第1847話 職場見学に行こう。5(1年の教室に入ろう。)
1年生の教室
「・・・」
ジーナが教室の端で磯風を肩に担いでボーっと外を見ている。
と教師が教室内に入ってくる。
「授業を始めましょう・・・ジーナ、どうしましたか?」
教師がジーナが教室の後ろ側の扉に歩いていくのを見つける。
「申し訳ありません、所用です。」
「・・・所用ならしょうがないですね。
では、皆さん、今日は国内の地域別に見た生産物の講義をします。」
教師がジーナに甘い対応をする。
生徒達が「ん?」と思っていると。
後ろ側の扉がノックされ教師が返事をすると男性陣が入ってくる。
「授業中に失礼します。
あれ?・・・ジーナ?」
今回の先頭は武雄だった。
「はい、ご主人様、この度は臨検ですね?」
ジーナが頭を下げて答える。
「「「「ご主人様!?」」」」
1年生の教室がざわつくのだった。
・・
・
「このように北と南で生産物の偏りというのが発生しているのがわかるでしょう。」
教師の説明がされている。
ちなみに1年、2年、3年ともに黒板の導入が既に完了しており、それに教師が記述しながら授業が進むスタイルになっていた。
まぁ大型の黒板はまだ納入されていないようなので書いては消し、書いては消しとなっているのは初期ならではのご愛敬なのだろう。
「・・・わかってはいたが・・・キタミザト殿、エルヴィス領は北ですから大変でしょう?」
「それはそうですが、逆を言えば北側でしか出来ない作物というのを見つけると南側では真似出来ないという事です。
味という観点でいうならライ麦とかですね。」
「あぁ、最近王城で仕入れられていると噂のライ麦ですね。」
「そんな噂が?」
「ええ、街中の穀物問屋がどうも自分達が納入した記憶のない穀物が倉庫にあったそうで聞き出したようですよ。
エルヴィス伯爵領から少量とは言え、通常見ない量のライ麦が保管されていたと。
問屋達が嗅ぎまわっています。」
「あ、私も似たような話を聞きましたよ?
どうもエルヴィス伯爵領からの商隊が増加したという話からライ麦が定期的に王城に直接運ばれる見込みになっているとか。」
「確か西側だとクリフ殿下領の隣でしていませんでしたかね?」
「2領地のみの生産かぁ・・・キタミザト殿、今後はどうなると思いますか?」
「ある程度、今よりも生産量は必要になりますが、全領地で・・・とはならないでしょうね。
そこまでの需要はありませんよ。
それに小麦よりも市場価格は低いのは確かなのです。
無理して作付けするような物ではありません。
北側に位置する2領地は小麦の生育が悪いので味が劣るライ麦を作付していただけです。
そこから商品価値を高めるようにしましたが・・・多少消費があったからと言ってもね。
私としては価格を暴落させられるのは困るので今のままが良いのは確かなんですけどね。」
「なるほど。
わかりました。」
新貴族達が話をしているのだが。
「・・・ついて行けているのか?」
「この辺の話はした事ないですからね・・・」
アルダーソンとボールドだけは息子達が授業に付いていけているのか少し不安になっている。
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スミス達の席。
「・・・何で親父が来ているんだ・・・
こんな時ミスなんて出来ない・・・」
「当たるな、当たるな・・・」
約2名程、意気込みが違う。
「・・・」
スミスは真面目に受けている風を装っているが。
(マリ・・・本当に知らなかったの?)
(うむ、入る直前に入ってくると言われただけだからな。)
(そうかぁ・・・タケオ様達は僕達の授業をみたいんだよね?)
(そうらしいな。
主の授業を受ける姿勢を見に来たわけではないだろう。)
(うん、ジーナも席に戻って真面目に受けているけど、ジーナはわかっていたのかな?)
(パラスも知らなそうだったがな。
我と同じタイミングで知ったと思った方が良いだろう。)
(という事はジーナはそれよりも先に扉に移動をしたよね?
なぜ?)
(ジーナにしかわからない事があったのだろう。)
(そうかぁ、これが主従関係のなせる業なのかな?)
(そうであれば凄い事だな。
ほら、主、授業に集中。)
(はーい。)
スミスはマリとの会話を終わらせる。
(ジーナ、なんで事前に私に言わなかったの!?
マリに訝しがられたよ。)
(・・・磯風からご主人様達が王立学院に入って来たのは報告されてましたが、クラーク議長に話に来ただけと思って放置していましたしね。
それにパラスはマリと話していたでしょう?)
(アルがパナに文句言ってたのを楽しく聞いていました。
あ、ムンムが精霊の会話に入ってきたよ。)
(ムンム?・・・第一研究所の研究室長の方の精霊ですね。)
(うん、色々話したよ。
で、タケオ達が入って来たのを良く察知したね。)
(この前に2年と3年の教室に入ったのはスライム達から報告が来ていましたからね。
ここに入る前に2年の教室には開始と同時に入ったそうなので今回もそうするだろうと思っただけですよ。)
(ふーん、それだけ?)
(複数の足音も聞こえましたし。)
(なるほど。)
ジーナの説明にパラスが納得するのだった。
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