第1873話 210日目 当日。(アリスとコノハ、テトとニオ。)
昼前のエルヴィス伯爵邸の客間。
「・・・無事終わったかな?」
アリスが外を見ながら呟く。
エルヴィス爺さんはレシピの公表がされる会場をこっそりと覗きに行った。
もちろんフレデリックには了承を取ってだが。
「アリス、皆に名前の件は連絡してあるし、服装もこの間と同じにすることになったから。
アリス達が迷わないようにね。」
「ええ、それはわかりましたが・・・この地に居る全精霊がするのですか?」
「するわよ~♪
少なくとも魔王国の一行が居る間はね。
それよりニオはサングラスとキャペリンハットを用意するとか言ってたけど・・・
あの濃さでサングラスは怖いわよね。」
「サングラス・・・とはなんですか?」
「メガネのレンズが暗い色になっているのよ。
そうする事で日からの光を目に届き辛くさせて目を疲れにくくさせる・・・かな?
夏場の日差しが強い時の外出時に付けると目が疲れづらいわよ。」
「作れそうですか?」
「ん~・・・要はガラスに色を入れるんだけど・・・濃過ぎず薄過ぎずで良い加減を見つけないといけないのよ。
それって相当大変だと思うわ。」
「ふ~ん、そうなんですね。」
「アリスもタケオを倣って色々挑戦してみたら?
化粧品はアロエを探しに行ってからでしょう?
衣服は・・・無理そうだから。」
「いや、コノハ、無理と言わないでよ。」
「裁縫の出来が・・・あ!ちゃんと練習やってる?
ジェシーが万が一来た時は確認されちゃうわよ?」
「少しずつは・・・やっています。」
アリスがぎこちなく答える。
「私はアリスが裁縫しているのを戻ってから見た事ないけどね。」
コノハが呆れながら言う。
「・・・明日からやります。」
「今日からやりなさい。
ま、アリスは寝る前にでも裁縫の練習しなさいね。」
「向き不向きがあると思うのよ。」
「・・・・努力していない人から専ら聞く言葉ね。
大丈夫よ、世の不器用さんでも最低限の裁縫は努力すれば出来るんだからアリスも出来るわ。」
「運動は得意なんだけどなぁ。」
「裁縫が上手いと運動神経が良いのなら世のお母さん方は皆歴戦の戦士になっちゃうわね。
要は慣れよ。
さて・・・各精霊が要所に居るから大丈夫だと思うけど・・・」
「今日はスズネさんステノ技研でしたか?」
「うん、テイラーと一緒に居る事にしているわ。
テトの監視でニオが控えているし、問題は起きないんじゃないかな?
それとうーちゃんとだーちゃんはベルテ一家の護衛しているし、ここは私とスーね。
・・・戦力的に私達が一番弱いわね。
アリス、頼んだわよ?」
「なんでしょうね・・・精霊から戦闘を任せれられる人間というのも不思議な気分ですよ。」
「しょうがないじゃない、私戦闘からきしだもん。
スーも直接戦闘というのとは違うし。
だーちゃんやテトちゃんには敵わないわ。」
「はぁ・・・とりあえず、ショートソードでも近くに置いておきますかね。」
「バスタードソードで良いんじゃない?」
「あれを屋敷内で持ち歩く令嬢ってどう思います?」
「アリスらしいで済みそうね。」
「・・・かもね。」
アリスが「おや?怒られる気がしない」と自分でも納得してしまうのだった。
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テイラーの魔法具商店のカウンター。
スーツ姿のテトがカウンターに座り、Yシャツで腕まくりをしてサングラスをかけているニオがカウンター内で食器を洗っている。
「・・・ねぇ、ニオ。」
「うむ、どうだ?
紅茶を作ってみたんだが。」
「いや・・・まぁ意外と美味しいわね。
じゃなくて・・・なんで私腰に紐が括られているの?」
「うん?半径5m以上は動けないようにしたんだが?」
「私犬じゃないんだけど。」
「いやいや、タローマティ殿がくるのだろう?
このぐらいしても罰は当たらんだろう。」
「いや、罰とかではなくて・・・なんで紐が私に括られているか、よ。」
「いや、いきなり飛び出していきそうだからだが。」
「私狂犬じゃないし。」
「・・・その横に立てかけてあるのは?」
「ステノ技研製大剣!
昨日出来たばかりの新作!新品!
魔法刻印をこれでもかと入れたすっごい大剣!・・・の予定。」
「試し斬りはしていないのか?」
「今日する予定だったの。
刃こぼれやメンテナンスフリーにするために強化を入れて、打ち合った際や斬った際に刀身の刃の部分から炎が出るようにしてくれているし、切れ味も出るように任意で刀身が高速微振動するようになっているし!」
「待て。
テト、高速微振動だと?
超音波振動メスではなく?」
「え?うん、何かスズネの弟が昔テレビのアニメ?で見ていたのを一緒に見ていたとか言ってたよ。
流石に再現は出来なかったみたいでスズネが『あれ?思っていたのと違う』とか言っていたけど。」
「・・・テト、それは人間でも使えるのか?」
「無理かなぁ。
戦闘中はタケオの拳銃のように常時魔力を供給していないといけないしね。」
「どのくらいだ?」
「振動状態で構えるだけで魔力を500使用かな。
1分ごとに100くらいは持って行かれている感じ。」
「タケオの拳銃も呪われ系と言ったがテトのもそう言われそうだな。」
「人間じゃ扱いきれないかもね。」
「まぁ・・・とりあえず、テトはその剣をしまってこようか。
危ないからな。」
「危なくないし!」
「万が一がある、しまってくるのだ。」
「・・・はーい。」
テトがトボトボと大剣を持って奥に向かう。
「うっ・・・ニオ、紐取って。」
「あぁ!そうだったな。
良し、端は持ったぞ。
さ、部屋に行こうか。」
「犬じゃないよ~。」
テトが再びトボトボと歩くのだった。
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