第1870話 準備のしようがない。(皆が皆混乱中。)
エルヴィス伯爵邸の客間。
エルヴィス爺さんとアリス、フレデリックとヴィクター、初雪が来ていた。
「ヴィクターがこの時間から来るとは珍しいの。」
「伯爵様、失礼いたします。
アリス様、現時点で魔王国側の商隊の方々へ見せられる範囲を列記しましたのでご確認をお願いします。」
ヴィクターがアリスに書類を渡す。
「はーい・・・ん~・・・ベルテ一家を許可しますか。」
アリスが書類を見ながら言う。
「はい、正確にはこちらから見せるというよりも目にして質問されたらとしようかと思います。
ベルテ一家に魔王国側の商隊が来たからと隠れるように要請するのは違うと思いましたので。
それにあの一家には日常通りの行動をさせた方が良いかと思います。」
ヴィクターが言う。
「ん~・・・確かに、ブリアーニ王国の方々も情報を持っているなら現状のベルテ一家を見たいと思うでしょうね。
それでいつもと違うような事をさせていたら何か違和感を感じて不審がられる可能性もありますか。」
「はい、ですが、あくまで質問をされたらとしたいと思います。
出来たら主が戻ってからその辺の話をして欲しいのですが・・・そうも行かない事を想定しておかないといけないと思いました。」
「そうね・・・うん、まぁ皆にはいつも通りの行動をお願いしましょう。
それで・・・ステノ技研と研究所、ローチ工房はダメと言うのはわかりますが・・・ヴィクター、タケオ様を待っている間に商隊の方々は街中歩くわよね?」
「はい、私が付き添わせて頂きます。」
「うん、そこはお願いするのですけど・・・
研究所の1階の喫茶店行きたがらないかしら?」
「それは・・・アリス様、失念しておりました。
確かに街中で領民に一番の店をと聞いた際に喫茶店の名をあげる方もいらっしゃるでしょうね。」
「そうですよね・・・ベルテ一家から誰かしら働いているわね。
問題にならなそうでなりそうな事よね。」
「はい、目について質問があればとしましたが・・・目につきますね、首輪が。」
「それはヴィクターもだし、子供達にも言えるんですけどね。
まぁキタミザト家は大半の従業員が首輪していますが。」
「そこは諦めるしかないじゃろう。
で、どうするのじゃ?」
エルヴィス爺さんがアリスとヴィクターに聞く。
「「・・・」」
「はぁ・・・方策がないならタケオが帰ってくるまで連れて行ってはいかんの。
行きたいならタケオと一緒にさせるほかあるまい。」
「お爺さま、そこはタケオ様に投げるのですね?」
「元々タケオの客だしの。
わしは同席して話を聞くだけの役割なのじゃ。
なので、タケオが帰ってこんことには何も話が出来ぬよ。」
「それを言われてしまうと私もヴィクターも魔王国の方々に何も話せなくなってしまいます。」
「そうじゃの・・・なので、やはり当初の通りヴィクターが街中の散策に同行して近づけなければ良いの。」
「一部の方が私の制止を聞くとは思えませんが?」
「それでもするしかないじゃろう。
試験小隊はどうするのじゃ?」
「念の為に遠巻きでの警護を実施してくれるとの事です。」
「心強いの。
うちの兵士では仰々しくなってしまいそうだからの。」
「ですが、目立たない程度に少し多めに街中に配置させておきましょう。」
フレデリックが言う。
「うむ、そうじゃの。
ちなみにヴィクター、アスセナはどうしておるのだ?」
「アスセナは街中の協力工房を見に行っています。
ベルテ一家には伝える必要はないとは言ってあるのですが、どうでしょうか。」
「ふむ・・・ベルテ一家は確かブリアーニ王国の王都ではなく近隣の村の出身じゃったの。」
「はい、そのように報告されていたと思います。
女王の顔を知っておりますでしょうか。」
「ふむ・・・わからぬの。
我が国でさえ陛下の顔を知っておるのは結局は会った事がある者達のみじゃ。
じゃが、こうやって好き勝手出歩くのであれば顔が知られていても不思議ではないの。」
「ん~・・・教えるべきかは難しいですね。
でも来るとわかっていれば心構えは出来るかもしれないですよね。
ドナートさんとボーナさんの2人には知らせておいた方が良いでしょうか?」
「アリス様、今から教えておくと言うのも・・・陛下方の存在が漏れる可能性もございますし、教えるなら訪問の前日くらいの方が。」
ヴィクターが言う。
「ん~・・・どういう準備をさせるか・・・ですよね。
でも一応見に行く可能性があるなら掃除はしたいだろうし・・・でもどんな者が聞き耳立てているかはわからないし・・・ん~・・・」
アリス達はベルテ一家の事で悩むのだった。
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研究所の1階 試験小隊詰め所。
「・・・警護と言ってもねぇ~・・・どうするんです?
だって、所長より強いんでしょう?」
ブルックが机に突っ伏しながら言う。
「まぁ・・・軽く所長のシールドを突破するんだがな?」
「ついでにビエラ殿と殴り合えるんですけどね?」
ベイノンとアーリスが言う。
「護衛の必要性を感じないな。」
アンダーセンが頷く。
「街中で戦闘をされれば魔王国の方々よりも建物の被害が酷い事になりそうですね。」
「その辺は注意してくれるだろう・・・と期待するにしてもとりあえず周辺警護をして怪しいのは片っ端からエルヴィス家の兵士に突き出すしかないだろうな。」
アーキンの呟きにアンダーセンが答える。
「ええ・・・この人数でですか?」
ブルックが嫌そうな顔をする。
「他に居ないだろう。」
「はぁ・・・大変だぁ。」
アンダーセンの言葉にブルックがガックリとする。
「とりあえず、所長が来るまでヴィクター殿がどこかに連れまわすのだろう?
どういった経路で行くか聞いておいた方が良いんじゃないか?」
「ベイノン殿、その通りに行くかはわからないですよ。
いや、そういう時はむしろ行かないと言った方が良いんじゃないですか?」
「アーキン、そう言うな。
だが、想定はしておいて損はないだろう。」
「「はぁ・・・」」
試験小隊の面々も準備が大変なようです。
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