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第1856話 205日目 出立の挨拶。(報告書を読みませんように。)

夕食後、クリフとニールには挨拶を終え、アズパール王の執務室に来ていた。


「タケオ、この度の招集ご苦労だったな。」

「はい、予定していた内容は全部し終えましたので、帰郷します。」

「うむ、次に来るのはまた研究所の会議の時か。

 手紙くらいは寄こすように。」

「はい、ですが、その前に慣例の戦争があるのでその報告は耳にされると思いますが。」

「それよりもスミス達を使っての穀物売買実験が先だろう。

 まぁその件はこちらで上手く対応する。」

「お願いいたします。」

「うむ、パットとエイミー、スミスの良き糧になる事を期待しよう。

 ジーナには伝えてあるな?」

「はい、スミス坊ちゃんには穀物の事は秘密にしていますが、慣例の戦争については知っています。

 ジーナは概ね全体は知っています。」

「そうか。

 ジーナからは何か言ってきたか?」

「・・・そう言えば何も言ってきませんね。

 慣例の戦争があるのに魔王国に穀物を輸出する事についての質疑はありません。

 普通疑問に思うのではないですかね?」

「まぁ10人中、7、8人程度は疑問を呈しそうだがな。

 ジーナは何か悟ったのかもしれぬな。」

「そうであれば、ジーナは優秀過ぎますね。」

「タケオが部下にするには丁度良いだろう。」

「まぁ、部下が優秀なので平々凡々な私は何とか生きて行けるのでしょう。」

「タケオが平凡なら粗方の者は愚者だな。」

「そうでしょうか?」

「そうだな。

 まぁ、タケオに触発されている者が出てきている兆しは何となくあるがな。」

「何となくですか?」

「うむ、下位の文官で、だな。

 河川や街道のやり替えでなるほどと思わせる内容が一部に見られる。

 らしい。」

「らしい?」

「局長達も又聞きの又聞きだよ。

 会議でそういった奇抜な発言が増えたそうだ。」

「奇抜な発言が良い発言とは限りませんが。」

「物になるような提案がされるのは早くてもあと数年後だろう。」

「占領地政策がおかしなことにならなければ良いですが。」

「今の局長達がそれを認めるとは思わんがな。」

「・・・なんであんなに優秀な人材がトップに居るのに賄賂なんかあるんですかね?」

「さてな・・・我としては優秀な者を局長にしているだけだし、局長達は自他ともに認める実力者揃いなんだがな。

 なんでか賄賂があるんだよなぁ。

 タケオ、一掃するべきだと思うか?」

「良し悪しでしょう。

 正しい行いが組織の円滑を妨げる事もありますよ。

 浸透し過ぎるのも問題ですが。」

「まぁ・・・その通りだな。

 すべてが正しい国家など、この世に存在はせん。

 正しい組織を作ったとしても何かしら欲にまみれるのが人という物だ。

 なら、どこかでわざと不正をさせるような場所があるべきだ。」

「それもこっちからしっかりと管理出来るようなですか?」

「我はそう思う。

 そういう箇所を作る事によって最重要の機密は守られるものだともな。

 まぁ・・・タケオにはすまなかったな。

 掃除が間に合わなかった。」

「あれは酷かったですね。」

「長年勤めていた貴族が増長した結果だからな。

 あれは王城の組織というより貴族社会の闇だろう。

 まぁ対策は講じるようにしたがな。」

「どうやってですか?」

「それは秘密だ。

 だが、タケオもエルヴィス伯爵も監視されていると思ってくれて構わんよ。」

「疚しい事はないのでどうぞ。」

「つまらんな。

 タケオ、我に隠し事あるだろう?」

「ええ、当たり前じゃないですか。

 ですが、陛下が何を知っていようとも私はそれを今は報告はしませんよ。

 それは陛下に今知らせるべきでないと思っているからですしね。

 機会があれば教えます。

 それまでは他言無用でお願いします。」

「そうか。

 その時を楽しみに待とう。

 で、タケオ情報収集は進んでいるか?」

「エルヴィス伯爵領内の事で精一杯ですよ。

 王城や王家が情報収集するように私も私で情報収集していますが、他貴族なんて出来ていません。

 あ、当然、陛下の部屋にもないですからね。」

「ん~・・・脅すつもりが脅されておるな。

 タケオの諜報部隊は優秀か?」

「陛下の部下程優秀ではありませんよ。

 私では他貴族の事はわからないのですから。」

「そういう事にしておいてやろう。」

「・・・では、陛下。」

武雄が席を立ち礼をする。

「うむ。

 ・・・タケオ。」

「はい。」

「前に出過ぎるなよ?」

「・・・わかっています。

 私はもう部下を預かってしまいましたしね。

 部下達の生命と財産を守らないといけません。

 好き勝手出来る立場ではなくなったという事でしょう。」

「そうだ、わかっていればいい。

 何かあるなら部下を頼れ、優秀な主君は良く部下の話に耳を傾けるものらしいぞ。」

「私の部下は優秀ですからね。

 彼らの助言には耳を傾けるのは当然ですよ。

 では、失礼します。」

武雄がそう言ってアズパール王の執務室を退出していく。

「・・・入れ。」

武雄が出て行ったのを確認してアズパール王が言うと部屋の奥から王都守備隊総長とマイヤーが入ってくる。

「うむ、待たせてすまなかったな。」

「いえ、陛下。

 こちらが所長の行動報告になります。」

マイヤーがアズパール王の前に冊子を置く。

「うむ、まぁ今までの話だからな。

 時間が出来たら読んでおこう。」

「はい。」

「それとマイヤー、危ない時はタケオを抑えろよ?」

「私の言う事を聞くとは思えませんが?」

「大丈夫だと思うがな。

 タケオはそう部下の助言を無下にするような者ではないであろう?」

「それは・・・まぁ相談は事前にしてくれますね。」

「それで良いだろう。

 慣例の戦争・・・気を付けろよ。」

「はっ!」

マイヤーが陛下に礼をするのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 疾しい事→疚しい事
[一言] いやほんと言いおっさん、、、陛下だよ
[気になる点] >「それは秘密だ。 > だが、タケオもエルヴィス伯爵も監視されていると思ってくれて構わんよ。」 スライム諜報網も既にご存知だったりしてね・・・・・ >「そうか。 > その時を楽しみに…
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