第1858話 出立したよ。(報告書を後ろから読むな。)
王城のアズパール王の執務室。
「ふぅ・・・朝食までのこの時間が一番気を抜く事が出来るな。」
ダンディ茶を飲みながら一息ついていた。
と扉がノックされアズパール王が許可するとオルコットが入ってくる。
「失礼します。
キタミザト殿一行が出立したようです。」
「うむ、昨日の夜挨拶に来たぞ。
今回は無事に過ごせたな。」
「まぁ、あのあといろいろ替えましたしね。
成果が出たと思いたい物です。
それで、今日の予定ですが、貴族会議不参加の来年度予算案の審議を各局長がするとの事です。」
「・・・それはアルダーソンとタケオの給金増額も含めてか?」
「はい、事前に提出された内容をざっと見ましたが入っておりました。」
「随分と早くないか?
もっと時間がかかると思っていたが。」
「こういう流れになると読んでいたと思われます。
まぁ最初から足らないのがわかっていたから準備していたのかもしれませんが。」
「そのぐらい見通せないと財政を預かれないか。」
「当初より試験小隊の3個小隊設置は言っていましたのでいつでも増やせるようにしておいたのかもしれませんね。」
「そうか。
だが、まだ局長達の審議段階ならまだ我は参加しなくて良いだろう。」
「はい、畏まりました。
では次に軍務局より先の会議の結果を受けての戦争想定が速報で来ております。」
「・・・オルコット、そういう仕事の事は朝食までは良いんじゃないか?」
「1日の予定は大事だと思いますが?」
アズパール王とオルコットが無言で顔を見せあっている。
「朝食後に聞く。」
「畏まりました。
では、朝食後にまた来させて頂きます。」
「ああ。」
オルコットが退出して行く。
「・・・最近、仕事熱心だなぁ。
まぁオルコットは昔からか。
さてと、マイヤーが持ってきたタケオの報告書を見るか。
といっても最初の方はわかっているのだし、最後の方から見るか。」
アズパール王が何の気なしに報告書を手に取るのだった。
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移動中の武雄達の馬車では。
「・・・本当に何もないですね。」
武雄が外を見ながら言う。
「あったら困りますよ。
陛下への報告書は、事前に所長に流し見して貰いましたけど、あれでよろしかったのですか?」
「良いも悪いも許可はしたでしょう?」
「ええ、指示の通りエルダームーンスライムの事というよりスライム関連はごっそりと抜いていますけどね。
ウカ殿とダキニ殿の事は書きましたよ?」
「あれは秘密にするような事ではないでしょう?」
「良いんでしょうかね~?」
「成っちゃたんだからしょうがないでしょう?
それに報告書に米農業の精霊と用心棒と書いてましたけど、まぁそれだけですしね。」
「ウカ殿の方はわかるのですが、ダキニ殿はやる事がわからないですからね。
他に書きようがなかったのですよ。」
「戻ったら何かしているのですかね?」
「今日、明日で何か出来るような事なんてないですよ。
農業は数か月から半年はかかるでしょうし、ダキニ殿に至っては居候みたいなものですからね。」
「ベルテ一家の方はそれをして欲しくて雇ったのですからそれで良いんですけど・・・
楽しく過ごしてくれていたら良いんですけど。」
「そうですね。
あ~・・・それと試験小隊の来年の2次募集ですがね。
もうそれなりに来ているようですよ?
昨日、王都守備隊に挨拶に行ったら言われましたよ。」
「え?・・・まだ5月ですよ?」
「そうなんですよね・・・何でこんなに早いんでしょうかね・・・」
「第一情報分隊と第二情報分隊の隊長さんは?」
「ないそうです。
ラックの所も息子が来年どちらかに入りますからね。
それを見届けてからとなったのではないですかね?」
「第一情報分隊の隊長さんは?」
「ブリューは息子2人とも魔法師専門学院を卒業して第1騎士団と地方の騎士団に入っていると聞いた事がありますよ。
確か、ブリューの奥方も兵士だったはずです。」
「・・・ねぇ、マイヤーさん。」
「はい、何でしょう?」
「試験小隊の面々もそうですけど。
皆さんの奥さん達兵士ですよね?」
「・・・武官だと武官の嫁が来る物ですよ。
境遇は同じですからね、意気投合もしやすいですし。
文官を嫁にしたのは身近なのはトレーシーぐらいじゃないですか?
まぁトレーシーは王家専属魔法師部隊ですから王城に居たという特殊な条件ではありますよね。」
「職場恋愛に近いのですか?
例えば、部下の友人とか同期の部下とか元上司の部下とか元部下だったり。」
「最後はアンダーセンですね。
あれも例外でしょうね。」
「まぁ・・・新人にですからね。」
「ええ、当時は上層部で揉めたんですよ。」
「そうなのですか?」
「当時はアンダーセンは第1騎士団でしたけど。
王都守備隊にまで聞こえるくらいですから。」
「なんでですか?」
「まぁ戻ったらアンダーセンに聞いてやってください。
今では笑い話ですし。
アンダーセンは卒業時の順位が2位なんですけどね?」
「うんうん。」
「アンダーセンの妻ボナーも卒業時2位だったんですよ。
優秀な人材に優秀なのを付けたはずが。」
「結婚して退職かぁ。
上層部はどうしたものかと頭を悩ませますね。」
「ええ、で次の年にアンダーセンは王都守備隊に来ましてね。
メキメキ頭角を現して30半ばで分隊長まで出来るようになった者だったのです。」
「それを私が抜きましたけどね。
総長怒ってないかなぁ?」
「それ・・・はぁ・・・内輪の話をすると王都守備隊としてはアンダーセンをウィリアム殿下の騎士団長にするつもりだったんですよ?」
「・・・あれ?騎士団長は第一近衛分隊から採用しましたよね。」
「それ予備です。
まぁ結果的にウィリアム殿下の騎士団長には王都守備隊から入れられたので良いんですけど。」
「・・・ん~・・・ま、過ぎた事は良いですよね。」
武雄は再び外を見る。
「所長・・・ウィリアム殿下の騎士団選定に所長、関わっていませんよね?」
「・・・なぜにそう思いますか?」
武雄は頑なに外を見ている。
「いえ、今、ふと思ったんですよ。
確か所長、アンダーセンを誘った時にリストにあったと言ったような気がしまして。」
「・・・気のせいじゃないですか?
今は過去よりこれからですよ。
で、来年の異動可能な人達のリストはいつ手に入りそうなんですか?」
「そうですね・・・所長の予定によりですけど、11月ぐらいには手に入れたいですね。」
マイヤーがそう言うのだった。
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