第1842話 205日目 とりあえず試食しようよ。(ジーナ達には内緒ね。)
朝食後の厨房。
武雄は昨日エイミー達に教えた物を作っていた。
「ん~・・・」
武雄が出来上がった物を見て考えていた。
「キタミザト殿、これは?」
隣で見ていた料理長が武雄に聞く。
「牛乳餅きな粉和え・・・餅ではないんだよなぁ・・・
なんだろうこれ・・・」
タケオがフォークでつんつん突っつくとプルンと動く。
「狙った通りの硬さだよね・・・食感は・・・うん、食べ応えあるなぁ。
黒蜜はかけた方が飲み込んだ時に違和感は少ないかな?」
武雄が一口食べて狙い通りの物が出来ていると確認する。
例えるのなら牛乳寒天に弾力を足したような、久寿餅の食感にさらに粘り気を出したような物が出来ていた。
「キタミザト殿。」
料理長が声をかける。
「・・・どうぞ、あ、粉に気をつ」
「ゴホッ!・・・粉が・・・ゴホッ!」
料理長がむせている。
「粉に気を付けてくださいね。」
「キタミザト殿・・・ちょっと・・・遅いです。」
「あ~ぁ、スイーツ担当、食べま」
「はい!待っておりました!」
武雄が呼ぶとすぐに料理人がやってくる。
「息は一旦吐いてから息は吸わずに口に入れ、口を閉じてから鼻で呼吸です。」
「了解しました。」
料理人が武雄の言いつけ通りに食べる。
「キタミザト殿、私もそれ聞きたかったです。」
料理長がジト目で抗議するが武雄は気にしない。
「・・・アン殿下のゼリーのようでもありますが、あれよりも硬さがあります。
かといって肉程固くもなく・・・弾力と言えば良いのでしょうか・・・噛んだ際に反発があり、不思議な感じですね。
牛乳が少し感じはしますが、これはゼリーの時よりも少ないですね。
それにこの・・・きな粉ですか?
これは好みが分かれそうですね。
個人的には豆を煎った物なのでもっと豆々しい味になるかと思いましたが、予想とは違い単体ではこれが豆だとはわからない味がします。」
料理人が感想を言う。
「ふむ・・・黒蜜はありますか?」
「こちらに。」
武雄が周りに居る者に聞くと、すぐさま他の料理人が持ってくる。
「かけますよ。」
「弾かれていますね。」
「混ざらないな。」
武雄が黒蜜をかけるのを料理長と料理人が感想を言う。
「さてと。
・・・うん、これはこれで良いのかな?」
黒蜜が零れないように武雄がまた一口食べる。
「「・・・」」
「どうぞ。」
武雄がそういうと料理長と料理人が食べる。
「・・・感じが変わるな。」
「この黒蜜をかけはしましたが、ほとんど弾かれるのも問題ではないですかね?
黒蜜を先にかけてきな粉ではないでしょうか。」
料理長が感想を言い、料理人はほとんど黒蜜が口に運ばれない事を危惧する。
「さて・・・とりあえず食べれる物は作ったから。
これの名称かぁ・・・ミルク餅で良いでしょうかね。」
武雄は餅以外の発想が出来なかったので諦める事にした。
「キタミザト殿、この後は?」
料理長が聞いてくる。
「おやつを欲しがっている子がいるのでね。
追加作りますよ。
レシピは王城とキタミザト家と寄宿舎で共有ですね。
発展形は逐一共有で。」
「了解しました!
スイーツ担当!」
「はい!料理長!2名すぐに動けます!」
料理長と料理人が返事をする。
「あ、そうだ。
もしかしたら後日、ジーナが作りに来るでしょうから手ほどきお願いしますね。」
「了解しました!」
料理人が了承するのだった。
・・
・
王城の食堂。
きな粉餅が一口大に切られ、皿に刺身の盛り付けのように一列に並べて出されていた。
「あ~♪」
「お~♪」
「ほぉ、初めて見ますね。」
「「所長?これなんですか?」」
「ん、ウラカゼ、これは皿ごとはダメですからね。」
「ニャ。」
武雄が同行者たちに振舞っていたのだが。
「タケオ~♪これは黒蜜をどのくらいだ?」
「父上、適当で良いのでは?」
「いや、最初は無くても良いのではないですかね?」
「はぁ・・・好きに食べて良いって事ですよ。」
「あら~♪綺麗に並んでるわ。
レイラ、もっと上手い配置はあるかな?」
「盛り方によって見た目が変わりますよね。
黒蜜を上からかけるのならもっと高く積んでも良いかもしれませんよね。」
「「「ワクワク。」」」
エリカやパイディアー、ペイトーが「まだかな?」と待っている。
王城内の王家一同もいたりする。
ちなみにパットはまたお出かけ中。
「大豆の食べ方の1つですから・・・粉を吸い込むとむせますからね。
はい、どうぞ。」
「頂こう♪」
「「「いただきます♪」」」
皆が一斉に食べ始めるのだった。
「ん?ん~?
不思議だな・・・いや甘くて良いのだが。」
「茹で過ぎたパスタを太くしたような感じだな。」
「確かにクリフ兄上の言葉に頷きますね。」
「牛乳の味がしっかりしていますからあっさりとしていますね。
その分黒蜜とこの粉が苦みを出しているんですかね?」
「不思議な食感♪」
「タケオさん、面白い食べ物が出来たわね。
黒蜜も粉も付けないで食べると・・・うん、やっぱり牛乳の味がほのかにするわ。
甘さもあるし・・・これ単体でも食べれそうね。」
王家一同は不思議がりながらも楽しそうに食べている。
「タケオ!おかわり!」
ビエラが空になった皿を武雄に渡してくる。
「ビエラ、早いですね。
もっと味わえばいいのに。」
「ミア!次が味!」
「あ、なるほど、まずは平らげてから次が味わうのですか。
まったく・・・最初から味わえば良い物を。」
「まずは食べるの!次が味なの!」
ビエラがキランとカッコいい笑顔をミアに向ける。
「・・・うん、ビエラが満足しているならそれで良いですよ。
私のはあげませんからね。」
ミアがジト目でビエラを見てから自身のミルク餅を食べるのを再開させる。
「ふむ・・・栄養的にはきな粉で十分ですね。」
「ニャ。」
夕霧と浦風はゆっくりと黒蜜ときな粉を逃さないようにして食べるのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




