人に発見される。(とりあえず落ち着け。)
武雄は玄米が入った袋を抱えながらアリスと一緒にエルヴィス伯爵邸を目指していた。
「~♪」
「タケオ様、上機嫌ですね♪」
アリスが隣を歩く武雄に声をかける。
「ええ、上々の始まりですよ。
まだ装置自体は大きいとはいえ、籾状態から玄米にするのに1袋を30分で終わらせたんですよ?
これは賞賛されるべきでしょう。」
「ですね~。
分別が少なくなるというのは労力があまりかからないのですからこの装置も普及貢献に役立ちますね。」
「ええ、それに小麦でも出来れば、殻を上手く飛ばせてから粉に出来ますからね。
品質も良くなるでしょう。」
「良い事尽くめですね♪
今後の課題はミシンの動力部分を組み込む事ですよね。」
「そうですね、それと省スペース化ですね。
些かまだ装置が大きいので1部屋使ってしまうでしょう?
あれをどうやって小さくしていくかが課題ですね。」
「村や町に数個置いて共有資産とかにするのはどうでしょうかね?
そうすれば皆で少しずつお金を出し合えば何とか設置出来ませんか?」
「それも1つのやり方ですね。
とりあえずはこの成果をフレデリックさんとエルヴィスさんに見て貰って屋敷に置いて貰えるようにしないといけませんね。
その後に各局長に見て貰い、聞き取りをして必要かどうかを検討でしょうね。
必要と判断されるなら何か現地で試せるような物を作って皆に見て貰って納得して貰わないといけないですかね。」
「あ~・・・そうですね。
村や町の方々が一番使うんですものね、納得して貰わないといけないで・・・」
「・・・」
アリスと武雄がピタッと止まり、2人して背中を合わせながら建物の外壁に近寄る。
「ニルデちゃんの方からだそうですよ。」
「ええ、私の方にも来ました。
精霊が警告をね。
シールドは展開していますけど・・・何が何やら・・・」
「はい。
・・・あ・・・来た。」
アリスが通りの先に何かを見つけ呟く。
「「見つけたっ!!待てー!!」」
ヴァレーリとブリアーニが全速力で走ってくる。
「・・・あ~・・・ここで走って逃げても意味はないでしょうね。」
「あの速さでは私は何とかなってもタケオ様は・・・」
「ですね。
んんっ・・・さて、お相手しますか。」
「諦めが肝心ですかね。」
武雄とアリスが諦めながら覚悟を決めるのだった。
「やーっと会えた!キタミザト子爵様!聞いてください!
ウスターソースの件なのですが!」
「キタミザト子爵様!トレンチコートの件なのですけども!」
ヴァレーリとブリアーニが武雄の前に来ていきなり話し始める。
「あ~・・・何の事やら・・・とりあえず落ち着いては?」
「キタミザト子爵様!そうは言ってもウスターソースの件を話さなければ契約が!」
「キタミザト子爵様!このあと会談して私達帰るんですよ!
今、事前に動いておかないと契約出来ないんです!」
「カールラ!我の方が先だろうが!
ウスターソースと中濃ソースの輸入を決めなければ!」
「いいえ!ダニエラはちょっと黙ってて!それにそれはシモーナさんの商売って納得したでしょう!
こっちは国家として動くんだから!」
「そんな事を言うなら米の輸出が出来て儲けているだろうが!
少しはこっちも儲けさせろ!」
「儲けてなんていないでしょう!
ダニエラの話は長いんだから私が先!」
「カールラの方が長いだろうが!」
ヴァレーリとブリアーニがワーワー話している。
「あ~・・・なにこれ・・・ヴィクター?」
「申し訳ありません、抑えられませんでした。」
いつのまにか武雄の横に来ていたヴィクターが謝ってくる。
「この2人なんです、それはしょうがないですけどね。
この状況はどうします?」
「さて・・・どうした物か・・・あ、アリス様、お願いします。」
我関せずをしようとしていたアリスにヴィクターが声をかける。
「私ですか?」
「はい、気が削がれれば落ち着きますので、魔眼をお願いします。」
「はいはい、んっ。」
アリスが魔眼を瞬間的に発動させるとヴァレーリとブリアーニが飛び退く。
「失礼しました。」
アリスが会釈している。
「・・・今のは?」
「・・・アリス殿か。
はぁ・・・些か失礼をしたか。
キタミザト子爵様、アリス殿、お久しぶりです。」
ヴァレーリが佇まいをササっと直して軽く礼をする。
「はぁ・・・キタミザト子爵様、アリス殿、お久しぶりです。」
ブリアーニも軽く礼をする。
「うん、話せそうですね。
ダニエラさん、カールラさんもお久しぶりです。
で?打ち合わせは午後からの予定でしたが・・・ヴィクター、予定は?」
「はい、今宿に戻る前にエルヴィス伯爵邸の周りを散策しようとなってしまいまして・・・」
「そう・・・率先して動くこの2人は止められませんか。
ヴィクター、お疲れ様です。」
「キタミザト子爵様、それは些か私達が誰にも抑えられない暴走馬と言っているような物ですよね?」
ヴァレーリが抗議してくる。
「今の行動を見ると抑えられると思わないでしょう。
反論はございますか?」
「・・・ありませんけど!」
ヴァレーリが不満顔で言ってくる。
「はい、で・・・前から思っていたのですけど、私のことは役職名で言わなくて結構ですよ?
殿で結構です。」
「わかりました、キタミザト殿。
さっきのウスターソースと中濃ソース、カールラの方の仕立て屋の話はまた後程。」
「ええ、シモーナさんの話が終わってから聞きます。
それでよろしいですか?」
「ええ、それで結構です。」
ヴァレーリが頷く。
「ちなみにキタミザト殿は何を抱えているのですか?」
ブリアーニが聞いてくる。
「玄米ですよ。」
「・・・なぜに玄米を?」
「まぁちょっと・・・ありまして。」
「ちょっとの理由で玄米を持ち歩く意味がわからないですけど?」
ブリアーニが訝しげに武雄を見るのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




