第1871話 女王と陛下。(本当に2人共休暇気分だね。)
エルヴィス家、キタミザト家が混乱している最中。
ヴァレーリ一行は人工湖予定地の横の街道を進んでいた。
御者はシモーナと護衛の1人が担当している。
「お~?なんだか開けている所だな~。」
ヴァレーリが木立が綺麗になくなっている場所を幌馬車の荷台から見ながら言う。
「そうねぇ、何をするのかしら?」
ブリアーニも興味深そうに呟く。
「村を作るのには些か小さい感じでしょうか?
まぁ開拓し始めたというのであればこのぐらいでも良いのでしょうけども。」
「いや、人間にしたらちょうど良い広さなのかもしれません。」
「村でなかったら倉庫でしょうか?」
「こんな所に?
もっと拠点に近くないと意味ないだろう。」
同乗している兵士達も意見を言う。
「微妙な広さの広場か・・・何を考えているかはわからんが、何かをするのはわかるな。
これだけの広さの開拓だと費用も馬鹿にならないだろうし・・・ないでしょうからね。」
「はぁ・・・ダニエラ、そろそろその口調諦めたら?
シモーナさんもわかってるっぽいわよ?」
「何をお言いで?私の口調はこっちが正解です。
いつもは慣れない命令口調で大変なのです、おほほ。」
「うわっ!ダニエラが『おほほ』とか似合わないわ!
似合わないどころか、なんだか気持ち悪い。」
「おい、酷いなカールラ。
カールラこそ、その口調で良いのか?」
「私は公の時と私的な時は分けているからね。
むしろ公の時は『しゃべるな』とか言われるわよ。
国に関するような事は持ち帰るし・・・ 社交辞令くらいしかしゃべらないわね。
ダニエラはどう?」
「公の場では『動くな』、『余計な事はしゃべるな』だとよ。
まったく『王という立場はもっと自由なんじゃないのか?』と最初は思っていた。」
「今は?」
「まぁ国政は王がする物ではなく、皆でする物だという事なんだろうな。
王は追認する為にあるようなものだ。
あとは緊急時の陣頭指揮を執るのが役目なんだろう。
今は平時のはずなのに・・・仕事多いよなぁ。」
「だよねぇ・・・なんで国の最上位なのに書類あんなにあるんだろうね?
毎年同じような事しかしてないのに。」
「不思議だよな・・・例年通りで良いと言っているのに書類が溜まるんだぞ。
まぁ魔王国は各王軍に振り分けているからなんとかなっている感じはあるのだが、カールラの所はどうだ?」
「ん~・・・まぁ何とかなっているというか、何とかして貰っているというか・・・
はぁ・・・でも来年は(領地移動で)大変だからなぁ。」
「あ、そこは頑張れよ。」
「ダニエラ、退官でしょう?
うちに来て短期で働かない?」
「カールラの目の前で菓子を食っているだけならしてやるぞ。」
「そんな仕事ないわよ。
ねぇ、異動って大変そうなのよ。」
「ただの異動ではなく領地替えだ。
領民の大半が移動するんだぞ?忙しいのは当たり前だ。」
「え?ダニエラがまともな事言ってる。」
「カールラ、我だって普通に王なんだぞ?
異動の大変さは想像が付くさ。
ま、何と言われようともやらせるがな。」
「ああ・・・うん・・・はぁ・・・異動したら早々に畑を皆で整備して米の作付けしないとなぁ・・・」
「アズパール王国への輸出か。
ダメそうなら言い訳でもキタミザト殿にするか?」
「そんなの出来るわけないでしょう?
異動の事を言うなら魔王国の真の侵攻目標も言わないといけないのよ?
いくらキタミザト殿が考慮してくれそうとはいっても言えるわけないわ。
それにここで生産量落としたなんて言ったら今後の取引に影響しそうだし・・・
ねぇ、ダニエラ、お願い!
私畑仕事するから書類処理して。」
「なんで女王の書類を他国の王が処理するんだよ。
それはカールラの仕事。
それに退官したばかりで他国で仕事なんて面子的に出来る訳もないしな。
我は旧デムーロ国の処理とパーニとファロンの世話もしてやらんといけないんだぞ?
退官までに終わらせるんだから、退官したての時期に仕事をする気はないない。」
「ダニエラが仕事をするの?」
「当たり前だろう?
カールラ、お前は我をなんだと思っているんだ?」
「簀巻き侍女。」
「黙れ。
あれは息抜きの時だろうが。
それに今回の事は我の発案だ、部下も当然使うが我が処理して道筋を作っておかないといけない事だろう。」
「人員が多いって羨ましいわ。」
「そうはいうが領土が多いとそれなりに大変なんだぞ?」
「贅沢な悩みだと言われそうね。」
「・・・そうだな。
ま、とりあえず今はのんびりと馬車に揺られながら休暇を楽しむしかないだろう。」
「その為の休暇だもんね。」
「確か今日は村までだったか?
今日は何が食べれるんだろうな?」
「村だと大したものはでないかもね~。
ま、それでも他国の料理なら珍しい物か美味しい物がありそうだけどね。」
「それは言えてるな、なぜか他の地で食べる料理は同じ物でも味が良い気がするな。」
「確かにね。
でも・・・エルヴィス伯爵領なら本当に味が違いそうだけどね。」
「だな。
だが、それではそもそも料理が違うという事だと思うんだが?」
「隠し味とソースが違えど料理は同じ?とか。」
「いや、味とソースが違えば違う料理なんじゃないか?」
ブリアーニとヴァレーリが顔を見合わせる。
「答えはエルヴィス伯爵邸がある街にありそうだな。」
「ええ。」
2人が料理を楽しみに休暇を過ごして行く。
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