第1867話 ピザが広まる?(言葉だけでわからせるのは難しい。)
「そのシモーナさんの姪っ子は元気だったというのは良いのですけど・・・まぁ元気なのがわかればその内何か手紙でも寄こすでしょう。
ソルミ、他になにかありましたか?」
「そうですね・・・」
ヴァレーリの問いかけにソルミが考える。
何を言おうか・・・何を言ってはいけないのかを考える。
「・・・会談の内容は王城に戻ってから報告書にまとめます。
多分この場で言うような事でもありませんし。」
「うん、わかりました。
王都の街中はどうでしたか?」
ヴァレーリが頷く。
「あ、王都でではないですが、新しいソースが出回っていましたね。」
「ほぉ、新しいですか?」
「はい、ウスターソースというそうです。
エルヴィス伯爵領の伯爵邸がある街でいたる店で出されていました。
野菜炒めを競ってはいますが、肉料理にも合いました。」
「ふむ・・・シモーナさん、これは広げ方を見る良い機会ですね。」
「はい、売り込みの方法を学べますね。」
ヴァレーリとシモーナが話し、ブリアーニも頷いている。
「ダニエラ様はご存じでしたか?」
「ええ、そのウスターソースの魔王国側の領内の販売を一手に手掛けているのがキタミザト殿なのです。
街中で頻繁に見られるという事は生産量を上げ始めたという事ですかね。
我が国にも輸出のお願いをしています。
その輸入をシモーナさんがしてくれるのですよ。」
「そうでしたか、いや、またあの料理が食べられるかと思うと楽しみにはなりますね。」
「そうでしょう。
ただ東町ではまだ見られないですからね。
この地にもある程度、行き渡って初めて輸出量が増えそうではありますが・・・今回お会い出来たら輸出量増加の早期実現の要請はまたしないといけない事項ですね。」
ヴァレーリが腕を組んで楽しそうに頷く。
「あれは売れそうですよね~。
私も何とかしないととは思うんですけど。
レバントおばさんとも話しましたが、ダニエラさんの要請が厳しいんですよね。」
シモーナがどうしたものかと呟く。
「シモーナさん、我が国にも融通してください!」
ブリアーニもシモーナに要請してくる。
「はぁ・・・そこはレバントおばさんに言ってくださいよ。
私はあくまでレバントおばさんの所までが仕事なんですから。」
「ええ~・・・だって私あそこに毎日居られないんですよ?
ダニエラはちょくちょく顔を出しているみたいだから何か変化があれば対応出来るだろうけど。」
「ふっ!カールラよ、(中継地としての)地の利は私にありますよ。
分け前は6:4でどうでしょうか?」
ヴァレーリが無駄にカッコいい顔をさせながらブリアーニに勝ち誇る。
「くっ!悪くないわ!
それで納得しましょう。」
「多少多く取るのは許してくださいよ。
こっちは欲しがる連中が多いのですから。
まぁもっとも自由に買わせるなんて私がまださせませんけどね。」
ヴァレーリが「部下達の労いにソースを使うかな」と思っている。
「はぁ・・・うちだってまだ小売りなんてさせられるような量が手に入るとは思っていませんよ。
なのでこちらも賄いか何かで出すのが精々でしょう。」
ブリアーニもヴァレーリの考えがわかるのか、そんな事を言いだす。
「・・・まだ大量の輸入が上手く行くかも決まっていないのですけどね。」
シモーナは2人の要請が結構な量を前提にしているのを危惧するのだった。
「料理と言えば・・・」
ソルミが何かを思い出したかのように首を傾げる。
「ん?どうしましたか?」
ヴァレーリが聞いてくる。
「いえ、エルヴィス伯爵領の伯爵邸がある街の街中ではパンの味違い料理が多く見られるのですが、エルヴィス伯爵が新しいレシピを公表するという噂がありました。」
ソルミが言う。
「レシピを伯爵が?・・・だが、その話に行く前にパンの味違い料理とは何でしょう?
それはあれか?普通のパンとミルクトーストとかか?・・・とかですか?」
ヴァレーリが考えながら聞く。
「いえ、ピザという料理なのですが、基本的な調理方法は薄く焼いたパンに色々な料理や具材等を乗せているのです。
その部分は一緒で後は乗せてある物が違うという感じです。
例えば、ソーセージとかも薄く切られたのを乗せられていたりしましたね。
乗せられているソーセージも焼かれて熱々で出されます。
それもまた美味しいのです。」
「・・・?それは・・・なんでしょう・・・
焼いたパンを皿替わりにして上に料理を乗せて再度焼くのですか?」
ヴァレーリがさらに考え込む。
「詳しい調理方法はわかりませんが・・・2度焼くのは時間もかかりそうです、ですが、そこまで時間もかからなかったのでパンの生地に料理や具材を乗せて焼いたのではないでしょうか。」
「パン生地と一緒に焼く、だが、乗せている物が多様にあると・・・カールラ、そんな料理はあるのでしょうか?」
「さぁ・・・少なくとも私達の所にはない調理方法ですね。
ソルミ殿、その料理はエルヴィス伯爵領のみなのですか?」
「はい、ウィリプ連合国、カトランダ帝国、そしてアズパール王国でもそのような料理はありませんでした。
どちらかというとパンは2種類か3種類が売られていて具材は自分で買って後から挟む、もしくは一緒に食べるというのが一般的です。」
ソルミが言う。
「となると・・・はぁ・・・キタミザト殿が関与してそうだ・・・してそうですね。」
「あの方は食の専門家なのでしょうか・・・まぁ私達にとってはありがたいのですけど。」
ヴァレーリとブリアーニが半ば諦めながら頷くのだった。
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