第1839話 ジーナとの話し合い。(ジーナ、休暇中だよ?)
アルマ達が帰ったあとの武雄の部屋。
「ご主人様、私がベッドでご主人様は椅子ですか?
逆でも良いのですが?」
「ん?良いんですよ。
今日は休養なのでしょ?ジーナお嬢様。」
「え・・・ご主人様、その呼び方は違和感があるのでお止めください。
それとも何か私に隠し事をしていて、相当言い辛い事があるのですか?」
ジーナがジト目で聞いてくる。
「あらぬ疑いをかけられていますが、無いですよ。
というより、今日ぐらいのんびりと寝て過ごしなさい。」
「・・・ご主人様、1つ言うとですね。
奴隷になる前、お父さまの領地に居た際も私は寝て過ごす事なかったのですが?」
「え?なんで自堕落な生活にならないのですか?
普通、のんびりと昼まで寝て過ごし、夜中まで趣味に没頭するのではないですか?」
武雄が驚きながら言う。
「いや?ご主人様?
それは自堕落し過ぎではないですか?
何かしたいのなら毎日決まった時間にすれば良いだけです。
毎日同じ時間に起きて、お父さまからの課題を熟し、ちょっと街中を散策して、おやつと食事と湯浴みをして寝るのが普通です。
それが日課というものなのだと思うのですが。」
「・・・ヴィクター・・・ジーナはしっかりし過ぎです。」
武雄が窓に向かって呟く。
「むしろご主人様の休暇の過ごし方が今わかったのですが・・・
自堕落はダメです。
ご主人様の定休日は考え直しましょう。」
「え?ヤダ。
毎日仕事なんて嫌です、休みがあるから仕事を頑張れるのですよ?
休日廃止反対!」
「なら自堕落にならないようにしないとダメです。」
「・・・趣味に没頭したいんです。」
「というより、ご主人様の仕事が趣味みたいなものではないですか?」
「・・・気が付きました?」
「元から知っておりますが。」
「まぁ実際の所、成果が求められてしまっていますからね。
趣味の範囲では済まないのですよ。
成果が求められない事が趣味の醍醐味です。」
「なるほど、趣味と仕事の境界は成果があるか無いかですね。」
「あ、違いますよ。
どんな事でも『成果を求められる』事が仕事なんです。
成果が出るだけなら趣味のままですよ。」
「?」
ジーナが首を傾げる。
「仕事とは結果です。
成果とは自己の評価ではなく他者の評価なんですよ。
達成出来る、出来ないは別の話ですけど。
どんな事でも目指すべき成果、これを目標と言いますが、これを最初に作って、それの出来栄えを評価される。
これが仕事です。」
「・・・ご主人様、私スミス様のお付きですよね?
私の仕事の目標ってなんですか?」
「スミス坊ちゃんの寄宿舎での身の回りのある程度のお世話と万が一の際の警護でしょう。」
「それは仕事内容ですよね?
何を目指せば良いのでしょうか?」
ジーナが聞いてくる。
「・・・あれ?ないかな?」
「ですよね。
となると私には目標は無いが成果は求められているという事になります。」
「1年を通して無事に王立学院に通わせるというのがジーナの目標ですね。」
「・・・緩いですね。
スミス様はマリが居ますので毎日寝過ごしも夜更かしもせず過ごされています。
日常生活で問題はありません。
それに護衛についても今現在、近づいてくる者はおりません。
なのでスミス様の後ろに控えている状態です。」
ジーナが言ってくる。
「うん、成果として十分ですね。」
武雄が頷く。
「いや、結局私は洗濯物やちょっとしたおやつの用意ぐらいしかしておりませんが?
余暇は一緒にマリとの訓練をしたり、たまに王都守備隊に稽古を付けて貰っている程度になります。」
「うん、十分でしょう。
戦闘で成果を求める必要はありませんし、そもそも戦闘があった時点で問題ですしね。」
「いや、ご主人様、戦闘の訓練は必要だからしてはいますが、そもそも警護の必要が無い感じなのです。
成果になるのですか?」
「ええ、なりますよ。
何もないと言っていますが、ジーナは警護としてスミス坊ちゃんと行動を共にし、目を光らせているのでしょう?
ジーナが居なくても今の状態だったかなんて仮定でしかありません。
ジーナが居るから今があるのです。
この事実だけで十分です。
それに身の回りも洗濯物とは言っても重労働をしているわけですけど遅延もなく熟している。
洗濯物を遅延なくスミス坊ちゃんに納入出来、お茶の手配も出来ている。
うん、お付きの仕事の成果は十分ですね。
エルヴィスさんには報告しておきましょう。」
武雄が頷く。
「ご主人様が伯爵様に報告するような内容なのでしょうか?
私の方からフレデリック様宛に報告を毎月送る形を取っていますので、問題ないと思うのですが?」
「それはそれで大事ですけど。
私から報告する事も大事なのですよ。
さっき言っていた事を報告するかどうかとは別で私が王都に行ってスミス坊ちゃんとジーナの様子を見ないで帰る事はないですからね。
なので、まぁ仕事の報告というより感想を言うという事ですね。
アリスもジーナの事は気になるでしょうから。
ちゃんとジーナを甘やかせたと言っておきますね。」
「ご主人様とアリス様は私に過保護です。」
「私達の趣味ですし。」
「それは趣味としてどうなのでしょうか?」
「趣味は成果を求めないのでね~。
あとは相手の心がけ次第でしょう?」
「それを言われると何も言えなくなってしまいます。」
ジーナが諦めるのだった。
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