第1849話 職場見学に行こう。7(その後の話。)
昼食を終えた1年生達が教室に戻ってさっきの事を皆でワイワイ話していた。
「スミスの所は話が盛り上がっていましたね。」
グレースがスミスに言ってくる。
「まぁ、キタミザト殿ですしね。
勉強とは関係ない話をしていました。」
スミスが苦笑している。
「俺ら親父の話だった。」
「面白くなかったです。
というよりもいたたまれない気持ちでした。」
イーデンとカイルが落ち込んでいる。
「グレース殿下の所はどうでしたか?」
スミスがグレースに聞く。
「私の所はバンクス男爵ですよ。
話もいろいろ聞いて為になったわ。
ああいう貴族との会食も良いかもしれないわね。」
「そうですね・・・教師陣に今回のように半年か1年毎に貴族との昼食を取るといった企画を提案してみてはどうですか?」
「うん、そうね。
バンクス男爵の話も面白かったから他の貴族方の話も聞いてみたいわ。」
「はぁ・・・親父がグレース殿下と何を話すんだよ。」
「まったくです、騎士団だったのにグレース殿下と話が合うわけないのに。」
「ん~・・・イーデンとカイルは不支持なのかな?」
スミスが苦笑するのだった。
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3年生の教室
「キタミザト様がいらっしゃったのに1年生と昼食していましたね。」
キティがつまらなそうな顔をさせて言う。
「はぁ・・・あれで良いのよ。
キティなんてタケオさんが目の前に来たらしゃべれなくなるんじゃない?」
横に居るエイミーがため息をつきながら言う。
「そんな事ないですよ?」
「どうだか・・・他の皆も貴族との昼食をしたかった者とそうでない者がいるでしょうけど。
少なくとも新貴族方はまだ貴族らしからぬ貴族だしね。
実務の経験を聞けるのはありがたいわよね。」
「ですよね。
騎士団からと文官からと両方の実力者ですものね。
これからの私達に必要な事を言ってくれそうですよね。」
「そうね。
まぁタケオさんはどちらかと言うと今現在進行中の計画が目白押しだからなぁ。
言える事と言えない事があるのを知っていて対応しないと、タケオさん何も言えなくなるんじゃない?」
「キタミザト様なら問題ないのではないのですか?」
「そうであれば良いけどね。
少なくとも今後はタケオさん達が王都に来た際に今日みたいな訪問があるかもしれないと覚悟した方が良いわね。」
エイミーがキティに言うのだった。
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学院長室にて。
「どうでしたかな?」
クラーク議長が武雄達に聞いてくる。
「真面目に授業に取り組んでいましたよ?」
「1年生との昼食も素直な質問で面白かったですね。」
「私はグレース殿下の班との昼食でしたが、地方領の事を熱心に聞かれていましたし、他の生徒方も地方領の事を聞いてくれて楽しかったですね。」
「私が地方の騎士団だったので王都と地方の違いを色々と聞いてくれました。
いや~生徒さん方はしっかりしている。
こちらに気を使ってくれて。」
「隣で息子が難しい顔をしていたな。」
「あ~、私もですね。
あれは私達息子と違う所に行けば良かったですね。」
武雄達が感想を言う。
「ふむ、満喫されたようだな。
ボールド殿、どうだろうか?
すぐにという事はない、私の下に入って経験してみてはどうだろうか?」
「・・・それは副学院長みたいな立場でしょうか?」
「うむ、どうかな?」
「そうですね。
今日話を聞いた際も特に地方出身だとかの偏見はありませんでしたが。
私で務まりますでしょうか?」
「大丈夫ですぞ。
むしろ王都にずっといるような者よりか初々しいボールド殿の方が皆も心を開くでしょう。」
「はは・・初々しいと言われてしまうと複雑な気持ちですが、わかりました。
次期王立学院の学院長の内示を受けさせて頂きます。
ですが、私が学院長になった際に王城に居る同期達を副学院長にする事を了承願います。」
「なるほど、皆でか。
国内の西も東もわかる人材が集まり知恵を出し合うというのなら私に異存はない。
なぁに私に任せておけ、それも貴族会議と人事局に話は通しておく。」
「ありがとうございます。」
ボールドがクラーク議長に頭を下げる。
「いや~、良かった良かった。
これで私の肩の荷も下りるという物だ。」
クラーク議長がにこやかに言う。
「それで・・・どうでしたかな?グレース殿下は?
彼氏とかの兆候とか?」
クラーク議長が聞いてくる。
「あ~・・・どうでしょう?」
「これと言って居なかったような。」
「私達にわかるようにはしないのではないのですか?」
武雄の同期達が「まだ彼氏は居ないですね」と言ってくる。
「ううむ・・・そうか・・・
エイミー殿下はわかりやすいのだが、グレース殿下の動向がわからないのだ。」
「・・・エイミー殿下の方はうちの義理の弟ですかね・・・
グレース殿下の方はわかりません。」
武雄が「あ~ぁ、大変そう」と呆れながら言ってくる。
「うむ、エイミー殿下はエルヴィス殿がお気に入りと浸透してきている。
文官も武官も貴族会議も王家もエイミー殿下のご意思があるのならと見守っている状況でな。
で、もう1人の王家であるグレース殿下の方は何も伝わってきていないのだ。」
「まだ入学したばかりですし、これからではないでしょうか?」
「うちの息子がちょっかいをかけてなければ良いのですが。」
「そうですね。」
「私の息子は接点がないでしょうね。
授業後の会話では何も言ってきませんでした。」
「そうかぁ・・・皆、すまんが、その辺の噂がわかったら言ってくれ。
王城としても裏を取りに行かないといけないのでな。」
「「「「ええ。」」」」
武雄達が頷くのだった。
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