第1841話 204日目 夕食前のまったり時間。(スミスとエイミーに報告を。)
武雄の部屋。
夕食前にニールが遊びに来て武雄とお茶をしていた。
「さっき料理長が来てな、大豆の料理レシピをと聞いてきたが保留にしておいた。」
「あ~・・・料理長にニール殿下に聞けと言いましたね。
今日の今日で聞きに行ったのですね。」
「なるほどな。
文官とも協議が必要な内容なだけにあの場では明言出来なかったのだが・・・
タケオ、実際にタケオに教えて貰った大豆の調理方法だが、あれ王都で出来ると思うか?」
「・・・湯葉は出来ますよね。
豆腐についてはなんとも言えませんが・・・」
「豆腐関連は苦汁が必要だよな・・・王城に教えると俺の領内の特産品としての注目度がなくなる気がするんだが、どう思う?」
「それを言うなら私は大豆と苦汁をニール殿下領から買うので、エルヴィス領内ではニール殿下領の特産品を作ってしまうという事になるのではないのですか?」
「タケオの場合はエルヴィス伯爵家と近い者達のみだろう?
街中で発展させるような量の発注は来ていないのは知っている。」
「ゆくゆくはさせますけどね?」
「ゆくゆくなら問題ないさ。
出来れば今後とも我が領内からの購入で賄って欲しいが・・・そこはタケオというよりもエルヴィス伯爵との交渉事となるだろうな。
それより問題は王城と王都の勢いだ。
王城内でのみ調理すると思うか?」
「売る際にそういう条件にすれば良いのではないですか?」
「ふむ・・・豆腐をか・・・
絶対に食べた物は真似するだろうな。」
「でしょうね。
すぐにとはいかないでしょうが、いつかの段階では製造方法はわかるでしょう。」
「となると・・・豆腐の派生商品を作る必要があるか。」
「それも1つ。
ですが、1つの事を根付かせるのも1つかと思います。
そうすれば領外に出す量は変動するにしても領内の消費量は一定になると思います。
毎年最低限の消費量がわかるのであれば農家としては安心すると思います。」
「確かにその通りだな。
となると豆腐を毎日食事に入るような・・・パンみたいな扱いにするというのか?」
「理想としてはそうなりますが、流石にほぼ毎食なんて高望みは難しいでしょう。
なので3日に1度くらいで領民が食べるような販売価格の設定と領民の健康への関心を向上させる方法を考えないといけません。
大豆を食べると少し健康になり、割と手軽に入手が出来るとわかれば世のお母様方は購入に前向きになってくれると考えられます。」
「子育て世代か・・・ん~・・・
酒場相手ならツマミのレシピだな。
ワインだとあの豆腐はツマミには少し物足らないか。」
「ワインは肉や魚といった食べ応えのある物が人気でしょう。
ブランデーとかでは甘みと塩みの味が好まれます。
その一角に豆腐をどう組み込むのかは料理人の腕ですね。」
「ふむ・・・タケオもゆくゆくは領内に広めるのだろう?
算段はついているのか?」
「私としては・・・ほら、ウォルトウィスキーがありますからね。
それに合う料理には豆腐を組み込めて出せますからね。
ある程度は考えています。」
「ほぉそれは・・・エルヴィス伯爵領に行った際に食べさせて貰えそうだな。
今から楽しみだ。」
「あ、来る気なのですね。
王都のみかと思っていましたが。」
「当たり前だろう?まぁすぐにとはいかないだろうがな。
リネットやクリナ、ピーター皆で行こうと思っているからな。
行った際は頼むな。」
ニールが楽しそうに言う。
「ええ、準備は万端整えましょう。」
武雄が頷くのだった。
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寄宿舎のスミスの部屋。
扉がノックされスミスが許可を出すとジーナが入ってくる。
「スミ・・・スミス様、エイミー殿下、戻りました。」
ジーナが中に入ってスミスとエイミーが居るのを発見する。
ドネリーは居ません。
「うん、ジーナおかえり。
体調は平気ですか?」
「大丈夫です、まぁこの状態では無理は出来ないとの事ですので。
激しい事は出来ませんが、今まで通りではあります。」
「うん、出来る範囲内で良いのでよろしくね。」
「はい、スミス様。
エイミー殿下、こちらがご主人様より預かりましたレシピになります。」
「うぅ・・・ジーナ、ありがとう。」
エイミーが恐縮しながら受け取る。
「えーっと・・・あれ?『久寿餅は大変そうだったので、こんなものを考えました』って書いてあって、『小麦粉を75g、牛乳100g、砂糖10g程度で混ぜて・・・鉄トレイに入れ、プリンの時のようにフライパンで蒸す。
2分程度で完成。
フライパンから取り出し、冷めたら一口大に切りましょう』・・・ジーナ、わかる?」
エイミーがジーナに聞く。
「はい、ご主人様がそれを書いている時に私が作るだろうからと教えて貰いました。
またプリン自体は私も作っていますので問題はありません。」
「そう・・・で、『大豆を炒って皮をむき、石臼等で挽いた粉に砂糖を少々入れ混ぜる。
それを一口大に切った物にかけて食べる。
お好みで黒蜜をかけてください』・・・以上。」
「小麦粉でプリンを作るのですか?」
スミスが素朴な疑問を言う。
「ご主人様の予想では弾力があるけどぼそぼそしない物が出来るだろうとの事です。
団子とはまた違った感じになるだろうとも言っていました。
あとは何回も試作してレシピを完成させるようにとの伝言でした。」
ジーナが言う。
「ん~・・・私でも出来そうだけど・・・ジーナに頼んだ方が良いかしら。」
「そうですね・・・僕も手を出すと失敗しそうです。」
エイミーとスミスは料理を諦めるのだった。
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