第1889話 212日目 動き出そう。(何かを感づいていますか?)
朝のエルヴィス伯爵邸の厨房。
「えーっと・・・今日のお客様が来るから朝これだけ買ってくるようにすれば良いのか?」
「料理長、お客様用の食器出し終わりました。」
メイド長が準備完了と言ってくる。
「ああ、ご苦労さん・・・お茶は濃い目として・・・小豆はもう火にかけたし、要望通りに出来たてが出せるだろうな。
・・・だが、これだけでは終わらないだろうなぁ・・・ん~・・・小さめのサンドイッチを作るか。
甘い後にサンドイッチは無謀か。
かりんとうでは音が出るしなぁ・・・ん~・・・プリンかぁ?
むしろプリンが先でこし餡が後の方が良いのか?」
料理長は悩むのだった。
武雄とアリスの寝室。
「あ゛ぁっ!!」
武雄は背中への強烈な刺激で目覚める。
武雄は気を抜いていたつもりはないが、食らわされたのであるなら抜けていたのだろう。
アリスに背を向けて寝ていたようで武雄の背中に膝蹴りがかまされていた。
当のアリスはそのまま武雄の背にピタッとくっ付きスヤスヤ寝ている。
武雄は「体を鍛えるとかの話なんでしょうか・・・」とケアをかけながら思うのだった。
・・・
・・
・
「タケオ様、朝食後に出かけるのですか?」
アリスが着替えながら聞いてくる。
「ええ、ベッドフォードさんの所に寄ってからベルテ一家と研究所に行って帰宅ですね。
たまには一緒に散歩しますか?」
「え?・・・はい!行きます!
散歩♪散歩♪」
アリスが今着た物を脱いで新しい服を探し始める。
「まぁ1人で大変だったろうしね。」
武雄がアリスの後ろ姿を見ながら呟くのだった。
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シモーナ一行が泊まる宿の向かいのレストラン。
「と、いう訳で6時課の鐘が過ぎたら集合してください。
9時課の鐘の前にご訪問をします。」
「わかったさね。
とうとう会えるのね・・・」
シモーナが思いつめたような顔をさせながら頷く。
「・・・ヴィクターさん、なんでそんなに中途半端な時なんですか?
9時課の鐘で良いんじゃないのですか?」
ヴァレーリが聞いてくる。
「・・・そうですね。
ですが、伯爵様のご予定によりこの時間になります。
多少前後しても良いので私がご案内します。」
ヴィクターが「流石に懐中時計は興味を持たれると困る」とぼやかしながら言う。
「まぁ向こうの予定がそうならそうするしかないですけども。
カールラ、どこ行きますか?」
「6時課の鐘の際にここで昼食取れば良いんでしょ?
雑貨屋に行ってこの国の国民の質を観ようか?」
「昨日の酒場の感じだと代り映えはしないと思いますが、昨日の仕立て屋の感じだと珍しい物があるかもしれないですね。
あ!ウスターソースの販売店に行きましょうか?」
ヴァレーリが思いつく。
「・・・」
その言葉にヴィクターは何も反応はしない。
「でも、あれってキタミザト殿の輸出品目でしょう?
私達買い付け出来るのですかね?」
「土産程度なら問題はないでしょう。
今日、予約するといつ出来るのか聞いて、それまで滞在して買って帰りましょう。」
「・・・待って、ダニエラ、予約ってなに?」
「え?樽で買って帰ろうかと。」
「いや~、それ無理じゃない?」
「それは・・・聞かないとわからないでしょう?
ヴィクター、お店はいつから開くのですか?」
「3時課の鐘が過ぎてからですね。
6時課の鐘に近い時間に開きます。」
「うん、そうですか。
カールラ、行ってみましょう。」
「はーい、わかった。
シモーナさんはどうしますか?」
「私達も行ってみます。」
シモーナを含め護衛達も頷く。
「そうですか・・・店が開く前に並ぶのは失礼ですからね。
私が開いたのを確認してからお迎えにあがります。」
ヴィクターが言う。
「はい、わかりました。
で、ヴィクター、『時間』ってなんですか?」
ヴァレーリがにこやかに聞いてくる。
「失礼いたしました。
時間とは鐘の別の言い方です。
主や伯爵様が好んで使われるのでそう言ってしまいました。」
「その時間とはどうやって表すんですか?」
ヴァレーリが言ってくる。
「表す・・・とは?」
「興味があります。
3時課の鐘、6時課の鐘で済ましているのが普通なのにそこに『時間』という変な言葉をこの地の最上位である子爵家と伯爵家は使っているんですよね?
という事は新しい何か基準を作ったという事なんじゃないのですか?」
「なるほど、確かにそう言えなくもないですが、世の中は鐘の音で動いているのです。
そこに自分達がわかりやすいようにしているだけで、まだ領民達に知らせようとかは思っていないのです。
まぁこれからという所でしょう。
なので、ダニエラ様が気にされるような物があったとしてもまだ正式にどうこうするような事ではなく自分達のみで使っているだけとなります。」
「ふーん、そうですか・・・ふーん。
まぁ、とりあえずウスターソースの販売所に行ってみましょうか。」
「はい、では、主や伯爵様に報告してからお店を確認してお迎えにあがります。
私は一旦、離れますが、宿に居てください。」
「「「はーい。」」」
皆が返事をするのだった。
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