第1854話 帰城しました。(王都にお土産がないだと?)
マイヤー達と別れた武雄達は雑貨屋に行き、帰城して王城の武雄達の部屋でお茶をしていた。
「・・・はぁ・・・薄々わかってはいましたが・・・」
「タケオ?どしたの?」
目の前のスイーツを平らげたビエラが武雄に聞いてくる。
「王都のみで買えるお土産がないなぁと思ってね。」
「おみ・・あげ?」
「ええ、おみやげね。
アリスやステノ技研とか友人や知人達に『王都に行ってきたよ』と渡す物ですね。」
「ん~?・・・タケオ、たとえば?」
「お菓子とか・・・置物ですかね?」
と武雄は考えながら言うが「あれ?考え付くのがひよことか鳩とかバナナとか・・・食べ物ばっかりだね。
京都とか鎌倉で良く見かける木刀とか某RPGばりのドラゴンの刺繍入りの剣のキーホルダーとか・・・あれって地域関係ないよね?・・・どうしてあれお土産になるんだろう?」と思っていたりする。
「ん~・・・タケオ、なぜ、おみやげ必要?」
ビエラが言ってくる。
「普段王都に行かない人に王都にはこんなものがあるんだよとお知らせするのと私が不在中にいろいろと仕事をしてくれた方達への感謝の気持ちで渡すのですよ。」
「ほぉ~。
タケオ、感謝ならタケオが作っても良い?」
「まぁ・・・そうですね。
でもそれだといつも通りなのですよね。
なので王都でしか買えない物とかを買って行った方が特別感はあると思うのですよ。」
「ん~・・・でもない?」
ビエラが考えながら言う。
「ええ、無いんですね。
そもそも旅をしないのですから作る必要はないと言われるとそれまでなんですけどね。」
武雄も苦笑しながら頷く。
「じゃ、ダメだ。」
ビエラが宣告する。
「ええ、そうですね。
ですが・・・今後はどうなんでしょうか。」
「ん~?あ!キティとの話!
旅、させる!伯爵の所に!」
「ええ、そうですね。
王都から来た方々にエルヴィス伯爵領での滞在での土産を作っておけば、それを王都に持ち帰り、旅をして来た事を報告し、土産話に花を咲かしてくれる事を望みますが。」
「タケオ、その為には土産が重要?」
「ええ、話だけでなく、土産があった方が自分達もその地に行ったらこういう物を買ってこようと思わせる事が大事なんですよ。
ある意味・・バンドワゴン効果に近い感じですね。
皆が皆、同じ物を土産として持ち帰ってくる。
そして旅に行った感想を言う。
その流れで自分達も旅に行った際は同じような物を買って帰ろうという気になってくれる。
その循環を作るというのが観光地産業の基本の1つなんです。」
「ん~?」
「要は、美味しい物があったり目新しい物があったりとお客さんを呼ぶ方法を考え、いろんな人に旅をさせるという事が目的であった場合、その派生でもう一度来たい、誰彼が行ったから私も行きたいと思わせ、この土産を買って来たらその地に行った証拠になるという物を与える方法が簡単な道筋なのです。
そして行った事ない人達に自慢したい、行った事ある人と共有したいと思わせるという事なんです。」
「ん~・・・?」
「まぁ特別感を演出してあげましょうという事ですね。」
「・・・うん。」
ビエラは難しい顔をさせて頷く。
と扉がノックされ武雄が許可を出すとアルマとレイラ、エリカとパイディアーとペイトーが入ってくる。
「こんにちは、タケオさん。」
アルマが言う。
「いらっしゃいませ。
どうしたのですか?」
「タケオさん、明日帰るのでしょう?」
「ええ。」
「私達聞いていませんよ?」
レイラが言ってくる。
「あれ?」
「『あれ?』じゃないですよ。
さっき戻って来たマイヤー殿達に聞いて知ったんです。
一緒に居たメイド達に方々に報告に行かせました。」
「それはありがとうございます。
・・・言ってなかったかなぁ。」
武雄が首を傾げる。
「まぁ、タケオさんらしいですけどね。
それで夕食はいっしょに取りませんか?」
「構いませんよ。」
「うん、わかったわ。
パイディアー、お願い。」
「はい、伝えてきます。」
パイディアーが退出して行く。
「で、タケオさん。
折り入って聞きたい事があるのよ。」
アルマが言ってくる。
「はい、なんでしょう?」
「実際問題としてスミスとエイミーはどう?」
「どう?」
「タケオさんから見て、上手く行っている?」
「・・・本人達に聞いてくださいよ。」
「それはもう個別にしているのよ。
でも私達でない、たまにふらっと遊びに来た者の意見も聞きたいの。」
「わかりませんよ。
私の前でわかるような素振りをしている訳ではないのですよ?
ジーナの報告には目を通していますが、まだまだなようですし。
それにそう言った事はこれからでしょう?」
「それはそうなのかもしれないですけど。
タケオさん、上手く行くかな?」
レイラが聞いてくる。
「姉としてはどうなんですか?」
「私は上手く行ってほしいわよ。
でもあの奥手のスミスだし、上手く出来るのか心配よ。
こういう事って周りがあれこれ言うと冷めそうじゃない?」
「そういう場合もあるでしょうね。」
「だからどうしようかなって。」
レイラが不貞腐れる。
「スミス坊ちゃんはスミス坊ちゃんなりに考えていく事ですよ。
男として伯爵家の跡取りとしてね。
私は相談には乗ってあげますが、強制はする気はないですよ。」
「私だって強制は好きじゃないわよ。
でもエイミーちゃんもさぁ頑張っているし。」
「頑張れば結果が出る類の物でもないですよ。」
「はぁ・・・そうなんだよねぇ。
タケオさん、どうしよう?」
「私達は温かく見守るしかないでしょう?」
武雄がそう言うのだった。
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