第1864話 情報って本当に大事。(陛下と女王のきままな旅行。)
ヴィクターが招集され、フレデリックと執事、メイドも集合していた。
「さてと・・・タケオの帰宅は5日後の予定じゃ。
それと初雪達の情報網から魔王国側から視察の者が関を越えたとの知らせが来た。
こちらは早ければ2日後にはこの街だな。
メンバーはシモーナ、魔王国陛下の侍女ダニエラ、ブリアーニ王国の女王の侍女カールラとその護衛と思われる者数名が幌馬車で移動中との事じゃ。」
エルヴィス爺さんが皆にわかっている事を説明する。
「・・・」
ヴィクターのみが目を瞑り、眉間に皺を寄せながら聞いている。
「はぁ・・・まぁここに居るメンバーなら問題ないから言うがの。
魔王国陛下とブリアーニ王国の女王が来る。
一応、向こうはお忍びじゃろうから過度に緊張する必要はないと思うておるが、万が一があるかもしれないという事は心しておいてくれ。」
「とりあえず頭に入れておくのみでも構わないでしょう。
正式に訪問するならその程度の護衛である訳ないですし、事前に連絡があって我々も王都の判断が必要ですし。
主は相手がお忍びのままお会いになりますか?」
フレデリックが言う。
「まぁ正式でないしの・・・シモーナの方はキタミザト家を訪問するのじゃからのぉ。
・・・じゃが、流石にわしは陛下と女王陛下にはお忍びとは言いつつも非公式での会談をしないといけないじゃろう・・・タケオを同席させたい。
ヴィクター、タケオが戻るまでの接待は任せる。
どちらにしても魔王国への輸出への何かしらの回答じゃからの。
タケオの代理での裁可は出来んだろう。」
「はっ!アリス様、情報開示はどこまでしますか?
ヴァレーリ陛下にはこちらの状況は知られておりますが。」
「タケオ様がヴァレーリ陛下に手紙を渡しているのは知っています。
私が書きましたしね。
まぁその情報はブリアーニ王国の女王陛下も知っているでしょうね。
なので・・・ベルテ一家かぁ・・・これはタケオ様の判断が必要ですね。
ヴィクターはもうしょうがないので前面に立って街のご案内をして貰うしかないでしょう。
お爺さま、工房はどこまで見せますか?」
「ステノ技研と研究所はダメじゃの。
あそこはタケオのやりたい事をする工房じゃからの。
魔王国にタケオの発想を見せる必要はない。
ラルフの仕立て屋やベッドフォードの青果屋は問題ないじゃろう。
現状を見せて輸出が大変だと思わせる必要があるとも思う。
まぁ土産程度に買って行って貰うかの。
とりあえず、ヴィクターはタケオが戻るまでシモーナ達の宿の手配をしてくれるかの?」
「はい、畏まりました。」
「アリスは紫雲か彩雲に現状をタケオに知らせてくれるかの?」
「はい、今から飛ばせば明日の朝にはタケオ様に知らせられると思います。」
「フレデリック、夕食は一緒にはしないだろうが会談の菓子は必要じゃろう。
最短では5日後じゃが・・・目新しい物を用意しようかの。」
「では、こし餡の団子をご用意しましょう。」
「うむ、では、皆、気負い過ぎない程度に準備に取り掛かろうかの。」
「「「「はい!」」」」
エルヴィス家の準備が始まるのだった。
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エルヴィス伯爵領の東町の酒場。
「ダニエラ・・・来ちゃったわね。」
ブリアーニが隣のヴァレーリに言う。
「ふふん♪一度は来た所ですからね。
護衛は少なくて良いのがまた良い。
カールラも緊張する事はありませんよ。
楽しもうじゃない!」
ヴァレーリが楽しそうに酒を飲む。
「いや・・・お城の人達にはエルヴィス伯爵邸にまで行くとは言ってないんじゃないの?
護衛も前回と替えてるし、減ってるし。」
「ん~?『エルヴィス伯爵領に行く』と王城には言ってきましたし、それで許可も取れました。
今回は第2軍の大隊長と数名で問題ないと許可を取れました!
ちなみにフレッディは仕事が大変そうだったから、今回は留守番です。」
「ねぇ、ダニエラ、言ってないでしょう?」
「・・・ウォルトウィスキーの為ですよ。
前回東町ではなかったですからね。
中央に行かねばならないのです。」
「いや・・・一般に売っているかわからないわよ?」
「ふふん♪そこはあれです!出している店を探せば良いだけ。
そこの料理をたらふく食べれば出てくるはずです!」
ヴァレーリが楽しそうに言う。
「ダニエラさん、それ違うじゃないですか?
それとカールラさんはまた休暇延長とか言っていましたが、ダニエラさんは本当に大丈夫なんですか?」
シモーナが2人に聞く。
「シモーナさん!そこは大丈夫ですよ!
陛下のお墨付きですし!」
ヴァレーリが胸を張って言う。
「まぁ、残された人達は大変だろうけどね。」
ブリアーニがボソッと言う。
「大丈夫!それにここまで来てしまったんです。
今さら戻れはしないですよ!」
「まぁ、大丈夫なら良いんですけど。
あ、料理が来ましたね。
えーっと・・・特産品祭り出展作品って書いてありましたね。」
店員が配膳する間にシモーナがメニューを確認して言う。
「響きが良いですね。」
「ワクワク感がありますね。」
ブリアーニとヴァレーリが頷く。
「あっいらっしゃ・・・あれ?
今3人組のお客さん、扉開けて中見たら帰っちゃった。
混んでないけどなぁ?」
店員が不思議がる。
「ダニエラ様、今のやつらですが。」
大隊長がヴァレーリにコソッと言う。
「あぁ、タローマティを行かせた。」
「ありがとうございます。
戻りが割りと早かったですね。」
「もう少しゆっくり帰ってきても良いのにな。
まぁここで合流したのも何かの縁だろう。
酒のつまみに報告を聞くか。」
「はっ!では数人迎えに行かせます。」
「あぁ、タローマティが店の裏で職質中だ。」
「はい、ありがとうございます。
おい。」
大隊長が部下を数名表に向かわせるのだった。
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