第1878話 210日目 飲みだ。(ヴァレーリとヴィクターのお話合い。)
エルヴィス伯爵邸がある街の酒場。
「おおおお♪これは良い!」
「ん~♪これも良いわ♪」
ヴァレーリとブリアーニがピザを頬張りながら堪能している。
「・・・おい・・・なんだこの大きさは。」
「それも4枚も頼んで・・・」
護衛達のテーブルには巨大なピザが4個も鎮座している。
「「あははは。」」
頼んだ者達はまさかこの大きさが来るとは思わず笑うしかない。
「兄さん、これ良いさね。」
「あぁ、美味いな。
だが、他の店はまた違う味を出しているぞ。」
「それは凄いさね。
全部を食べきれるだろうかね?」
「全てを食べてから帰れば良いだけだな。
さて・・・ダニエラ様の手酌は危険そうだ。」
ヴィクターが席を立ち仕事を始めるのだった。
・・
・
「あー!ヴィクター!酒ぇ!」
ヴィクターがヴァレーリの酒を取り上げていた。
「はいはい、ダニエラ様、お目付け役の方が居ないからといって飲みすぎです。
店の酒を全て飲むおつもりですか?」
「その!目付け役が!居ない!から!飲んでいるのだっ!」
ヴァレーリがヴィクターから酒を奪おうとしているがヒョイヒョイとヴィクターが避けている。
「そうよ~。ダニエラ、酒は嗜むのが良いのに。
何本空けているの~?」
ほろ酔いのブリアーニが言ってくる。
「まだまだ!始まった!ばかりだ!
今日は夜通し飲むんだ!」
「ダメに決まっています。
ほら、シモーナも酔いつぶれて寝ておりますし、護衛の方々ももう終わりの体ですよ。
今日は宿に戻りましょう。」
ヴィクターがヴァレーリの奪取する為の攻撃を躱しながら言う。
「ん?・・・何だ貴様ら!弱いにも程があるだろうが!
どんなに酒を飲んでも仕事が出来るようにしろと言っているだろうが!」
ヴァレーリは周りを見回してシモーナが寝ている事を確認してから言い放つ。
「まぁ皆がこうなっては仕方ありませんね。
今日はおしまいです。」
ヴィクターが言い放つ。
「ヴィクターぁ~・・・・」
ヴァレーリが弱々しく言ってくる。
「しょうがありませんね・・・最後に何を飲みますか?」
「じゃあ白を1本、安いので良い。」
「・・・締めに本数で頼むのは違いますね。
1杯を頼むのですよ。」
「え!?」
「え?」
ヴァレーリとヴィクターはお互いに「何言ってるの?」という顔をさせあう。
「ダニエラ、諦めなよ~。
また明日飲めば良いじゃない。」
「う~・・・仕方ない。
我らは客だったな、ヴィクターに従おう。」
ヴァレーリが諦めながら言う。
「最後に頼みますか?」
「いや、良い。
このまま飲んでもさっきと同じ事を繰り返すだけだ。
その代わりお持ち帰りはしよう。
カールラ、どれが良い?」
「ん~・・・ブランデーがあるね、これ♪」
カールラがメニューを指す。
「じゃ、カールラと我に1本ずつだな。
護衛達には白を1本ずつ用意してくれ。
ヴィクター、会計をしてきてくれ。」
そう言ってヴァレーリが懐から革袋を取り出すのだった。
・・
・
ヴァレーリ一行の帰り道。
「なぁ・・・ヴィクター、今楽しいか?」
ヴァレーリがシモーナを背負いながら横を歩くヴィクターに聞く。
「やりがいがありますね。
娘とは離れていますが、私も娘も自由に行動させて頂ける主に仕えて満足しております。」
「そうか・・・なら良い。
そういえば奥方は?」
「輸送船で。」
「・・・そうか、残念だったな。」
「はい、良い妻でした。
娘は成長すれば妻に似るのだろうとは思います。」
「奥方には2度会ったか。
美人だったと記憶している。」
「記憶に残っておいででしたか、勿体ないお言葉です。」
「あ!そう言えば、あれほどの美人がファロン伯爵領には多く居るという噂が出てな、王軍の独身どもが色めき立っていた事があったな。」
「王軍の方はあまりお越しにならなかったと思いますが。」
「ははは、我が折檻してやったからな。
『我以外の美人に見とれるな』とな!」
ヴァレーリが悪い笑顔をヴィクターに向ける。
「はい、ダニエラ様も美人でございます。」
ヴィクターが静かに頷く。
「むぅ・・・そこは『何をしているんですか』と呆れて貰わねばならぬのだがな。
美人の娘か・・・まぁ実際に我は子を作る前に始祖にされてしまったからな。
自身の子を持つというのは羨ましい限りだ。」
「そこは心残りなのですね?」
「心残りというか・・・体験した事ない事に祝辞を言うのに違和感がな。
子をなす事は素晴らしい事だし、心から祝福しているつもりだが、本当にその言葉に重みがあるのか我にはわからんのだ。
養子をと言われたこともあるが・・・兵士教育はしてやれるが、子育てとは違うだろう?」
「全く違いますね。」
「難しいものだな。
娘の婿はどうするんだ?」
「本人に任せております。」
「ヴィクターは婿に厳しそうだなぁ。
娘も難儀な事だ。」
「私よりも主とアリス様が面接すると言い張ってきそうです。」
「はは、キタミザト殿なら言いそうだ。
気にかけられるというのは鬱陶しいものだが、ありがたい事でもある。
ヴィクター、良い主に巡り合えたな。」
「はい、私も娘も・・・主に雇用されている全員が家族を含めて気にかけて頂いております。」
「良い組織だ。
と・・・おーい、カールラ、ツマミどうする?」
ヴァレーリが後ろのブリアーニに声をかける。
「ん~?適当に買って帰ろうか。」
寄り道が決定するのだった。
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