第1857話 206日目 出立。(ビジネスシートを作りたい。)
朝食を終えて武雄達は王都の城門に来ていた。
「・・・ご主人様、何をしているのですか?」
ジーナは見送りで来ていたのだが、武雄が馬車の車内をごそごそと改造しているので聞いてくる。
「・・・あれ?ジーナ?
王立学院はどうしたのですか?」
武雄が今気が付いたようでジーナに言ってくる。
「ちゃんと遅刻届はスミス様に提出して貰っています。
私はご主人様のお見送りです。」
「あら、ジーナありがとう。」
武雄がジーナの頭を撫でる。
「ん~♪
・・・で、ご主人様、何をしているのですか?」
「いや、馬車の改造というか積み込みをね。」
「積み込み・・・ですか?
ご主人様は大袋があるのですし、詰め込まなくても良いと思うのですが。
・・・なんだか嫌な予感がします。
ちょっと失礼します。」
とジーナが馬車の中を見る。
「・・・何しているのですか?」
車内を見たジーナが振り返り、呆れながら武雄に言う。
「え?椅子と椅子の間を座面まで埋めて、その上に毛布を厚手に敷いて、足を伸ばせるようにしたんですけど。」
「なぜに?」
「足を伸ばして寝たいです。」
「はい、いや?へ?
言っている事はわかりますが、足を伸ばして馬車に乗るのですか?」
「はい、座っているの大変でしょう?」
「そういう物だと思うのですが。」
「足を伸ばしてはいけないとも言われていないと思いますが。」
「そういう乗り方をしないからですよ。
靴はどうするんですか?
汚れますよ?」
「ええ、汚したくないから脱ぎますね。」
「・・・」
ジーナが呆れている。
「まぁ良いじゃないですか。
ジーナ、試しに座ってみてください。」
「はぁ・・・」
ジーナが靴を脱ぎのそのそと馬車に乗り込み奥の椅子に足を伸ばして座る。
「・・・ご主人様、これ馬車の揺れに耐えられますか?
左右にフラフラしそうなのですけど。」
「ならタオルか何かを腰の両側から出るように後ろから巻きますかね。」
「・・・そうするとどうなるのでしょうか?」
ジーナが首を傾げながら聞いてくる。
「気休めですね。」
「え~・・・」
「しっかりとした作りの物を用意してあげれば腰が固定されて左右へのふらつきは予防出来るでしょうね。
まぁ次回までに毛布を縫い合わせて試作品でも作っておきますかね。」
「・・・ご主人様なら本当にしそうですが。」
「次回までは長いのでね。
ちまちま作りますよ。」
「本気でしたか。
よいしょっと。」
ジーナが馬車から降りてくる。
「ジーナ、無理せず過ごしなさいね。」
「はい、わかりました。
ご主人様、試作も大概にしないとそろそろ協力工房の方々に刺されますよ?
お気を付けください。」
「・・・はい。」
武雄が項垂れる。
「では、ご主人様、帰路の旅をご安全にお過ごしください。」
ジーナが頭を下げる。
「ええ、いろいろとジーナには負担をかけますが、面倒になったら陛下とレイラさんを頼りなさい。
8割方は陛下とレイラさんは知っていますからね。
それに、そのぐらいしてもあとで何かして恩は返せるでしょう。」
「はは・・・そんな事が言えるのはご主人様だけです。
ご主人様、慣例の戦争にはご注意を。
緩くとも戦争は戦争です。」
「ええ、初参戦ですからね。
慎重にそして大胆に行動しますね。」
「ご主人様、大胆は要りません。
無事に屋敷にお戻りください。」
「うん、その辺はうちの部下達が心得てくれていますよ。」
「はい、お気をつけて。」
ジーナが頷く。
「タケオ!終わった!」
「主・・・ビエラが馬に発破をかけるんですけど。」
ビエラとビエラの肩に乗るミアが戻ってくる。
「発破をかけなくても平気ですよ。
早く走るという訳ではないでしょうからね。
ほら、ビエラ乗りましょう。」
「はい!」
「まずは靴を脱ぎましょう。」
「はーい。」
ビエラが靴を脱いで馬車に乗り込む。
「所長、まずはオールストンとブレアで御者をして行きます。
交代しながら今日中に隣町まで行きます。」
マイヤーが言ってくる。
「ええ、任せます。
・・・来ませんでしたね。」
「はい、あの内容を見れば誰かしら来ると思っていましたが、来ないのなら陛下はまだ見ていないのでしょう。」
武雄とマイヤーが「こりゃ、早々に出立だ」と思っている。
「マイヤーさんも乗ってください。」
「それこそ私が最後だと思うのですが・・・はぁ・・・では、先に乗らせて頂きます。」
マイヤーが馬車に乗ろうとして。
「マイヤー!靴脱ぐ!」
「・・・また奇抜な事を。」
ビエラに言われて靴を脱いで馬車に乗り込むのだった。
「ん、タケオ。」
夕霧が浦風を抱えてやってくる。
「連絡は出しましたか?」
「ん、大丈夫。」
「なら城門を過ぎるまではその形で。
街道に出たらスライムになっていてください。」
「ん、なら私も馬車に乗ります。」
夕霧がそう言ってするりとスライム状の足を靴から出した。
武雄は「こらこら、バレるでしょう」と苦笑している。
「まぁ・・・良いか。
忘れ物は無し、靴の置忘れもなし。
オールストンさん、ブレアさん、行けますか?」
「「大丈夫です。」」
「よし、じゃあ帰りますか。」
武雄が確認して馬車に乗り込む。
「ほら、ビエラ、大の字に寝ないで奥に詰めて。
私も乗るんだから。」
「あ~?あ♪タケオ♪」
武雄が乗りながらビエラを奥に押し込んでいくがビエラが楽しそうに抵抗をしている。
「なんだか、帰り際まで楽しそうですね。」
ジーナが馬車の扉を閉めて、乗せ忘れが無いか確認する。
「良し!ご主人様、平気です。」
「はい、どうも。
ジーナ、お疲れ様。」
「はい、ご主人様、お疲れさまでした。」
「出立します!」
オールストンの号令で馬車が出立するのだった。
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