第1872話 209日目 あと1日。(レシピとお客が同日とはね。)
お昼過ぎのエルヴィス伯爵邸の客間。
エルヴィス爺さんとアリスが紫雲と彩雲の報告を受けていた。
紫雲がタケオとの連絡を彩雲が魔王国一行の動向を確認していた。
「ふむ・・・タケオの到着は今日も含めて3日後の昼から夕刻とな。」
「そして、魔王国一行が東町を出立ですか。」
「「はっ!」」
紫雲と彩雲が返事をする。
「縮めては来たがそれでも1日か・・・まぁ致し方ないの。」
「すぐに決断したのはタケオ様らしいですね。」
「うむ・・・明日か・・・
例の卵と鶏肉が明日の公表なのじゃが・・・」
「街中を見ると皆が期待していて延期は出来なそうです。」
「ヴィクターには頑張って貰おうかの。
それと公表するレシピは卵はプリンと茶碗蒸しのやり方と鶏肉は数個なのじゃが・・・」
「卵は・・・はぁ・・・前回同様に店頭から無くなるんでしょうね。
プリンにはそのぐらい威力がありますよね。」
「元々少ないのじゃがの・・・しかしそればかりはなんとも言えんの。
・・・どんな料理が作り出されるのか楽しみじゃ。」
「今頃経済局は大忙しでしょうね。」
「そうじゃの。
明日の公表の事前演習だったの。」
「先ほどフレデリックが言っておりましたが・・・どうなるのでしょうか。」
「ふむ・・・前回のパンがああなったからのぉ・・・ま、無くなるじゃろうの。」
「鶏肉の流通量が増えて価格が少し下がるのは良い事ですよね。」
「そうじゃの。
ただ、オークに比べて脂が少ないからの。
街中でどれだけ流行るかは見通せないの。
料理長がソテーや煮込み、トリカツのレシピをとは言っておったが、目新しくはないの。」
「トリカツは流行ると思うのですよね。」
「確かにの。
鶏ならチキンソースカツ丼は良かったの。
そう言えば、料理長がタケオが戻ってくる前に卵と鶏肉で丼のレシピを作るとか言っておったの。」
「言ってましたね・・・試作私達に来ませんね。
米なら何でも合いそうなのですけど。」
「来ないという事は何かしら失敗しているのじゃろう。
コノハ殿、何か聞いておるかの?」
「何も聞いてないけど・・・卵と鶏肉なら親子丼かな?
でも自分達で考えたいんじゃないかな?
伯爵、私の方はいつでも相談に来て良いと言っておいて。」
チビコノハがアリスの肩に実体化しながら答える。
「ふむ・・・伝えておこうかの。
今日はアリスはどうするのじゃ?」
「私は研究所に行ってきます。」
「ふむ、何かあったのかの?」
「いえ、魔王国の陛下とブリアーニ王国の女王ですので、今一度この地の精霊達で打ち合わせしたいそうなので。
コノハが招集をかけたんです。」
「そうか・・・アリスもコノハ殿も気を付けて行くようにの。」
「「はい。」」
アリスとコノハが返事をするのだった。
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馬車での移動中の武雄はというと。
「「・・・」」
マイヤーと武雄が馬車から外を見ながら揺られていた。
「・・・マイヤーさん、馬車って過酷なんですね。」
「・・・そうですね。
おかしいですね、もっとのんびりと、おっと・・・もっとのんびりと移動するのが馬車だと思っておりました。」
そう、馬車が壮大に揺れるのだ。
なので中に乗っている2名はケアを小まめにかけて酔いを抑えているような状態だった。
実際に効くのかと言われると微妙な回復をするのだが、しないよりかはした方が楽なので武雄は自身の特性を生かして連呼しっぱなしでケアをかけている。
「こんなに揺れると馬車の足回りの改造は必要だと思ってしまいますね。」
「ですが、どこの馬車も基本同じ構造です。
板を重ねて衝撃を和らげていますね。」
「木の板バネかぁ・・・圧縮コイルバネがあればなぁ・・・」
「圧縮・・・コイルですか?」
「ええ、太い鉄線をグルグル巻いてね。
力を加えても元に戻るようにするんですよ。」
「板バネよりも小さく出来るし、反発力も板バネに比べれば滑らかになるので作りたいですけど・・・」
「けど?」
「確か作るのが面倒なんですよね・・・
溶解した鉄が固まる前にバネの太さの穴に押し込んでひねり出しながら、熱いうちにグルグル巻いていくんですよ。」
「・・・溶解した鉄って水っぽいですよね。」
「少し冷めればドロッとするでしょう?」
「・・・温度どうやって維持するんでしょうか・・・
それよりも冷め始めれば硬くて穴から出なくなるんじゃないですか?」
「ええ、だから後ろから押して強引に穴を通すのですけどね・・・」
「所長・・・熱い鉄を押すなんて・・・それは難しいですね。」
マイヤーが考えながら言う。
「ええ、面倒ですね。
それに・・・誰もやりたがらないでしょうね。
何個かの為にやったら採算合わなそうですし。」
「まぁ・・・需要はありそうですけど。
すぐにはないでしょうからね。」
「そのうち・・・お金貯まったら試作するかなぁ。」
「その頃まで所長が覚えていたら良いのですが。」
「まぁ・・・思い出すようにしますよ。
で・・・ビエラ豪快に寝ていますね。」
「ドラゴンはこの揺れでも起きない物なのですね。」
武雄とマイヤーはビエラの強靭さを垣間見るのだった。
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