第1891話 ベッドフォードの青果屋は開店準備中。(慌ただしい中、すみません。)
ベッドフォードの青果屋。
「おはようございます。」
「ごめんくださーい。」
武雄とアリスが店に入って奥に向かって声を少し大きめに出している。
「は~い・・・あら?キタミザト様、アリス様、おはようございます。
お早いですね。」
ベッドフォードの奥さんが奥からやってくる。
「今開店準備中で、新しい樽を持って来ているのですよ。
すみませんが、もう少し待っていてくださいね。」
「いえいえ、いきなり来たので落ち着くまで待ちますよ。
あ、オレンジ物色して良いですか?」
「ええ、今並び終えたばかりの新鮮なのよ。
ミア殿が居るんだから美味しいの買って行ってね。
私はちょっと他のを出すんで選び終わったら奥で待っていてください。」
ベッドフォードの奥さんが他の作業をしだす。
「はい、すみません。
帰り際に選ぶので、奥に居ます。」
武雄とアリスは店の奥で待つことにするのだった。
・・
・
店の奥にて。
武雄が魔王国一行がこっちに来ることをまず伝えていた。
「そうか・・・来るのか・・・」
ベッドフォードが少し嫌な顔をされながら呟く。
「あれ?その顔は知っていましたか?」
「魔王国とその隣の国家の重鎮が来ているとラルフから聞いたよ。」
「情報早いですね。」
「毎日顔を合わせているんだ。
すぐに知れ渡るのは当然だろう。
それとラルフが愚痴ってたぞ?」
「私、何も関与していませんけどね。
愚痴を言う程度ならとりあえずその場は凌げたんでしょうから大丈夫でしょう。」
武雄が気にもしないで言い放つ。
「キタミザト様を巻き込むとか言っていたが?」
「ん~・・・まぁ、言われてから悩む事にします。
こちらからああだ、こうだと動く事でもないでしょうしね。」
「良いのか?」
「問題ないんじゃないですかね?
こちらが売りたいという思わせぶりな態度を取ると足元を見られかねませんし、事実、ラルフさんが私に一旦、投げるのなら私は思わせ振りな態度なり言動をすれば良いと考えますね。
この場合私が出来る出来ないは別としますが。
まぁ、その間にラルフさんが見積もりでも作るんじゃないですか?
最終的にはラルフさんの気持ち次第でしょうね。」
「キタミザト様も投げ返すんだな。」
ベッドフォードが呆れながら言う。
「実際に何を揉めているかはわかりませんが、私を巻き込むというなら私が作らせた商品の輸出か技術供与でしょうね。
私は許可を出すだけですから後は勝手にやってくれるでしょう。
ラルフさんなら落とし処はわかっているでしょう。」
「随分と信頼している事で。」
「それだけ話し合っていますしね。
同じくらい大将も信頼していますよ。
まぁまだ始めたばかりですからそこまで信頼を置いたらいけないのかもしれませんが、頼りにはしています。」
武雄がにこやかに言う。
「はぁ・・・その言葉だけでどれだけ皆が苦労しているんだか・・・
で、魔王国の一行が来たらどうすれば良いんですかね?」
「大量に欲しいならキタミザト家を通しての輸入でしょう。
あくまでも大将が生産出来たならですけどね。
それに小樽なら普通に売れば良いと思いますよ、普通にお買い物でしょうし。
なので、基本的に決めるのは大将側にあります。」
「・・・なら、大量ならキタミザト家を通してくれと頼んでみる事にしよう。」
「その方向でお願いします。
今日の夕方に魔王国一行と打ち合わせでしてね。
その際に言ってくるでしょうね。」
「・・・すぐに結果がわかるという事か。」
「そういう事ではありませんが・・・ま、結果そうですね。」
「はぁ・・・大丈夫だろうか。」
「平気ですよ。
暴れるような方々ではないですし、私に振ってくれればこっちに要請をしてくるだけですしね。
・・・一応、聞いておきますが、ウスターソースと中濃の生産と販売状況はどうでしょうか。」
「嬉しい事にどちらも毎日完売だ。」
「・・・余らないのですか?」
「今の所、余るという事はないな。
1日何樽と決めて今は作っているからなぁ。
それに人手もまだまだ足らない。
近所の母ちゃん連中を雇ってはいるが、守秘義務契約が凄くてな。
契約の中身を聞いて半分は辞退する事態になっているんだ。」
「まぁ、ウスターソースの製造方法が漏れるのはうちの領内だけでなく第1皇子一家の方にも迷惑かけそうですしね。」
「あぁ、だから文官連中がこれでもかと守秘項目を作っている。
まぁ人前で工場内の事は話さない、知人や家族にも製造方法は話さない、自宅で試さない等々、当たり前と言えば当たり前の事なんだがな。」
「それが出来ないから契約という形が成り立ってしまうのですよ。」
「その通りだなぁ。
キタミザト様、増産はまだまだ無理だと思う。
野菜もやっと定数を毎日購入する契約を各地と結べたんだ、ここでこっちに分けてくれとは言えない。
いくら昔から知っている馴染が多いとは言ってもな。」
「そうですか・・・では、やはり輸出の話になったらこっちで対応するので回して結構です。」
「おっ何とかしてくれるのか?」
「ええ、調整します。
まぁ話し合ってから決めますけど。
人手不足と材料をこれ以上買わないという事は工場自体に空きスペースはあるのですか?」
「あぁ、あるぞ。
最初の文官達との話し合いの時に将来を見据えて大きく取ったんだ。」
「・・・そうですか。
これからいろいろ大変でしょうけど、品質だけは落とさないでくださいね。」
「わかっているよ。」
「そうですか・・・これからもよろしくお願いします。
では、頑張ってくださいね。
あまり邪魔してはいけませんからおいとまします。
アリス、行きましょうか。」
「はい、タケオ様。」
「お、じゃあ、お見送りしよう。」
武雄が立つとアリスも席を立ち、店の方に向かっていくのだった。
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