第1895話 テイラーの魔法具商店にて。(玄米精製機1号機完成。)
「鈴音、チキンライスより炒飯食べたくないですか?」
「いや・・・武雄さん、炒飯単体はないですよ。
ラーメンもください。
出来れば醤油で。
出来れば餃子6個付きで。」
「肉食系だねぇ。」
「武雄さん、それ偏見ですよ。
女性でもラーメンも炒飯も餃子も好きな人は多いんです。
ただカロリーが膨大なので少量で我慢しているだけです。
ラーメンに炒飯と餃子・・・高校生時代には人目を気にして食べられなかった組み合わせ。」
「いや、そもそも女子高生がラーメン屋に来るのですか?
ファミレスとかの方が居るイメージです。」
「そぉ、当時はそんな感じでした。
でも今はそんなの気にしないです!ラーメンに牛丼にカツ丼に!」
「営業をしているサラリーマンの昼食みたいな事を言っていますね。」
武雄とアリス、鈴音が室内の椅子の所に座りながらお茶を片手に雑談している。
なんで炒飯なのか、それは。
「タケオ様、その・・・チキンライスという料理とちゃーはん?とかいうのは難しいのですか?」
「ん~・・・どうでしょうかね。
米が炊けてればそこまで難しくはないですね。
ただ・・・炒飯用の油がねぇ・・・オリーブオイルで出来るのかわからないんですよね。
さっきのベルテ一家との話合いでチキンライスは出来そうだと思ったので。
次は炒飯かなぁと。」
武雄がアリスの疑問に答える。
「はぁ、どちらも食べた事ないのでわかりませんが・・・
そのチキンライスという方は出来るのですか?」
アリスが生返事をしながらまた聞いてくる。
「必要な食材は揃っていますからね。
今日は玄米が手に入りますから、やろうと思えば夜には食べれるのでしょうけど・・・明日、喫茶店でカレーなんですよね。
少しお裾分けして貰って、カレー風味のチキンライスにするのも手ですが・・・ビエラ達が純粋にカレーを好みそうでね。」
「あ~・・・そうですね。
2日続きでカレーというのも難しいかもしれないですよね。」
アリスが頷く。
「武雄さん、明日は喫茶店の昼食がカレーなのですか?」
鈴音が聞いてくる。
「ええ、エンマさん達が言っていましたよ。
なので、ここに来る前に研究所と1階の喫茶店に寄ってベルテ一家に夕食として渡すように言っておきました。
魔王国ご一行の手伝いにベルテ一家から人員を借りたのでね。」
「ん~・・・武雄さん、明日昼に外出して良いですか?」
「食べにいくなら親方達皆で行ってきなさい。」
「はい!あ、テトちゃんは変装が必要かな?」
鈴音がカウンターにいるチビテトを見る。
「仁王様、カレーですよ?」
「ふむ・・・我にはこれがあるからなぁ。」
チビニオが片手に持っている紐を持ち上げる。
「・・・私、犬じゃない・・・」
紐の先には腰に紐を巻かれて打ちひしがれているテトが居て、何やら呟いているが誰も気にしない。
「ん~・・・サリタさんにお願いしてエルヴィス伯爵邸に取りに来てもらいましょうか。
その方が安全でしょう。
いつ出来るか追ってパナから伝達させますね。」
「わーい♪
テトちゃん、カレーを食べて気分転換しようね?」
「うわぁーい・・・」
テトが変な返事をしている。
「キタミザト様、準備が整いました。」
ブラッドリーが奥からやって来て武雄達に言う。
「お、出来ましたか。
どうなったかなぁ?」
「これで玄米にする作業が楽になれば良いですね。」
「小麦での成功率は高かったようですよ?」
武雄達が席を立って奥に行くのだった。
・・
・
「はぁはぁはぁ・・・キツイって・・・」
バキトはそう言いながら玄米精製機の駆動部分を回している。
「ほれ!頑張れ!」
ボイドがベインズの息子のバキトを応援している。
「頑張れー!休むな!」
サリタも武雄から「今日か明日はカレーなんで取りに来てください」と言われここの成否が貰えるカレーの量に直結すると思いバキトを応援している。
「米の入る量が少し多いですかね・・・
もう少しゆっくりでも良い気がするんですけど・・・」
一方のべインズは上から装置を覗きながら木臼に入っていく米の様子を見ている。
「キタミザト様、如何でしょうか・・・」
ブラッドリーが今、玄米精製機から出て来た玄米を皿に乗せて武雄に見せる。
「うん・・・随分と米が多くなっていてゴミが少なくなりましたね。」
武雄が皿内の米を見ながら呟くと。
その場のステノ技研の面々はホッと息を付く。
「はい、この状態なら調理する前に分別するのが楽になるだろうと思います。」
「そうですね。
・・・うん・・・良いでしょう。
玄米精製機としての第1弾として販売を許可します。
その相手先はエルヴィス伯爵家とします。
この後の継続研究としては足踏みミシンの機構を使った手回し部分の改良、さらなる分別率の向上の研究をする事。
この装置を1個作る際の見積もりの作成をお願いします。
この装置をと言いたいですが・・・」
「商品とするのでしたら新しく作らせて頂きます。」
ブラッドリーが武雄に言う。
「なら見積もり後にフレデリックさん達も交えて再度、玄米の試作をして貰います。
まぁダメなら私が買ってベルテ一家の所に納入しますから1個は確実に作る事を約束します。」
「はい、なら出来るだけ早く見積もりをお作りします。」
「はい、と成功報酬と今後の資金で金貨5枚は置いていきます。
活用してください。」
「ありがとうございます。」
「うん、では、私はまたテイラーさんの店に居ますから1袋を全部終わらせて詰めてから持って来てください。
良くやりました。」
「はい、畏まりました。」
武雄がブラッドリーの言葉を聞いて席を立ち、アリスと鈴音と一緒に店の方に戻って行く。
その姿を見ながらステノ技研の面々は満面の笑みを浮かべるのだった。
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