第1893話 樽では輸出のみでとなります。(ラルフ準備中。)
「そうですか・・・昨日の仕立て屋の店長さんと昨日飲んだんですか。
それは確かに想定通りと言われてしまうかもしれませんね。」
ヴァレーリがそう言って呆れた顔をブリアーニに向けるがブリアーニは「ははは」と乾いた笑いをしている。
「はい、それで・・・でして・・・樽での販売なのですが・・・
流石に樽ですと輸出になるのではないでしょうか。
いくら少数の樽でも小樽に分ければそれなりの量になるので樽での販売はキタミザト家を通させて頂けますか?」
ベッドフォードが言い辛そうに話す。
「「やっぱりかぁ・・・」」
ヴァレーリとブリアーニがガックリと肩を落とす。
「小樽であれば販売は問題ないのですか?」
ヴィクターが聞いてくる。
「はい、問題はありません。
まぁ大量に買われるのはお止め頂いての話ではあります。
・・・樽での販売だと予約が詰まってるので今直ぐの販売は出来ません。
せめて・・・5日頂ければ1樽くらいなら用意は出来ますが・・・
毎日の出荷も難しいので月に5樽程度が限度ではないでしょうか。」
ベッドフォードがヴィクターに言う。
「わかりました。
主にはそうお伝えします。
ヴァ・・・ダニエラ様、カールラ様、以降ウスターソースについては輸出品目で対応いたしますからよろしくお願いします。」
「「はぁい・・・」」
ヴァレーリとブリアーニが力なく返事をする。
「兄さん、私はその樽を輸入するさね。」
「うん、だろうな。
だが、諸事情もあるから・・・当分は4樽が限度だろう。」
「うん・・・無理をして変な品質を輸出されても困るさね。
なら少なくして4樽が良いところだろうさね。」
「それでも無理はさせるんですけどね。
シモーナ、上手くやりくりしてくれ。」
「わかったさね。
それとここと同じ売り方をしたいから空の小樽も十個は欲しいさね。
ファロン子爵領で小樽は真似が出来るだろうからそれはうちの方で用意した方が良いと思うさ・・・います。
兄さん、詳しくは後で相談させてください。」
「良いだろう。
金額についてもその時打ち合わせしよう。」
ヴィクターとシモーナがさっさと輸出についての話をまとめてしまう。
「あ~・・・樽での入手が無理だったかぁ~・・・」
「当初の予定通りシモーナさん経由ですね・・・これうちまで来るのかなぁ?・・・」
ヴァレーリとブリアーニが落ち込む。
「ん?・・・んん?・・・店長さん、すみませんが、あれは何でしょうか?
右から3つ目の樽なんですが。」
ヴァレーリが何かに気が付き指を指してベッドフォードに聞く。
「中濃ソースですね。
キタミザト様がウスターソースに手を加えて揚げ物に合うように調整したソースになります。
価格は高いのですが、これも毎日完売が続いております。」
「「なに!?」」
2人が驚く。
ちなみにシモーナも驚いている。
「シモーナ、知らなかったのか?」
「知らなかったさね・・・私も食べてみたい・・・」
「いや、お前昨日食べてたぞ?」
「え?あったの?
なんで言ってくれないのさ!?」
「いや、何も言わないで食べてたから知っているのかと思ったぞ。」
「え?ええ~?・・・どれ?」
「いや・・・まぁ気が付かなかったんなら良いんじゃないか?」
「そうもいかないさね!
こっちの中濃ソースは買えますか!?」
「ウスターソースに手を加えるので・・・1樽辺りの製造量も少なくなってしまいましてね。
時間もかかりますし、販売価格もウスターソースに比べ高いですが・・・先ほどの輸出する樽内で個数を調節してくれれば出来なくはないです。」
「んんー・・・ウスターソースに中濃ソース・・・どうすれば・・・」
「いや、その前に試食して味の確認が必要だろう、ちょうど売り先の人達も居る事だし。
まぁ昨日の様子を見る限り大丈夫だと思うが。」
「だからどれが中濃ソースだったんさね!?」
とりあえず、ベッドフォードの青果店ではやりくりをして輸出用の樽を4樽作る事になるのだった。
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ラルフの仕立て屋。
「ふむ・・・ブリアーニ王国への技術提供の金額はこんなものか・・・」
ラルフが自身で積算した見積書を見ながら呟く。
「店長、大丈夫なんですかね?
キタミザト様が決める前に試算してしまって良いんですか?」
「確かに、キタミザト様が技術移転を断ったら出来ませんので、無駄仕事になってしまうのですが、いつかの段階で国外には輸出品で行くか、向こうでの生産させるのかの選択がされるでしょうから。
全くの無駄仕事でもないですよ。」
ラルフが積算見積もりから目をあげて言ってきた従業員に向かって言う。
「ちなみにその技術移転の積算の中にキタミザト様への発案料は入っているのですよね?」
「当然、普通に1着売れた際の比率で入っている。
あとは・・・あ、技術移転の際の紙型を用意しないといけないからもろもろの移転準備費用も加味しておくか。
他に何か・・・ん~・・・」
ラルフは悩む。
「店長、本当にキタミザト様はこっちに任せるんですかね?」
「ああ、キタミザト様なら許可を出すはずだ。
そういった事に口は出さないだろう。」
ラルフが自信満々に頷くのだった。
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