第1863話 アロエが化け物らしい。(ん?面倒事が越境してきたらしい。)
武雄達はというと。
今は男性陣が代わる代わるお風呂に入っていて、ビエラとミアは大人しく湯上りのお茶を飲んでいた。
「タケオ、ハツユキとシグレから連絡が来ていました。」
武雄の隣に座った夕霧が言ってくる。
「うん、何と言ってきましたか?」
「ん、ハツユキは毎日アスセナの手伝いをして、図面を描いているそうです。
ただ、街は少し描けたがスズネと話してどこまで描けば良いかわからないと。
シグレは・・・アリスから温かい水が出る周辺の確認とそこに向かう道の整備をしているそうです。」
夕霧が報告してくる。
「・・・初雪の方はもう描き始めているのですね。
戻り次第、確認して指示を出します。
で、時雨はなんですと?」
「温かい水が出る所の周辺の確認と道の整備です。
アロエというのを探しているみたいですね。」
「温かい水が出る?アリスに前に聞いた所でしょうかね。
それとアロエ?・・・そっちはコノハかな?
それが見つかったと?」
「ん、タケオが戻り次第、皆で行くらしいです。」
「皆で・・・ね。
まぁ人選は任せますか。
それよりアロエやサボテンって水を体内に貯める為に進化した植物だったはず・・・少雨や乾燥地に多く分布すると思っていたんだけど。
ああいった植物は水分をあげすぎると根腐れしなかったっけ?
あ、そう言えば学生時代、友人がサボテン買って枯らしてたっけ。
あれって根腐れして枯れたのか?」
「タケオ?」
「あ、ごめんなさいね。
それで夕霧、時雨はどこに確認に行っているのですか?」
「東町から北にある森の中です。」
「・・・エルヴィス伯爵領自体が結構寒いのにさらに北か・・・そんな所で多肉植物がねぇ・・・
まぁ寒さに強い品種があるという事なのかもしれないし、温泉の源泉近くの暖かい場所で尚且つ水はけが良い場所に生息?・・・ピンポイント過ぎる立地ですね。
あるというならあるのでしょう。」
「ん、タケオ、大きいから気を付けて。」
「・・・アロエが大きい?」
「ん、大きい。
高さは伯爵の家くらいでトゲトゲいっぱいあります。」
「・・・あぁ・・・水分が大量に必要な品種ですか。
まさか襲ってはこないよね?」
「ん、動いたのは見た事がないです。
でも動く木もあるのだから植物が動いても不思議はないです。」
「・・・怖っ。」
武雄が少し考えてそんな事を呟く。
「タケオ、怖いならシグレに言って何か調べさせますか?」
「そうですね・・・周囲の土壌の水が何なのかを調べてください。
あと足場がぬかるんでないかとか、万が一の戦闘時に動ける空間があるのかとかですね。」
「ん、ならシグレにはアロエの周辺環境の確認を徹底するように伝えます。」
夕霧が頷くのだった。
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エルヴィス伯爵家の客間。
「タケオが帰って来たら東町に探検とな。」
「はい、お爺さま。
時雨ちゃんの言う通りなら高品質の化粧品の素があるようなのです。
肌の劣化を遅らせるようなので、これは事業化とまでは言いませんが、試作して損はなさそうですよ。」
「ふむ・・・化粧品か。
確かに世の半分は女性だからの。
肌の調整をするというのなら幅広い女性が買ってくれそうじゃの。
タケオの言葉ではないが、人を呼び込むのには良い宣伝にもなろう。
じゃが、肌に直接触れるという事は万が一は保証が大変という事なんじゃがの。」
「伯爵、そこは平気よ。
パナちゃんが居るんだから、調合はお手の物よ。
意図的にしない限り失敗はあり得ないわ。」
チビコノハがアリスの肩に現れる。
「そうなのかの?」
「ええ、パナちゃんは一級の医者として診察をして、ケアを使っての治療をするんだけど。
後世の人々がなんにでも効く薬を想像した際にパナちゃんの名を冠したりするほど信奉しててね。
調剤、調合の専門家という肩書もあるのよ。
だから医術、医療、調剤、調合、その全てに精通する精霊だからパナちゃんは癒しを司ると謳われるのよ。
まぁ本人は今の所、スライムの調合を楽しそうにしているみたいだから研究所に勤められて良かったのかもね。
タケオとの距離もちょうど良いみたいだし。
ケアが出来るのだから医療に特化しなきゃいけないというわけでもないしね。」
コノハが言ってくる。
「ふむ・・・なら平気なのじゃな。
まぁじゃが、人肌に触れるというのなら慎重さは大事じゃろう。
最悪は数日で治せる範囲に留めるべきじゃ。」
「はい、お爺さま。
領民を苦しめる物を作る気はありません。」
「うむ、なら良い。
アリスの好きなようにすればよかろうの。」
エルヴィス爺さんが頷くと客間の扉がノックされエルヴィス爺さんが許可を出すと初雪が入ってくる。
「伯爵、アリス、タケオ達がクゥの居た場所に今日あたり入るらしい。」
初雪が開口一番にそう伝える。
「うむ、予定通りじゃの。」
「ええ、順調ですね。」
「順調なら問題ないわね。」
エルヴィス爺さんとアリス、コノハが頷く。
「それと魔王国側の関に居たスライムからの報告です。
前に東町で会ったシモーナとダニエラ、カールラと他護衛数名が越境しました。
幌馬車での移動です。」
「「え?」」
エルヴィス爺さんとアリスが聞き返す。
「ハツユキ、それは昨日の段階?」
コノハが聞いてくる。
「はい。」
「・・・関で1泊、東町まで1泊、ここの街までさらに2日。
順調なら今日の時点で東町に来ているかも・・・あと2日で来てしまうかもしれませんね。」
「タケオは後5日はかかるの。
とりあえずヴィクターを呼ぶかの。」
「はい、わかりました。」
アリスが席を立つのだった。
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