第1874話 到着。(あ、シモーナさん一応手紙出したんだね。)
エルヴィス伯爵邸がある街の城門。
「・・・」
魔王国一行が城門を見上げながら受付順番が来るのを待っている。
「高すぎず低すぎず・・・魔物から守るのに適している城壁だな。
この高さなら維持費もそこまで圧迫していないだろう。」
「我が国と事を構えるのにしては些か堅強さがありませんね。」
「ここまで攻め入った時はもう既に主力は破れているのだろう・・・堅強にしても守り手がいないのであれば意味はなし、ゴブリンやオーク、狼等の魔物相手なら守るのに適した高さとなるか。
戦争以外の日常の警備に適した物を用意したと捉えるべきだな。」
「維持費と実務性ですね。
石組みも上手に作っていますし、城壁の維持も的確にしているようです。
壊れた所がぱっと見当たりません。」
「領内運営がバランスよく出来ているという事だな。
この地の者達は堅実な運営をしているという事だ。」
護衛達が評価している。
「・・・ねぇ、ダニエラさん。」
シモーナがヴァレーリに聞いてくる。
「なんですか?シモーナさん。」
「いえ・・・戦争するのですか?」
「ここまで攻め入る事は企画案にすらならない事ですよ。
皆はただ単に他国の領主が居る街が珍しいだけです。
それにもし魔王国側から本格侵攻を実施した場合、街を囲んだ後、第4軍のワイバーン部隊が突入し、城門を開けますからね。
城壁なんてそこまで意味はありません。」
「・・・魔王国は強いのですね。」
「精兵を揃えていますよ。
まぁ・・・カールラ達ブリアーニ王国がとなると、この門は辛いでしょうけど。」
ヴァレーリがブリアーニに言う。
「私達が他領地を求めはしませんよ。
アズパール王国のエルヴィス伯爵領は大事な取引先に今後なる予定なんですよ?
その相手の地を奪う訳にはいきませんよ。」
「我が国もそうなって欲しい物ですね。
そういえばカールラの所も城門は高めでしたね?」
「うちは木で城門や城壁を作っているけどね。
魔王国相手に石造りの城壁構えても意味ないのはわかっているし、蟲と魔物ぐらいであれば補修も簡単な木造の方が良いと考えてね。
蟲や魔物は火を使わないし、木造で十分よ。」
「ふむ・・・ま、木の方が良い面もあるか・・・ありますね。
シモーナさんはどう思いますか?」
「ファロン子爵領は木造ですね。
こっちは石造り、門や城壁のみで見ればこっちの方が強固なんでしょうね。
圧迫感があって住み辛そうではありますけど。」
「ふむ・・・ですけど、見た感じ城壁は4kmか5km程度でしょう。
高さも・・・9・・・10mはあるでしょうね。
この高さなら街の中心に行けば城壁はあまり圧迫感がなく問題ないのではないですかね?」
「なるほど、そうか・・・も・・・」
シモーナが何かに気付き言葉を止め少し驚いている。
「ん?シモーナさん、どうしました・・・ん?」
シモーナが驚いている方にヴァレーリも顔を向けるとヴィクターがクゥを抱えてこちらに向かって来ていた。
「・・・ん~・・・や、ヴィクター、よろしく頼むよ。」
ヴァレーリが軽く悩んだ末に軽く挨拶をする。
「はぁ・・・ダニエラ様、ようこそおいでくださいました。
カールラ様もようこそエルヴィス伯爵領に。」
「ええ・・・貴方は確か・・・」
ブリアーニが首を傾げ考えながら聞いてくる。
「あ、これは失礼いたしました。
キタミザト子爵家の家令を務めております、ヴィクターと申します。」
ヴィクターが恭しく礼をする。
「え・・・ダニエラ・・・」
「うん?キタミザト家の家令と名乗ったのですから出て来てくれて何よりという事でしょう。」
ブリアーニが「お宅の元伯爵だよね?」と目で訴えかけるがヴァレーリは気にもしていない。
ちなみに大隊長と中隊長のソルミが何か言いたげな視線をヴァレーリに向けるがヴァレーリが何も言わないのでぐっと堪えている。
「で・・・シモーナ、お前手紙遅いぞ?」
ヴィクターが御者台に居るシモーナに言う。
「ちゃんと送ったさね?」
「普通に商隊に乗せるな。
今日届いたぞ?」
「・・・ダニエラさん達がね、それで良いと言ったさね。
私も別に急いでなかったし、納品のみだから問題ないでしょう?」
「はぁ・・・ダニエラ様とカールラ様は陛下と女王陛下の侍女だぞ?
接待しないといけないと思わないのか?」
「・・・ダニエラさんもカールラさんも『接待いらね』って言ったさね。
何度も聞き返したけど『自由にしたいからお忍びで』と言われれば私は何も出来ないさね。」
ヴィクターとシモーナが兄妹で言い合っている。
そのやりとりを見ながら魔王国一行がヴァレーリの下に集まる。
「ダニエラ、説明をお願い。」
「ファロンはな、ある夜、就寝して起きたら船の上、そしてウィリプ連合国に連れて行かれて奴隷になってキタミザト殿にカトランダ帝国で買われたんだよ。
キタミザト殿がファロンに聞き取りをして、キタミザト殿からは我に手紙で教えて貰っているし、前回ファロンには直接会って少し話をしている。
前回の東町の時に近くに居たがカールラは気が付かなかったか?」
ヴァレーリが簡単に説明する。
「「「!?」」」
ヴァレーリ以外の皆が驚くのだった。
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