第1869話 209日目 急ぎましょう。(どこまで見せる?見せない?)
早朝のクゥの元棲みかにて。
「んっ・・・所長、おはようございます。」
「んんっ・・・うっス。」
「ふあっ・・・おはようございます。」
マイヤー達が起きてくる。
「はい、おはようございます。」
武雄が朝食を作りながら言ってくる。
「起こされなかったという事は特に問題はなかったという事ですね。」
「ええ、特には。」
武雄が返す。
「あれ・・・あれは紫雲殿ですか?」
「おはようございます。」
夕霧の隣に居る紫雲が返事をする。
「さっき来て、夕霧と共有はしています。」
「そうでしたか。
紫雲殿が来たという事はエルヴィス伯爵側でなにかあったのですか?」
「あったというよりこれかららしいですよ。」
「ん~・・・所長がそういうなら緊急という訳ではなさそうですね。」
「それは朝食を取りながら考えましょう。」
「ん~・・・そこはかとなく嫌な予感がします。」
マイヤーが訝しげに言う。
「まずは顔を洗ってさっぱりとしてきてください。
その間に朝食は出来ると思います。」
「はい、わかりました。」
マイヤー達が桶を持って少し離れる。
「・・・ビエラ、寝坊かな?
ビエラ~、起きなさい。」
「は~い。」
寝ているビエラが返事をしてくる、だが体が起き上がってこない。
「もうすぐ朝食だからマイヤーさん達と顔を洗ってね。」
「は~い・・・あ?マイヤー?」
ビエラが起きる。
「おっと。
ん~・・・ビエラ、あっちみたいですよ。」
一緒に寝ていたミアがビエラの肩に止まりマイヤー達を指す。
「あ~、あ!タケオ!おはよう。」
「主、おはようございます。」
ビエラが立ち上がって挨拶してくる。
「はい、おはよう。」
武雄も挨拶をするのだった。
・・
・
皆で車座になっての朝食。
「うん、緊急ですね。」
マイヤーがアリスから来た手紙の内容を聞いて答える。
「最短何日でしょうか?」
「ん~・・・昼夜走れば2日弱。
ですが、先導がいませんのでこれは却下。
馬にケアを使い、日没近くまで走って・・・3日の昼が良い所でしょう。」
「5日が3日と半分になるだけ頑張ったと言えるでしょうか。」
「なら強行ですね?」
「各村、西町では最低限の買い物のみで。
ミア、ビエラ、馬達への説得は任せます。」
「「「はい。」」」
「あ!」
「はーい。」
「紫雲、3日の昼の予定ですが、夜になるかもしれないと連絡をお願いします。
出立前にオークか何かを出しますから補給しなさい。」
「はっ!」
「夕霧、念の為にスライムでの連絡を初雪達にしてください。
それとダニエラさん達が領内に入ったとなれば魔物が動くかもしれません。
スライム達は領内の動向に注意する事。
情報は初雪がとりまとめを。
試験小隊はヴィクターの指示で動きなさい。
ヴィクターはアリスの指示に従う事と初雪に伝言を。」
「ん、わかりました。
そこら辺はシウンに連絡させます。」
夕霧が頷く。
「テントや毛布、荷重がある物は最低限を残して私のリュックに。
馬車を軽くします。
あ、気晴らし程度の物は良いですからね。
なら、朝食をさっさと取って、出立準備しましょうか。」
「「はい。」」
皆がパンとスープをさっさと口に放り込むのだった。
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研究所の3階 総務部。
「あれ?ヴィクター様、おはようございます。」
アスセナが席に着いているヴィクターを見つけ声をかける。
「あぁ、おはよう。
アスセナ、すみませんが、今日から忙しくなると思うので覚悟だけはしてください。」
「忙しくですか?」
「ええ、ちょっと・・・面倒なお客様がこちらに向かっておりますのでね。」
「・・・前に言われていた方々ですね、」
「ええ、私の元上司である現役の魔王国の陛下がお忍びでね。
それとブリアーニ王国の女王も遊びに。
アスセナもある程度手伝って貰うことになるでしょうが。」
「・・・」
アスセナが壁に片手を突いて、空いた手で頭を押さえガックリとする。
「うむ、その反応は初々しいですね。
主は通常であればあと5日後の帰宅なのですが、昨日の段階で紫雲がアリス様の伝言を持って向かっていますね。
今頃内容の確認はされているでしょう。
・・・それでも1日か2日は早まるだけと思われますね。」
「魔王国の方々は2日後でしたか?」
「ええ、予想では2日後です。
主が戻るまで私が接待をするように言われましたが、さて・・・具体的にどうしますかね。」
「はぁ・・・接待と言われましても・・・
お忍びとは言え・・・そうでなくとも魔王国の方々に見せれる物と見せれない物があると思われますが。」
「ええ、なので試験小隊の方々が来たら小銃の管理の徹底としばらくの小銃訓練の中止の依頼をしようかと思います。」
「そうですね。
あれは見せてはいけませんよね。
ブリアーニ王国が来るのであればベルテ一家はどうしますか?」
「・・・アスセナ、どう思いますか?」
「見せるべきではないとは思いますが、秘密にするべき事ではないとも思います。
秘密にした方が却って問題が大きくなると思いますし。
それにキタミザト様からの雇用契約があるのですぐに何かとは言われないと思います。
お忍びであるのなら尚の事、現状では何も手が出されません。
あとはキタミザト様とブリアーニ王国との話合いに依るかと思います。」
「ふむ・・・まぁ積極的に見せる必要もないですか。
あくまで雇用している立場なのです。
普通に生活をして貰って、見かけられて質問されれば経緯を話し雇用していると言えば良いのでしょうね。」
ヴィクターがアスセナの言葉を聞いて考えを固めるのだった。
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