第1845話 職場見学に行こう。3(まずはエイミーの反応を見てみよう。)
王立学院の3年生の教室。
教師の授業を真面目に聞いている。
と、エイミーの肩にチビアルが実体化してくる。
「?・・・アル、どうしたの?」
エイミーがコソッと聞いてくる。
「ん~ん。
なんとなくね。」
と、アルが言ったのと同時に後ろ側の扉がノックされ教師が返事をすると男性陣が入ってくる。
「授業中に失礼します。
皆さんの授業風景を見学させていただきます。」
皆が一斉に入って来た者達を見る。
「・・・」
エイミーは入って来た者達を確認し、口を開けて呆れながら見ている。
「学院長からは来る可能性は言われてはいましたが、はぁ・・・ここは一番来る確率が低いと思っていたのですけど。
何もお構い出来ませんがよろしいでしょうか?」
教師が諦めながら言う。
「あ、教師殿、今日は見学ですので後ろにいますから。
進行の邪魔は致しませんので続きをお願いします。」
アルダーソンが言う。
「畏まりました。
はい!皆さん、驚いたでしょうが、今日は見学があるというのは私達教師陣は知っていました。
あの方々は日頃の皆さんの学ぶ姿勢を見に来られたのです。
気負いせず、いつも通りに授業を受けるように。」
教師が手を鳴らして皆を前に向かせるのだった。
・・
・
「タケオ、アル経由でエイミーから苦情が来ていますよ。」
チビパナが武雄の肩に乗りながら言ってくる。
「そうは言ってもねぇ~。」
武雄が苦笑している。
「主~・・・これ何を学んでいるんですか?」
「あ~?」
ミアとビエラが教師の説明を聞きながらも武雄にコソッと聞いてくる。
「ん~・・・これは・・・備蓄の計算方法ですか?
えーっと・・・バンクス殿、わかりますか?」
「ええ、私も地方貴族に仕えている際は同様な事もやった事がありましたよ。
平時に戦時、災害があった事を想定してどのくらいの量を備蓄しておくかの講義ですね
少し量が多いですが、王都で想定をしているのでしょう。
講義内容もわかりやすくしていますね。」
「「「ほぉ。」」」
ボールドとバッセル、アルダーソンがバンクスの説明に頷く。
「・・・ふむ、想定率という単語は初めて聞きますが、同じように割り増しをどう見るかというのは同じですね。
維持管理、次年度の消費等々を勘案しながら割り増し量を見るので・・・領地によりまちまちなのは確かですね。」
「西側では備蓄量は多く見るのですか?」
武雄がバンクスに聞く。
「収穫量が地方領毎に違いがありますからね。
王都や魔王国側と比較すると多いかもしれませんが・・・過去の事例を紐解いて災害の記録から何が起こるのかの予測をし、初めてどのくらいの被害が出るかがわかりますからね。
水害や豪雨や森林火災なんかもあった時代があるようです。」
「山に近ければとか海に近ければでも備蓄量はちがいますよね。
でも基礎という点ではこの講義は大切ですよね。」
バンクスと同時に文官から貴族になった同期が言ってくる。
「なるほどね。」
武雄が頷くのだった。
・・
・
結局授業が終わるまで見学していたのだが。
「タケオさ・・・キタミザト殿!何をしに来たのですか!?」
授業と授業の合間になるとすぐにエイミーが武雄に文句を言いに来ていた。
「子の成長を見に来たんですよ。」
武雄が良い笑顔をエイミーに向ける。
他の同期達は軽くエイミーに会釈をし、武雄とエイミーの話を苦笑しながら見ている。
「絶対嘘ですね!
アルダーソン殿とボールド殿とキタミザト殿なら1年の教室に。
バンクス殿なら2年の教室に行くのが普通でしょう?
なんで私達3年の教室に来たんですか?」
「え~・・・そこで3年だけ見ないなんてエイミー殿下に失礼でしょう?
なので、1番に見に来たんです。」
「いきなり貴族が6名、随行も含めて10名以上で入って来たら混乱すると思わなかったのですか?」
「ん~・・・まぁ結果的に問題なかったのではないでしょうか?
授業風景も見れましたし・・・問題ないようですね。」
「問題があるわけないじゃないですか。
はぁ・・・まぁ何かしら目的があって来たのはわかりますけど。
私達が1番なのですよね?
次はどっちに行くのですか?」
エイミーが聞いてくる。
「・・・えーっと・・・次はバンクス殿の息子さんを見に行きますかね。
皆さんはどう思いますか?」
武雄が同期達に聞く。
「それで良いんじゃないか?
それに教室に入る要領はわかったな。
次はもっとすんなり入れるだろう。」
「この教室に入る時は緊張しましたね。
2年の教室だともう少し緊張しないで入れそうですね。」
「そうですね。
皆さん真面目に授業を受けているからどうなるかと思いましたよ。」
同期達が言う。
「・・・真面目に受けるに決まっています。
もうすぐ次の授業が始まりますよ。」
エイミーが「早く行った方が良いのでは?」と皆を促す。
「そうですね。
いつまでもお邪魔していてはいけないでしょうし。」
「ええ、なら2年の教室に向かいましょうか。」
「次はバンクス殿の息子がどういう顔をするのか楽しみですね。」
「それも楽しみですね。
なら、行きますか。」
武雄達一行が3年の教室をあとにするのだった。
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