第1885話 協力業者の情報網。(ラルフさん、本気を出す。)
ブルックとアーキンはというとヴァレーリ一行と同じ店に入って監視をしながら軽く夕食を取っていた。
「・・・ねぇ、あっち今日も宴会しているよ?」
「そのようだな。
・・・あの勢いで飲むのは凄いな。」
「2日目にして昨日より量を増やしているし。」
「まぁ笑い声も聞こえるから街中で問題はなかったんだろう。
・・・まぁ俺らは諸先輩方のように周りの警護じゃないから楽ではあるが。」
「うん、あの一行が宿に戻ったら研究所の詰め所に集合でしょう?
ワイン数本買って帰ろうか。」
「そうだな。
ヴィクター殿も2時間くらいで終わらせるだろうしな。」
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エルヴィス邸がある街の酒場。(ヴァレーリ一行とは違う店)
いつもの酒場にいつものメンバーが居た。
「朗報です。」
ラルフが1杯を思いっきり飲んでから暗い表情で皆に言う。
「え・・・ラルフさん、その表情で何言っているんですか?」
モニカが心配そうに聞く。
「また仕事が来たという事ですね、ほほほ。」
ローがにこやかに言う。
「ん?朗報ってなんだ?」
ベッドフォードが聞いてくる。
「今日、魔王国・・・いや魔王国の輸出入業の方とその隣のブリアーニ王国の特使様が来店されました。
魔王国の方は問題なく交渉が進みそうです。」
「へぇ~、本格的に魔王国相手に商売するんだ。
キタミザト様言っていたしね。
それでどうしたんですか?」
「・・・ブリアーニ王国の特使様がトレンチコートの変な数を注文されようとしましたのでお断りしました。」
「・・・断ったんですか?」
「ええ、断らざるを得ない状況でしたね。
ヴィクター殿が付き添われていましたが・・・あれは向こうで私の所で作っているトレンチコートやダウンジャケットを作る事を許可させる気でいるのはわかるのですが・・・些か強引なお客様でしたね。
キタミザト様の名を出して今日の決着はさせませんでしたが。
あれはこの地に視察に来たブリアーニ王国の重鎮です。
一気に買い付けに来られますから注意が必要です。」
ラルフが暗い表情で言う、その顔には「キタミザト様!何したの!」とありありと表現されている。
「ん~・・・明日は違う所を見るのかな?
まぁ・・・うちは将棋とかの玩具かなぁ?
黒板は良いにしてもチョークは他領では作らせられないしね。」
モニカが考える。
「・・・」
ベッドフォードが自身のグラスを凝視しながら固まっている。
「ベッドフォード、どうしたのですか?
お腹でも痛いのですか?ほほほ。」
「ローの爺さん、これ俺らの所が問題だぞ。
確かキタミザト様は前回ウスターソースとウォルトウィスキーを魔王国に送っている。」
「ほほほ、私は問題ないですよ。
あれはキタミザト様が取りまとめて魔王国に輸出している商品ですからね。
キタミザト様に一任すれば良いだけですし、ウォルトウィスキー自体はワイナリーが作っている物ですぐに増産が出来ないのは知っているでしょう。」
「くっ・・・なら俺もキタミザト様に押し付けるか。」
「ほほほ、ベッドフォードは自身で製造工場を持っているんですからね。
増産も意のまま、要請が来てもおかしくはないですね。」
「勘弁してくれ・・・やっとこの街分の生産が軌道に乗りそうだというのに・・・
良し!俺の所に来たなら一旦、キタミザト様に投げる事にする!」
「ほほほ、その意気ですよ。」
ベッドフォードとローが話し合っている。
「キャロルさん、私らは問題ないですね。」
「ええ、私達は他国相手にするような商売はしていませんからね。
今は領内向けの仕事に邁進しましょう。」
ローチとキャロルが我関せずに飲んでいる。
「キャロルさん!」
「おぉう?どうした?」
キャロルの前にラルフがドンと両肘をついて項垂れている。
「・・・ミシン13台追加でお願いします。」
「え?・・・この間、10台を入れたのにか?」
「はい・・・増産します。
トレンチコートはエルヴィス伯爵家、ゴドウィン伯爵家、ウィリアム殿下、第1騎士団、ニール殿下に引き続き、今度は第2騎士団と王都守備隊からも来ています。
さらにダウンジャケットとダウンベストの王都から問い合わせが予想以上に良いのです。
内々ではありますが、キタミザト家からは70着ずつの正式注文を頂いています。
そこに魔王国向けの少数の輸出が決まりそうです。
なので、組合としても月の生産量の増産を決定しました。」
「今が踏ん張り時か・・・」
「はい、13台の購入をし従業員の教育が終われば生産量が今の倍は行けます。
敷地も問題ないですし・・・個々の作業効率だけでなく生産の工程の流れの見直しが出来れば・・・2.2倍は良くなるはずです。
あとは従業員の確保が問題ですが・・・」
「ベッドフォードのご近所の婦人方を短時間雇い入れるというのをしたらどうだ?
裁縫工場なら子育てが終わった女性陣が応募してきそうだが。」
「ん~・・・流れ作業をしているので短時間というのは難しいのですよね。
1日を3つに分けるとかして1日中操業とかした方が良いのでしょうかね。」
「それはそれで大変そうだな。
深夜の作業では費用もかかるが集中力が昼間よりも少なくなってしまいそうだし、やる本人達も健康面が不安になるだろう。」
「ん~・・・なら3班に分けて朝から昼過ぎ、夕方から夜までと休暇の3交代制で朝から夜まで工場を稼働をさせますかね。」
「それは・・・一度、文官方に聞いて従業員とも話合いが必要だな。」
「そうですね。
ですが、やり方はいろいろあるのでしょうね。」
キャロルとラルフが話し合うのだった。
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