第1861話 208日目 エルヴィス領内に入ったよ。(知的財産権はどうなるの?)
クゥの元棲みかにて。
「んー!・・・・やっとここまでかぁ。」
武雄が馬車を降りて伸びをしながら言う。
「ニャ!」
「グルゥ。」
チビ猫を乗せた狼を先頭に数頭の狼達がやってくる。
「あれ?タマ?
どうしたんですか?」
ミアが武雄の胸ポケットから出てきてタマの所に飛んでいく。
「所長、野営の準備をします。」
同乗していたブレアが言ってくる。
「わかりました。
私はいつもどおりお風呂を整備してきます。」
「はい、よろしくお願いします。
ビエラ殿、薪拾い行きましょうか。」
「はい!薪集める!」
ビエラが返事をする。
「タケオ、ハツユキ達と連絡終えたら手伝います。」
「はい、お願いしますね。」
各々で動きだすのだった。
・・
・
仮設お風呂。
「ふぅ~・・・ふろ~♪」
ビエラが頭にタオルを乗せて肩まで浸かってのんびりとしている。
「ふぃ~・・・ビエラ、お風呂良いですよね♪」
「あ~・・・これ、良い♪」
「えーっと、お水も飲まないと。」
「あ~・・・水、水。」
ミアとビエラが水分補給をしながら長風呂を楽しむのだった。
一方の焚き火を囲む親父共と言えば。
「やっと半分ですね。」
オールストンが言ってくる。
「やっとね~。
やっぱり馬車移動は時間がかかりますね。」
武雄も言う。
「しょうがありませんよ。
街道の整備が良くなれば多少は移動時間が良くなりますかね?」
ブレアが言う。
「街道だけではなぁ・・・馬の体力向上というのは何世代も重ねないと改良は出来ない。
まだ余地はあるかもしれんが、今以上に体力向上が出来るかはわからんな。
むしろ所長がしている幌馬車の改良が上手く行けば王国全土に普及はしそうだな。」
マイヤーが言う。
「ん~・・・上手く行けば、ですけどね。
今しているコンテナは頑丈性、耐久性を上げつつ、現状と同等の荷物を運べる事を目指していますけど。
やるにしてもまずはエルヴィス伯爵領内での普及を目指すのが目標になるでしょうね。
上物をコンテナにしないのなら馬への負担が少なく出来るとは思いますよ。」
「・・・現状の工房だけで処理が出来るのでしょうか。」
「無理だろうなぁ。」
「王国全土はなぁ。」
ブレアの問いかけにマイヤーとオールストンが首を捻る。
「ん~・・・委託するというのはありますけど、今のご時世は難しいのかなぁ。
製造方法を販売するという手段が一番でしょうけど、上手く行くとは思えないですね。
出来れば、製造委託が良いと思いますけど。」
武雄が言う。
「どちらにしても所長が関与しているのですから無断複製は発覚したら処罰出来るように根回しは必要でしょうね。」
「ん~・・・王都を巻き込むのは良いんですけど、トレンチコートの時とは若干違いますからね。
幌馬車の・・・それも一部品という所では統制は難しいでしょうから許可を取りに来た際に過去5年程度の売り上げを見させて貰って検討するという程度でしょうかね。」
「それは・・・相手の工房の規模を見極めて売値を変えるという事でしょうか?」
「ん~・・・それはこちら側の信用が落ちかねないやり方ですからそれはしたくないですね。
それに私が契約する訳ではない気もしますが・・・
ローチ工房もしくはサテラ製作所へは相談しておきますけど。
私が考えるのはさっきも言った製造委託。
これは作った製品個数によって金額が発生する方法なんですよね。
1個作ったらいくら発生するという感じです。」
「それは・・・相手が作った台数を誤魔化したらどうするのですか?」
「どうも出来ませんね。
見る目がなかったと諦めるしかないでしょう。」
武雄が即答する。
「それは・・・大丈夫なのですか?」
「商売をするには相手を信用はしないといけないですけどね。
それに過去5年に遡って見ているのに委託した年から急激に売り上げが落ちたとかになったら周囲に聞き取りに行きますけどね。
そこで不正がわかったなら相手工房への聞き取りと違約金の支払いのお願いをする程度ですよ。
なので、最初の契約が勝負という事ですかね。」
武雄が言う。
「ん~・・・上手く行きますかね?」
「そこは私というよりも協力工房の手腕でしょう。
どういう契約をするのかを見ておかないとね。」
「中々に大変そうですね。」
「でしょうね。
商売は思ったほど簡単ではない物です。
まぁ後々の事を考えれば王都の総務局や経済局に登録しておく方が良いかもしれませんが、この辺は難しいので必要になった時に考えますかね。」
「登録・・・ですか?」
「ええ、まぁ最初はエルヴィス伯爵領で実施しても良いかもしれませんけどね。
要は知的財産という事を明確にし、技術の公表とそれに伴う利権を公にするという事です。」
「それは類似品が出て来るのではないですか?」
「考え得る類似品も一緒に登録しておくのですよ。
どれか1つでも抵触したなら使用料を徴収するとしておけば良いでしょう。
貴族に公表するのならその技術が使われているかは貴族が確認するという事ですけどね。」
「・・・ん~・・・つまり・・・貴族方の取り締まりになると?」
「ええ、技術の利権を所属する貴族家に登録する。
貴族はその技術を国に報告する。
国はその技術を全地方に渡し、同じ技術を無断に使っている者が居たら報告するようにする。
違反するのなら貴族の監督不行き届きで国が動く。
流れはこうでしょうね。」
武雄が言うのだった。
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